目覚めの果てに
皆様こんにちはこんばんは、遊月奈喩多と申すものでございます!
いよいよ物語は終わり、童話が幕を開けることになります。是非見届けていただけたら幸いです。
それでは、本編をお楽しみください♪
姫君の前に、初めて姫君以外の人が現れました。
そう、姫君は長い長い眠りから、遂に覚めたのです。
目を覚ました姫君を覗き込んでいたのは、とても立派な身なりをした美しい青年でした。彼は姫君が目を覚ましたのに気付くや、嬉しそうに頬を染めて言いました。
「あぁ、やっと見つけた! 伝説に聞いていた麗しき姫君、これで貴女はわたしのものだ!」
* * * * * * *
姫君が眠っている間に、時は流れました。
彼女の生まれた王国は既に深い森へと変わり果て、周囲にあった国は様々な争いや話し合いを経て様子を変えていき、やがてその中から大きな国が生まれていたのです。たくさんの国をひとつにまとめてできた王国にはたくさんの人が流れ着き、人の多いところには噂話も多くなるものです。そんな噂話のなかに、こんなものがありました。
誰も立ち入らぬ深い森のなかにある朽ちた古城には、それはそれは美しい姫君が眠っている。彼女を目覚めさせられたものは誰もおらず、きっと目覚めさせられるのは彼女の伴侶となるものだけに違いない、と。その噂を聞きつけてやってきたのが、若く美しい王子でした。手に入らぬものは何もないと思って育ってきた王子にとって、この噂話は大層魅力的でした。
王子は姫君に自分のことをたくさん姫君に話しましたが、姫君の耳にはほとんど入ってきませんでした。突然目の前に現れた王子を名乗る青年のことも、目に入るお城の荒れようも、肌に触れる空気の冷たさも、たくさんのことが一度に姫君の頭に入ってきて、それを考えて理解するのには時間が必要でした。それに、夢の中でずっと歩き回っていたとしても、現実ではずっと眠ったままだったので、身体も自由には動かせませんでした。
そんな姫君を見た王子の目が、鋭く光ったように見えました。
その後、王子の城へ連れ帰られた姫君――かつて姫君だった少女は、王子によって割り当てられた部屋で日々を過ごすようになりました。といってもうまく動けない彼女はただベッドで寝ているばかり。時々固まった身体を解しにやってくる医師という生業をする人々と、ベッドを整えて食事を持ってくる侍女以外に接する人はいません。夜になれば王子がやって来ますが、正直に言って少女にとって王子との時間は決して楽しいものではありませんでした。
王子は少女をどこか所有物のように扱います。大切にしてくれているのは伝わりますが、それは彼女の望む温かな愛情とはどこか違っているようにも思ったのです。そんな日々が続いたある日のこと、少女は王子のお城を出ることになりました。彼の妃となる女性が現れたからだと説明されましたが、きっとそうではないのだろうことはわかっていました。
王子はまるで小さな子どものような人でした。きっと姫君だった少女がお城を出なければならなくなったのは、王子の結婚などは関係なくて、ただ飽きてしまったから。古いおもちゃでたくさん遊んだら新しいおもちゃをほしくなるように、そのまま古いおもちゃを忘れ去ってしまうように、王子は彼女に飽きてしまっていたのです。
あまりに酷い扱いに彼女はとても悲しくなりましたが、どうすることもできませんでした。
体が動くようになったのを幸いとお城を追われた少女は、どこへともなく去っていきました。
彼女はどこを目指したのでしょう。
それを伝えるものはありません。人のいない森となった故郷を目指したのか、その先にある荒野へ行ったのか。それともどこへも行けずに消えてしまったのか。もはや両親から誕生を喜ばれて愛された姫君でも、伝説に語られる秘密の姫君でもなくなった彼女の物語は、これでおしまい。
後に語るのはすべて終わった後の、ほんの一幕です。
* * * * * * *
時が流れ、王子は王様となり、彼の見初めた女性がお妃様となった国で、ひとりの姫君が生まれました。
若い王様は大層喜び、すぐに娘の誕生を祝う宴を開くことにしました。国中の賢女を呼び集めて、娘の先行きを明るいものにしてもらおうと考えたのです。
しかし、賢女をもてなす為の特別な食器がひとつ足りません。
若い王様は少し悩みましたが、遠くに住んでいてあまり付き合いのない賢女だけを招かず,それ以外の12人の賢女をもてなすことに決めました。
そうして始まった祝宴。
11人の賢女たちが口々に姫君を褒め称え、数々の祝福を与えました。
朗らかで幸せそうで、きっとこの先もその幸福が続くことの約束されたような宴の間に突然、誘われなかった賢女がやって来たのです。若い王様が自分を招かずに宴を開いたことに腹を立てた彼女は、生まれた姫君を見て声を張り上げました。
「この姫君は15歳を迎えた日、錘が指に刺さって死んでしまうだろう!」
祝福を全て塗りつぶすような呪いに唖然とする若い王様たちを背に、招かれなかった賢女は満足そうに笑いながら去っていきます。お妃様がすぐに兵隊たちに捕まえるよう命令しましたが、果たして賢女を捕まえることができるのか。
若い王様はというと、ただ顔を青くするばかりです。
おくるみに包まれた姫君の泣き声も、どこか不安そうです。
15歳になったら死んでしまう呪い。
しかし、祝福を与え終えた賢女たちにはその呪いを打ち消すことなどできません。困りきってしまった若い王様たちに助け船を出したのは、まだ祝福を終えていない賢女でした。
「ご安心ください、王様。その呪い、完全には打ち消せなくとも上書きはできるかもしれません」
「本当か!? 頼むよ、もう貴女しか頼ることができないんだ」
泣きつく若い王様の隣をすり抜け、賢女は告げました。
「姫様は死ぬのではありません、錘が刺さった後、100年の安楽な眠りにつくのです」
私と同じように。
12人目の賢女は笑いました。
安らかな死など許せるものですか。私と同じように眠り続け、覚めない夢に怯えながら過ごすがいい。
あぁ、きっと父も同じだったに違いないわ──かつて自分に与えられた『祝福』を思い返しながら、賢女は若い王様にもう一度微笑みました。
物語はこれでおしまい。
祝いか呪いか、唱えられた言葉は童話へと繋がっていくのです。
前書きに引き続き、遊月です。今回もお付き合いいただきありがとうございます! お楽しみいただけましたら幸いです♪
年末年始はあれこれと録画することが多いので、HDDの容量を空けたいぞと思って録り貯めたアニメやドラマを観る時間を多めにとっているのですが、気付くと動画サイト等で自分がいちばん熱心にアニメを観られていた中高生時代(私の場合は2006~2011年くらいですね)のアニメ主題歌メドレーを聴いて『うわぁ、懐かしい!』とテンションを上げたりしている現象に名前があるのか、はたまた敢えて名前をつけるまでもなく人々の心のなかに自然にあるものなのか……どうにか弁明の手段を探したくなってしまいますね(HDDの中はまだまだ空きそうにありません)。いわゆるエロゲーやギャルゲー原作のアニメが多かった頃(体感)だったので、アニメに触発されて原作であったりコンシューマー版であったりを決して多いとは言えなかった小遣いを貯めて、もしくは両親に頼んで買ったりしたものでした。懐かしいですね。
高校見学にいったときに当時発売されたばかりだったライトノベルが図書室に置かれていたという理由で志望校が決まったりしたのもよい思い出でした。アニメや音楽であれこれ決めるというと大学の卒論テーマなども当時聴いていた音楽に影響された決めたりしたものでしたが、今にして思うと今以上に激しいオタク根性をしていたものだったと微笑ましくなってしまいますね。
閑話休題。
物語は終わり、童話が始まります。この後の顛末はきっと皆様もよくご存知かと思いますので割愛させていただきますが、もしかしたらあったかも知れない前日譚ということで……。
冬の童話、もし時間が許せば別のお話も投稿してみたいところです。そのときはまたお付き合いいただけましたら幸いです。
また別のお話でお会いしましょう!
ではではっ!!




