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やはり土産はおかしい

「イカのにおいがする……あ、お兄ちゃん」


「…………」


「これ、フェアリーランドのお土産だにょ」


「あ……え? それって確か、アンヨちゃんの故郷じゃなかったか━━なんだこれ?」


「釘とおっぱいブラジャーだよ」


「…………」


「順番に行こう━━まず、この錆びた釘はなんのつもりだ?」


「なんのつもりもなにも、だからお土産だって言ってんじゃん。それは、ゴンタちゃんのお店でもらったりん」


「意味がわからん」


「わかるはずだよ、お兄ちゃんになら」


「わかるかよ……まあ、釘はわかった。三百歩くらい譲って。でも、こっちは完全にわからん」


「ブラジャーが? ブラジャーはブラジャーでしょ、わかんない? 見たことなかったっけ? あれぇ、確かいつも着けてなかったかお前?」


「どさくさでお前とか言うなよ━━着けてるわけないだろ。っていうか、そもそも男に渡すものじゃないだろ。いや、これも仮に六千歩くらい譲って、お土産だとしよう。でも、柄がおかしくないか?」


「?」


「その顔をお前がするな。訊いているのはオレなんだから」


「どこがおかしい?」


「全部だ。全部おかしい。お前も含めて」


「含まれたのは不本意だが、説明すると、今はその柄が流行ってるんだよ」


「どこの世界で流行ってるんだよ、こんなもん。しかも流行ってたとしても、オレが着ける理由はないはずだ」


「あれぇ、喜ぶかと思ったんだけどな。まあ流行ってはいないんだけどね━━これからフェアリーランドで流行る可能性はあるよ」


「そうだよ、そういやそのフェアリーランドはいったいどこにある国なんだ? ずっと前から気になってたんだけど」


「ああ、それはね、違う宇宙の異世界だね。その中にある妖精の国だにょ」


「……え、異世界とかマジで言ってんの?」


「マジんこもマジんこ、愛しさと切なさとシリコンチップの神に誓って」


「フリキュアじゃねーか」


「ゴンタちゃんって、本当にいたんだよ」


「まさか━━フリキュアの猫だろ。喋っていたとでも?」


「いた。めっちゃ喋ってた。声はちょっと違かったけど、だいたい一緒だった。そうそう、わたしサインもらったんだよ!」


「わっ、なんで上着を━━」


「ほれ、ここに……見える?」


「見えるけど……恥ずかしくないのかよお前。早くしまえよ」


「にょ、お兄ちゃん、まさか妹にいやらしい━━」


「それは絶対ないから」


「警察署の番号は━━」


「なんて通報するつもりだ。イタズラ電話はやめておけ」


「あ、しもしもー? 闇谷警察署の頼子さんこんちわー、寿々木初雪でござるぅ。どーもどーも、なにか事件はありますか?」


「え、お前マジでかけてんじゃ……」


「それはこっちのセリフだって? にゃはは、こりは一本取られたにょ。いえいえ、たいしたことじゃないんですけど、うちのお兄ちゃんがわたしの下着を見てイカ臭くなっているので、そのご報告です」


「ちょっと……待て」


「にょほほ、マジんこで! はい、はい。そーなんですにょー。うんうん。はーい。また遊ぼうねー、ばいばーい」


「嘘だろお前」


「頼子さんがね、あんまりやりすぎるとダメになるから気を付けなさいねって」


「なにをだよ……」


「さあ? それはあなたが一番よくご存じのはずでは?」


「…………」


「イカがあるですか?」


「うわっ! え、アンヨちゃん⁉」


「なんだよ、まさか今頃気づいたのかお兄ちゃん?」


「ずっといたの?」


「はいです。最初からいたです」


「ごめん、マジで気づかなかった」


「アンヨたんに失礼なやつだ━━これから一緒に暮らすというのに……」


「は?」


「お世話になるです」


「え? どーゆーこと?」


「アンヨたんのお父さんがね、フェアリーランドに帰っちゃったんだよ。だから、アンヨたんはうちに居候することになりました」


「そんな急に……いや、別に嫌だってわけじゃないけど、聞いてないぞオレは」


「今なに聞いてたんだよ?」


「…………お前絶対……いつか絶対……」


「ま、そーゆーわけだから、お兄ちゃんの部屋はなくなるね」


「嘘だろ!」


「嘘だよ。さすがにそこまでやらないよ、いくらわたしでも」


「簡単にやる気がする……」


「アンヨたんはわたしの部屋で暮らすから、お兄ちゃんはアンヨたんに対してエロい気持ちになった瞬間に絶縁のうえ警察署に連行します」


「……はーい」


「というわけだから、これからは家族が四人になったと思って、楽しくやろうね」


「一人足りないのは……父さんか?」


「よく当てたね」


「当たったのかよ、酷すぎる」


「アンヨのことは、お構いなくです」


「なに言ってるのアンヨたん! みんなアンヨたんをお構いしたくてたまらんのだよ! なんでも言ってね、なんでもしたげるし、買ってあげるからね、お兄ちゃんが!」


「やっぱり」


「はいです。嬉しいです」


「ほわぁ……やっぱりアンヨたんが一番かわゆい。マジ天使。好きすぎる」


「よかったな」


「それよりお兄ちゃん、せっかくだからおっぱいブラジャー着けてみせて」


「せっかくじゃねーよ」


「そんなこと言わないで……わたしが、わたしがせっかくあげたのに……うぐっ、ひぐっ、着けてくれないなんて、うええーん!」


「……百パー嘘泣きなのはわかってるんだが、まあ他に人もいないし、ちょっとだけなら━━」


「はよ。はよ着けい」


「待て、急かすな。もう少し泣いとけよ」


「はよ、はよ!」


「待って……付け方がよくわからな━━あ、できた」


「ぐほっ! だっはははっはーんっ! めちゃくちゃ気持ち悪ぃ! なんだこいつ、おっぱいあるよー、にゃっはははあっはーっ!」


「似合ってるです」


「いや、アンヨちゃん……」


「写真撮ったれ━━おし、みんなに送信!」


「わっ、やめろバカ初雪!」


「時すでに遅し」


「ああ……マジかよ……なんてことを…………終わった。オレのすべてが、今」


「元気出すです」


「そうだよ、元気出しなよ?」


「…………これ、外していいですか?」


「もう外すの?」


「外します……」


「大事にしてよね、せっかくあげたんだから」


「…………」


「…………」


「…………ご飯は?」


「今、作ります……」

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