↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹のトモダチが全員なんかおかしい  作者: 虹ケ原光輝


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/127

通話の相手がおかしい

 スーパーのチラシを広げたので、特売品でもチェックするのかと思いきや、妹はその上でションボリマンチョコを開けた。

「こればかりは下になんか敷いとかないと、絶対にこぼれるからさ」

 妹の言う通り、あのお菓子はやたらとカスがこぼれ落ちるので、食べるのにも神経を使う。きっと、屋外で食べることを想定しているのだろう。そうとしか思えないほど、とにかく散らかる。

「うわ! (セント)シュタイナーのホロ出た!」

 レアシールを引いたらしい、初雪が上機嫌で身体を揺らす。

 確かションボリマンシリーズといえば、父親が子供の時にはもう存在していた、息の長いお菓子である。

 それが、いまだに流行っているというのだから、すごい。

 初雪などは、シールホルダーにコレクションしているくらいのファンなので、こうして時々、ションボリマンチョコを買ってきては食べている。そして、シールだけ抜き取ってお菓子を捨てることはせずとも、兄に押し付ける場合があるので、その時は食べてあげるのだ。


「りんりんりーん、お電話ですりーん」

 いきなり、誰が喋ったのかと思ったら、初雪のスマホから、例のおかしな着信音が鳴っただけだった。

「はいはーい、誰ですかりーん?」

 画面を見た初雪が「お」と一言、通話ボタンを押す。

「おひさー。うん、元気だよー。うん、うん━━にゃはは、マジかよ、なにそれ、ネットのニュースに出る? なんだ、出ないのか。へー、そうなんだ。うん見る見る、今度の木曜からね。はいはい」

 誰と喋っているのだろうか。なんとなく気になる夏樹は、さりげなく近くに座って、聞き耳を立てる。

「そんなこと言ったって、こちとら中学生だからね。そんな簡単な話じゃない━━え、来んの? 休みができたら? えー、そんなにわたしに会いたいとか、引くんだけどー」

 なんだ、誰なんだ? 男なのか?

 あまりにも気になった兄は顔を近づけてしまい、あっけなく気づかれる。

「なんかお兄ちゃんが気になって近づいてキモしたので、また今度ねー。うん、ばいばーい」

 通話を切り上げた初雪が、両目を狙って指で突いてきたのでかわす。

「あぶね」

「聞き耳変態お兄ちゃん、そんなに気になったのかよ」

 別にー、と言おうとしたが今度こそ目を突かれそうだったので、口を閉ざす。

「まあいっか。電話、フトロウくんからだよ」

 そう教えられたものの、思い浮かぶ人物がいない。そんな名前の友人が、妹にいただろうか?

 顔をしかめた夏樹に、初雪がつづける。

「俳優の、月夜野ふぐお太郎くん」

「は?」今確かに、俳優と聞こえたような。

 でも、すぐには信じられない。

「え、俳優の月夜野ふぐお太郎って、あの月夜野ふぐお太郎?」

「もちろん、他にそんな名前の人いるわけないじゃん」

 確かに。そんな特殊な芸名がかぶることはないだろうし、そのような本名がいたら、きっとその一族は正気ではない。

「でもなんで、そんな人からお前に電話がかかってくるんだ」

「そりゃあ、お友達になったからだよ━━そういえば、お兄ちゃんには言ってなかったかも。実はこないだの修学旅行でお知り合いになって、というか、ヤツに気に入られて『メールアドレスか電話番号教えてくれないと裸になってきみたちのテーブルの上に寝そべってやるぅ』とか喫茶店の中で言われたから、仕方なく教えてあげたんだよ」

 なんだその俳優。ほんとに俳優なのか。

 それに、とんでもない出会いを果たしていたのに、土産話もしてくれていなかったとは。

 初雪が夏樹にしてくれた話といえば「東京ペニーランドの裏話なんだけど、実はマスコットキャラの ペニーマンってもともと大量殺人鬼ピエロって設定だったんだけど、それをゆるキャラ風に変えて、恋人のペニーガールをつくることでマスコット化したんだって」という、雑学的内容のものだけだった。

 それを知ったところでペニーランドのイメージは変わらないし、ソファーの端に置かれている3頭身のピエロが恐くなったりもしない。

 ちなみにその縫いぐるみは、確か一万円以上したとか言ってたっけ━━そりゃあ、六十万も使いきるわけだよな。と、兄は思う。


「それでさ、フトロウくんが遊びに来たいんだって。わたしに会いに」

 その辺の友達が家に来る、みたいな感じでおっしゃる初雪だったが、相手はその辺の友達ではない。

 人気絶頂、テレビの世界で活躍する、超が3つくらいつくほどの有名人だ。そんな簡単な話ではないと思うし、もし本当に来たりしたら大事である。

 少なくとも夏樹は、そんな人に家に来られても、普段通りでいられる自信はない。緊張と恥ずかしさで、部屋にこもるかもしれない。

「でもほんとに来るかどうかわかんないから、あんま気にしなくていいよ。それよりさ、フトロウくん、トイレで全裸になってたら間違って入ってきたアイドルの娘に見られちゃったんだってさー!」と、なぜか嬉しそうに話す初雪。

 そういえばずっと「フトロウくん」と言っているけれど、夏樹の記憶では初雪の倍以上、あるいは三倍近く(さすがにそれはないか)歳上だったと思うのだが━━妹は中学で敬語というものの存在を学ばなかったのだろうか? 心配である。

 そしてこれだけは言っておくべきだと思うのだが、月夜野ふぐお太郎はなぜトイレで全裸になっていたのか。

 俳優じゃなかったら、ただのヤバい人だったのではないだろうか。

 なんとなく、そんな予感がする夏樹だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。