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記憶を失くした旧支配者  作者: 南瓜
10日目
38/45

面倒くさい事象。


 風に乗って、スゥーっと飛んでいる男の子。


 彼「ハスター」は、無事目的の物を入手し。


 上機嫌で、自分の住処へと帰っている途中だった。


__________________


 

「ふぅ~~。」


 久々に暴れた。

 あれだけ斬ったのはいつ以来だろうか。

 「ヒト」達には申し訳なかったが、ボクを苛立たせた罪は重い。

 こうなる運命だったんだと、彼らには成仏して貰いたい。



 そして僕は無事、目的の「兵器」を入手した。

 持つには重たいから「風」で浮かせて運んでいる。


 これをうまく使えば、ボクの「使命」を果たす近道になるはずだ。

 だが信憑性は低い。「ヒト」の造った物だからこそ信用しがたい。

 まあうまくいけば運がいいくらいに思っておこう。

 何事も、過信しすぎるのは良くない。



 と考えている内に、いつもの洞窟へと着いた。

 この洞窟の中は薄暗いが、これくらいの暗さがボクには丁度いい。

 明るいのは、嫌いだ。



「……あ、はすたー。おかえりぃ。」

「ただいま。」

「……それが、兵器?」

「そのはずだね。」


 いつもの場所に帰って来てそうそう、「シュー」が迎えてくれた。

 昼寝から目が覚めたばかりなのか、いつもより声がほわほわしている。

 ボクは浮かせて持って帰ってきた「兵器」と、そのついでの「じゅう」やらを壁際にゴトッと立て掛けた。音で解る、かなりの重量だ。



 さっきまでいたあの「双子」はもういないみたいだ。

 きっと帰ったのだろう。

 イエイブに「言うことを聞いてあげる」なんて変なことを口走ってしまったから、どうしようかと少し不安に思いながら帰って来たが。

 いなくなってるなら都合がいい。このまま静かな一時を過ごそう。



 



 …。






 ん?帰った?

 待てよ?




「シュー、あの双子は?」

「……もう、帰った。」

「どんな様子で?何か言ってた?」

「……『お父様が、呼んでる』、そう言って、急いで帰ってった。」

「…っ。」



 

 それはまずい。




 あいつらが「父上」に呼ばれて帰っていった。

 つまり。

 「ナイアーラトテップ」が何かしら動き出したと考えてほぼ間違いないだろう。

 このタイミングだ。きっと「クト」をおびき寄せるために何かしたに違いない。


「ガキ等が行ってからどれくらい時間が経った?」

「……まだ、10分も、経ってない。」

「そうか。ならまだ大丈夫か。」


 おそらく、しばらくすれば「クト」と「ナイア」の競り合いが始まるんだろう。

 そう推測した上で、少し考えなければならない。



 「クト」はまだ目醒めて二週間も経っていないはずだ。

 その分、まだ「記憶」や「力」も十分に戻っていないだろう。 

 そんな状態で「ナイア」に狙われれば、ほぼ間違いなくクトの「あの姿」が表に出てくるはずだ。本人の望まない形で。

 そのうえ相手が「ナイア」だ。あの「クト」とは言え、おそらくほぼ互角な戦いになってしまうだろう。


 そうなると、まずいのだ。

 クトの「あの姿」が長い時間表に出ていると。


 「ナイア」とはまた別の。





 「第三勢力」が、奴を喰いにやってくるのだ。





 そいつらが来たら、「クト」は確実に喰われる。




 それだけは、阻止しないといけない。



 そう考えてると、「シュー」もボクの様子を察したのか口を開いた。


「……クトゥグア、呼ぶ?」

「…それが手っ取り早いか。でも。」

「……貢物、ないね。」

「…。」


 「ナイア」に強い「クトゥグア」なら、その事態を速やかに収束してくれるだろう。

 だが、「クトゥグア」は頑固だ。

 貢物をこちらが準備しないと、話すら聞いてくれないだろう。

 奴を招来させる「呪文」も、貢物なしでは無視するだろうし。


 それにその彼を呼ぶための貢物は、基本的には「ツァトゥグァ」が作り出した物か、或いは「土に関係する芸術品」じゃなければダメだ。


 それが、近くにはない。


 「ツァトゥグァ」はボクの事をひどく嫌っている。貢物を作ってもらおうにも、きっとボクの話に耳は傾けてくれないだろう。

 

 手の打ちようがない。

 どうするべきか。



「……『壺』くらいなら、今すぐ作れる。」

「…へ?」

「……だめ、かな。」


 「シュー」が突然そんなことを言い出した。

 壺?そんな物を作れたのか。初めて知った。

 けど、それならいける。


「…お願いしていいかい?」

「……うん、任せて。」


 そう言うと「シュー」は、目を瞑って地面に手を付いた。

 すると、地面がグッと盛り上がり。

 そこからあまり見ない柄が入った「壺」が生成された。

 本当にすぐに作れたのか。少し驚いたな。


 そういえばこいつも「土」に関係する力を持っていたんだったか。

 ありがたい。


「……こんなんで、いいかな。」

「上出来だよ。ありがとう。」

「……うん。」


 シューは、少しはにかみながら俯いてしまった。

 ちょっとは可愛い仕草するじゃないか。


 あとはこの壺を持って、「クトゥグア」の所へ行く。

 そうすれば、何とかなるはずだ。


「翼の馬鹿はいるか。」

「イア、ハスター、ココニイル」

「よしお前もこい。『クトゥグア』の所まで、急いでいくぞ。」

「ワカッタ」

「じゃあシュー、行ってくるよ。」

「……うん、気をつけて。」


 

 案外早く準備が整った。これでいける。


 ボクの「使命」を果たすまでは。

 「クト」を、誰かに奪われるわけにはいかない。

 誰にも、邪魔はさせない。



 ボクは、「クトゥグア」への貢物である壺を「風」で浮かせて。




 急ぎ目に外へ向かった。

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