面倒くさい事象。
風に乗って、スゥーっと飛んでいる男の子。
彼「ハスター」は、無事目的の物を入手し。
上機嫌で、自分の住処へと帰っている途中だった。
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「ふぅ~~。」
久々に暴れた。
あれだけ斬ったのはいつ以来だろうか。
「ヒト」達には申し訳なかったが、ボクを苛立たせた罪は重い。
こうなる運命だったんだと、彼らには成仏して貰いたい。
そして僕は無事、目的の「兵器」を入手した。
持つには重たいから「風」で浮かせて運んでいる。
これをうまく使えば、ボクの「使命」を果たす近道になるはずだ。
だが信憑性は低い。「ヒト」の造った物だからこそ信用しがたい。
まあうまくいけば運がいいくらいに思っておこう。
何事も、過信しすぎるのは良くない。
と考えている内に、いつもの洞窟へと着いた。
この洞窟の中は薄暗いが、これくらいの暗さがボクには丁度いい。
明るいのは、嫌いだ。
「……あ、はすたー。おかえりぃ。」
「ただいま。」
「……それが、兵器?」
「そのはずだね。」
いつもの場所に帰って来てそうそう、「シュー」が迎えてくれた。
昼寝から目が覚めたばかりなのか、いつもより声がほわほわしている。
ボクは浮かせて持って帰ってきた「兵器」と、そのついでの「じゅう」やらを壁際にゴトッと立て掛けた。音で解る、かなりの重量だ。
さっきまでいたあの「双子」はもういないみたいだ。
きっと帰ったのだろう。
イエイブに「言うことを聞いてあげる」なんて変なことを口走ってしまったから、どうしようかと少し不安に思いながら帰って来たが。
いなくなってるなら都合がいい。このまま静かな一時を過ごそう。
…。
ん?帰った?
待てよ?
「シュー、あの双子は?」
「……もう、帰った。」
「どんな様子で?何か言ってた?」
「……『お父様が、呼んでる』、そう言って、急いで帰ってった。」
「…っ。」
それはまずい。
あいつらが「父上」に呼ばれて帰っていった。
つまり。
「ナイアーラトテップ」が何かしら動き出したと考えてほぼ間違いないだろう。
このタイミングだ。きっと「クト」をおびき寄せるために何かしたに違いない。
「ガキ等が行ってからどれくらい時間が経った?」
「……まだ、10分も、経ってない。」
「そうか。ならまだ大丈夫か。」
おそらく、しばらくすれば「クト」と「ナイア」の競り合いが始まるんだろう。
そう推測した上で、少し考えなければならない。
「クト」はまだ目醒めて二週間も経っていないはずだ。
その分、まだ「記憶」や「力」も十分に戻っていないだろう。
そんな状態で「ナイア」に狙われれば、ほぼ間違いなくクトの「あの姿」が表に出てくるはずだ。本人の望まない形で。
そのうえ相手が「ナイア」だ。あの「クト」とは言え、おそらくほぼ互角な戦いになってしまうだろう。
そうなると、まずいのだ。
クトの「あの姿」が長い時間表に出ていると。
「ナイア」とはまた別の。
「第三勢力」が、奴を喰いにやってくるのだ。
そいつらが来たら、「クト」は確実に喰われる。
それだけは、阻止しないといけない。
そう考えてると、「シュー」もボクの様子を察したのか口を開いた。
「……クトゥグア、呼ぶ?」
「…それが手っ取り早いか。でも。」
「……貢物、ないね。」
「…。」
「ナイア」に強い「クトゥグア」なら、その事態を速やかに収束してくれるだろう。
だが、「クトゥグア」は頑固だ。
貢物をこちらが準備しないと、話すら聞いてくれないだろう。
奴を招来させる「呪文」も、貢物なしでは無視するだろうし。
それにその彼を呼ぶための貢物は、基本的には「ツァトゥグァ」が作り出した物か、或いは「土に関係する芸術品」じゃなければダメだ。
それが、近くにはない。
「ツァトゥグァ」はボクの事をひどく嫌っている。貢物を作ってもらおうにも、きっとボクの話に耳は傾けてくれないだろう。
手の打ちようがない。
どうするべきか。
「……『壺』くらいなら、今すぐ作れる。」
「…へ?」
「……だめ、かな。」
「シュー」が突然そんなことを言い出した。
壺?そんな物を作れたのか。初めて知った。
けど、それならいける。
「…お願いしていいかい?」
「……うん、任せて。」
そう言うと「シュー」は、目を瞑って地面に手を付いた。
すると、地面がグッと盛り上がり。
そこからあまり見ない柄が入った「壺」が生成された。
本当にすぐに作れたのか。少し驚いたな。
そういえばこいつも「土」に関係する力を持っていたんだったか。
ありがたい。
「……こんなんで、いいかな。」
「上出来だよ。ありがとう。」
「……うん。」
シューは、少しはにかみながら俯いてしまった。
ちょっとは可愛い仕草するじゃないか。
あとはこの壺を持って、「クトゥグア」の所へ行く。
そうすれば、何とかなるはずだ。
「翼の馬鹿はいるか。」
「イア、ハスター、ココニイル」
「よしお前もこい。『クトゥグア』の所まで、急いでいくぞ。」
「ワカッタ」
「じゃあシュー、行ってくるよ。」
「……うん、気をつけて。」
案外早く準備が整った。これでいける。
ボクの「使命」を果たすまでは。
「クト」を、誰かに奪われるわけにはいかない。
誰にも、邪魔はさせない。
ボクは、「クトゥグア」への貢物である壺を「風」で浮かせて。
急ぎ目に外へ向かった。




