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記憶を失くした旧支配者  作者: 南瓜
10日目
36/45

面倒くさいオアソビ。

 「………。」


 ボクは無言で、風に乗ってひたすら飛び続ける。

 ある場所に向かって。



 向かっている場所は、「軍事基地」。

 なるべく大きなところがいいな。



 大きなところを襲えば、その分いい感じの「兵器」が見つかるかもしれないし。

 まぁ危険は伴うだろうが、所詮「ヒト」だ。何とかなるだろう。

 ちゃちゃっと片づけてしまおう。


 と、「ヒト」を襲うのに何の準備もせず呑気な顔をしている自分に少し笑えた。

 昔ではこんな悠長に「ヒト」を襲おうなんて考えは出来なかっただろうに。 



 そう、ボクたちの敵であった「旧神(エルダー・ゴッド)」がまだ居たころは。



 だがその「旧神」はもういない。

 この宇宙のどこかにはいるだろうが、適当な惑星を見つけてそこでぐーぐーと眠ってるんじゃないだろうか。

 もうそもそも「ヒト」には興味を持っていないようだし。

 この地球(ほし)を見守っていた主な「旧神」たちは、「クト」と「ナイア」によってその力を失った。



 だからやろうと思えば、僕たち「旧支配者(オールド・ワン)」はいつでもこの「ヒト」が棲む地球(ほし)を征服できるだろう。



 でも、それをしようとする奴は今日にもいない。

 そもそも他の「旧支配者」はそんな事に興味はないのかもしれない。

 第一ボクすらもそんなことするつもりはない。特に利益ないし。

 

 よかったね「旧神」さん達。悲しいことにこの地球(ほし)は今日も平和だよ。



 などと考えてる間に、少し大きめの「軍事基地」らしい所に着いた。

 うん、これくらい大きな規模の物なら期待していいだろう。

 さぁ、どんなお祭り騒ぎになるかな?



「さ~て、どんな風に料理してくれようカァ~??」



 気分が高揚する。


 ニヤニヤが止まらない。


__________________


 

 ウウゥ~~~~~~~~~~~~~~ゥゥ!


 間抜けなサイレンがうるさく鳴り響き始めた。



 ボクはその「軍事基地」の敷地に入り込み、挑発するように所々を飛びながら行ったり来たりしている。

 そのついでに、辺りの物を壊してわざと騒ぎを大きくした。

 そしてしばらくすると周囲の建物の中から武装した「ヒト」が慌ただしくうようよと出てくる。

 

 いいねぇこの慌てふためく姿。

 見下ろしていて気分がいい。

 


〈奴を撃てぇ!〉

〈容赦するなッ!奴は『風の祟り神』だッ!〉

〈撃て撃て撃てッ!〉


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ 


 仕切りに「弾」が虫の大群のようにこちらに向けて飛んでくる。


 ていうかさ。


 なんでボクが「風の祟り神」って言うくらいの存在だって解ってるのに。

 こうやって「飛び道具」を使うの?

 やっぱり「ヒト」って馬鹿なの?


「お~い、当たってないんだけど~?」


 まぁ当たらないのも無理はないんだけれど。

 ボクの周りの「風の層」に全部弾が流されていくからだ。

 なんかつまらないな。「ヒト」の技術ってこんなもんか。


〈これでも喰らえッ!〉


 ドヒュゥッ!



 お、今飛んできたのが噂の「ろけっとらんちゃー」かな?

 結構カッコイイな。記念に一丁持って帰ろうか。


「っふ~ん?かっこいいね、それ。」


 ひょいっと、飛んできた「みさいる」をかわし。 

 その「ろけっとらんちゃー」を撃ってきたやつに向かってボクはドンッと急接近し。


 持っていた刀で、頭から「真っ二つ」に斬り裂いてやった。



 それと同時に飛び散る鮮血。

 斬った「ヒト」がバタリと倒れ、目の前に「血溜まり」ができた。

 

 この「ヒト」を斬る時の感覚。

  


 ちょっと気持ち悪いが、爽快だ。



〈グレネードッ!〉

 

 カランッ



「……お?」


 足元に何か転がって来た。

 何だろう。



 バーーーンッ!!!



 と思ったら急に爆発した。

 何だったんだ。

 びっくり箱か何かか? 

 ちょっと熱かったくらいで済んだ。


〈き、効いてないぞッ!〉

〈うわあああああああッ〉

〈撃て撃て撃てぇぇぇぇ!〉


 いきなり周囲の奴らが叫び始めた。

 なんだよ一人死んだくらいで大げさな。

 まぁ「ヒト」の近くに来たんだ。さっさとここに来た要件だけ伝えようか。


「ねぇ。ここに『正気』を失わせるような『兵器』ってない?」


〈奴に構うなぁぁッ!〉

〈耳を傾けるなッ!撃て撃て撃てッ!〉


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ



「……へぇ、このボクを無視するとはいい度胸してるねェ~?」


 もうイラッと来た。

 皆殺しにしてやる。


「それじゃあちょっと、静かになって貰おうかナあああああああああッ!」


 ボクは刀をブンッと水平に振り。


 突風を発生させ、目の前のヒトだかりを思い切り吹き飛ばした。

 

〈〈うあああああああああああああああああああああッ!!!!!!〉〉


 それと共に、情けない断末魔が辺りに響き渡る。


 ここの奴ら、きっと戦い慣れしてないんだな。

 じゃなきゃこんな雑魚みたいな戦い方普通はしない。

 これが、「平和ボケ」という奴か。

 愚かにも甚だしい。


「自らの運命を呪うんダねェェェェェェェェェェ!!!!」


 ボクは縦横無尽に飛び回り、断末魔を上げながら荒れ惑う「ヒト」の群れを手当たり次第斬っていく。

 そのたびに、景色が血で赤く染まっていく。

 あまりいい気はしないが、ボクを苛立たせた報いだ。思う存分死ね。


 と、もうかなりの数を斬ったが。

 一向に数が減らない。

 ここには結構な数の「ヒト」が動員していたようだ。 

 まぁ当然と言えば当然だ。

 これだけ規模の多きい基地なのだから。

 


〈砲撃用意、撃てっ!〉


 ドォォォォォォンッ!


 移動するたびに、たまにドでかい乗り物に鉢合わせる。

 これは確か「せんしゃ」だったか。

 これも一応「兵器」だが、こんなんじゃ「クト」には通用しないだろうな。

 ボクに向けて何か撃ってきたが。

 そんなのが当たるとでも思っているのだろか。


 止まっているだけで、その放たれたものはボクを遠ざけて後ろへと飛んでいく。 

 ボクの周りに「風の層」が有る限り、重さや速さ関係なくすべて受け流す。

 ここにある物すべて、ボクには無意味だ。

 やはり、「ヒト」の技術なんざ信用ならないな。



 周囲にはかなりの数の「ヒト」が見える。さっきよりも増えてきた。

 どれも「じゅう」を構えてこちらを仕切りに攻撃してきている。

 建物の中からこちらを狙っている奴もいる。



 だが。

 いくら数が増えたところで、ボクにとってはこんなの「オアソビ」に過ぎない。



「もうそろそろ、終わらせていいよねェ?」



 さて、そろそろあれでも「命令」してみるか。

 

 顔が引きつるほどニヤニヤしてきた。

 これから広がる真っ赤で残酷な世界が目に浮かぶ。


 ボクはあえて低空で飛行し、武装した人がなるべく多く集まる所へ向かって。



 「命令」した。


「…『破裂しろ』!」



 途端。

 ボクの周囲「30m」以内のヒトが。


 内側から血飛沫を上げて「破裂」した。



〈ヴガァァァァァァ!!〉

〈ギャァァァァァァ!〉


 見るも無残な死に方を目の当たりにし、気分が高鳴る。

 肋骨が外へと剥き出しになり、内臓が赤い飛沫と共にバンっと飛び出る。


 実にいい、いい眺めだ!!!



「ッハハハハ!!!!破裂しろ破裂しろ破裂しろ破裂しろ破裂しろ破裂しろ破裂しろ破裂しろおおおおおお!!!アッハハハハッハハハハ!」



 ボクは高速で基地全体を飛び回り、そう何度も「命令」する。


 それと共にボクの下には、数えきれないほどの「『穢い血肉の華』」が咲いていく。

 一面が赤く、紅く、朱く染まっていく。


 もはや人の姿を留めていないそれらを見ながら。


「ア゛ハハハッ!ア゛ハハハハハ!ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」 

 


 ボクは狂ったように笑いこけた。



 ボクの高笑いは、飛び交う断末魔と入り交ざり、奇妙な不協和音をなって辺りを狂気へと陥れていった。


 

 最高に。


 気分がいい。


__________________



 その後、軍事基地を完全に制圧してしまったボクは無事、目的の「兵器」を見つけ出した。


 ボクが手に入れたその兵器は、体内に取り込むだけで身体に何らかの害を及ぼす、いわゆる「毒ガス」という物だ。


 この毒ガスを蔓延させた空気を自由に扱えれば、「クト」にもある程度通用するだろうと判断した。

 勿論試したことはないし、効果もどれほどの物かも解らない。

 そもそも「ヒト」の造った物だし。信用するに値しないが。


「…まぁいいか。」


 今は猫の手も借りたいほど重要な時期なのだ。

 あって損はしないだろう。

 ボクはその毒ガスの入った重たい鉄の筒をふわりと浮かせ、持って帰ることにした。



 でも、基地を制圧するような大げさなことをしておいてこれっぽっちしか持って帰れないのはなんだか酷だ。

 他にも、使えそうな物があれば持って帰ってみるか。

 意外と「ヒト」の造った物はどれも興味深い。

 面白そうなのがあれば、おもちゃにでもして遊ぶか。

  

 ここに長居するとまたうるさくなりそうだ。

 なるべく早く御暇させてもらうとしよう。


「ふ~んふふ~んふふ~ん。」



 そしてボクは。



 警報音などが止み、静まり返った「血で染まった真っ赤な廊下」を歩いて。





 鼻歌まじりに、その場を後にした。

  

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