面倒くさいお出かけ。
風通しのいい洞窟の中。
その洞窟のちょっとした広い場所に、4人の姿があった。
一人は黒いフードを被った男の子。
一人は青紫色の髪をした女の子。
一人は青い髪の毛の、黄色い目をした男の子。
一人は赤い髪の毛の、黄色い目をした女の子。
がやがやとはしゃいでいた子供たちは、今は少し静かになっている。
__________________
いつまで。
…いつまで。
ボクはここに居なきゃいけないんだ。
「ナグ」と「イエイブ」がここに来てもう日を跨いでしまった。
その間ここをこいつらに占拠されっぱなしだ。
ここは孤児院か何かか?あ?
まったく困った物だ。
どうにかしてここを離れなければ。
だがこいつらが気に食わないことをボクがすれば間違いなくボクの命が危ない。
こんな横着な奴らにまだ殺されるわけにはいかないんだ。
どうした物か。
そしてその今問題となっている「双子のチビ共」はと言うと。
ぐっすりと昼寝している。
ついさっきまでは「トランプ」したりして遊んでいたこいつらも、やはり体はチビなのかすぐにコロッと寝てしまった。
「シュー」が「ナグ」を抱っこするように、正方形の大きなベッドの上ですやすやと寝ている。
そして「イエイブ」は。
ボクの膝を枕にしてすやすやと寝ている。
「……はぁ。なんでボクがこんな目に。」
「ん~……。」
下を向けば、びっくりするほど清々しい寝顔がある。
叩き起こしてやろうか。まったく。
こいつらが昼寝するのを見計らってここを抜けだそうとしたのだが、この膝にいる「イエイブ」がボクの行動を先読んだのか、ボクを捕まえてそのままこうして寝始めたのだ。
だがここでこいつを無理矢理起こすと、きっと逆上して怒り始めるだろう。そうなればボクはまず死ぬ。それだけは嫌だ。
だから、こいつが起きるまでは途方に暮れるしかない。
一体何してるんだボクは。
そんな苛立っている所に。
ヒュオオォォォォォオォォ
と音を立てながら、また翼の生えた馬鹿が入って来た。
「イア、ハスター、ジョウホウ、モッテキタ」
「情報よりさ、『兵器』は?」
「……マダダ」
「体洗っておいで?殺してあげるからさ。」
「マッテクレ、ジョウホウ、サキダ」
「っへ~ぇ?そんなに重要な情報があるの?」
「ナイアーラ、ツァトゥグァニ、マケタ、ケガシテル」
「…で?」
「ナイアーラ、クト、オビキヨセルタメ、ヒト、タクサン、リヨウスル」
「…それで?」
「オワリ」
「…。」
「ん~……くとぉ~?」
膝ですやすや寝ていたイエイブの目が覚めた。
よし、これは好都合だ。
「よし、今をもってお前の『兵器』を取りに行く仕事を解く。」
「…ナゼダ」
「頼りないからだ。その代りボクが『兵器』を取りに行く。そしてお前にはこの『イエイブ』の面倒を任せる。いいね?」
「…ワカッタ」
「よし頼んだ。」
「ん~……はすた~うごいちゃだめ~…」
寝ぼけたイエイブがボクの服の裾を引っ張ってくる。
ああ面倒くさい。
「イエイブ。ボクはちょっと用事ができた。だから代わりにコイツに面倒見てもらうんだ。いいね?」
「はすた~がいい~」
「だからボクは―」
「――!!!!」
突然、イエイブの黄色い目がかっと真ん丸に見開かれた。
それと同時にボクに向けられる、殺意。
やばい。
怒らせてしまった。
こうなってしまった場合は、慎重に動かないといけない。
さもないと、四肢満足でここから抜け出せないだろう。
イエイブの目は、じっとボクの出方を窺っている。
肉食動物が獲物を狙う目だ。
なるべく刺激しない様に、そっと口を開いた。
「…わかったイエイブ。頭を撫でてあげるよ。」
そう言ってボクはそっと、イエイブの頭に手を伸ばす。
そしてゆっくり、イエイブの頭を撫でた。
「…これでいいかい?」
「………ん~。」
イエイブの殺気が、和らいでいく。
取りあえずこれで大丈夫か。
危なかった。本当に死ぬかと思った。
「イエイブ、帰ってきたらちゃんと君の言うことを聞いてあげるよ。だからお留守番してて欲しいんだ。いいね?」
そんな寒気のするような臭いセリフを吐きつつ。
「……ん~…わかった~。」
なんとかイエイブを乗り越えることができた。
身の危険はあったが、ちょろいもんだ。
「それじゃ、こいつをよろしく。」
「イア、ハスター、キヲツケテ」
そうして僕はようやく。
ふわりと洞窟を抜け出せた。
なんで洞窟から出るだけでこんな苦労しなくちゃいけないんだ。
__________________
「ふぅ~。まったく困った奴らだよ。」
久しぶりに外の空気を吸った気がする。
別に幽閉されているわけじゃないのに。
長い間閉じ込められていた気分だ。
こうして空に舞い上がって下を見下ろすのは気分がいい。
風も、良好だ。
「さてと、一仕事やるか。」
これからの目的はまず一つ。
「ヒト」の造ってる「兵器」を取りに行くこと。
どんなものでもいい。「正気」を失うような奴ならどんな物でも。
そもそも「ヒト」にあまり興味がないからどんな「兵器」があるかも正直な所解らない。
理想な物は、直接脳に影響するような物か。
あるいは「五感」のどれかに害を及ぼすような物か。
そんなところだろう。
まぁそれらが「クト」に通用するかは不明だが。
目指すは、「紛争地帯」か「軍事基地」か。
まあ手頃そうな「基地」でも襲ってみるか。
ちょっとわくわくしてきた。
顔がニヤけてくる。
「ヒト」の住む場所を襲うのはいつ以来か。
ボクの気分によっては、目に入った者を全部斬るかもしれない。
まぁ「ヒト」のことなんざ知ったこっちゃない。
ボクには関係ないことだ。
いくら殺そうが、いくら暴れようが。
「旧神」がいなくなったこの世界では恐れる物はない。
奴らを無力化してくれた、「クト」と「ナイア」には感謝だ。
まぁその分彼らは何らかの「呪い」を背負う羽目になったが。
まぁそれもボクには関係ない。
ボクは、ボクの「使命」を果たす。
ただ、それだけだ。




