がんばります。
月が大きく輝く夜。
その白く力強い、うっすらとした月の光を浴びる者が一人。
ツンと尖がった灰色のニット帽に、白いロングの、毛先だけ赤い髪の毛。
虚ろな灰色の瞳。
全身を覆う、大きな黒いコート。
崖の上で佇む、その存在。
彼女「ナイアーラトテップ」は、自分の体を労るように。
または、拗ねた子供のように。
膝を抱えて座っていた。
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「………痛い、ですね…」
体が痛みます。
ツァトゥグァのせいです。
奴を「クト」をおびき寄せる駒として利用するため、直接奴に会って、殺して、洗脳しようと思っていました。
ですが、結果は返り討ちに合うという情けない結果に終わってしまいました。
起きたばかりで「力」が戻りきっていない今、戦ったりするのは少し無理があったかもしれないです。
自分を見誤りました。悔しいです。
おかげで奴の重たい一撃を食らってしまい、骨が折れてしまいました。
たぶん肋骨です。
何処かの臓器も、もしかしたら痛めてるかもしれません。
まだ私に「土」を操る力が残っていれば治せるのですが、生憎その力はもう私にはありません。
私は色々「変身」できるので、別の姿になればある程度痛みが緩和できるのですが。
これも生憎、まだ「力」が戻っていない為今はこのひ弱な「ヒト」の姿にしかなれません。
この姿でいるのが私にとっては一番都合がいいので、この体を壊してしまったのは大きな失態です。
そして運の悪いことに、この今の姿がこの世の「ヒト」に知れ渡り恐れられているため、「ヒト」の技術を借りてこの骨折を治すことも出来ません。
今の所、治す手立て無しです。
どうにかしようとは思いますが、どうしようもありません。
怪我を治してくれる人も、私にはいません。
知り合いの「シュー」なら治してくれるかもしれませんが、今は誰かの支配下に置かれているようで連絡が取れません。
なので、「力」が戻るまではこうして途方に暮れるしかないのです。
私は、ひとりぼっちです。
こうして永い眠りから目が覚めても、会いに来てくれる人がいません。
私の体を気遣ってくれる人もいません。
「………寂しい、ですね…」
帰る場所も今はありません。
以前まで住処にしていた場所が、「クトゥグア」によって焼き払われてしまったからです。
あいつは嫌いです。大嫌いです。ぐちゃぐちゃにして殺したいです。
あいつだけじゃなく、皆大嫌いです。
唯一信用できるのは、「あの御方」の声のみ。
その声だけが、私の拠り所です。
「あの御方」はこう言っています。
奴を、「クト」を喰えと。
奴の中に眠る力、あれを喰う。
そうすれば私の呪いも解け、私はこの宇宙で絶対的な存在になれるでしょう。
でも、時間が限られています。
もう一か月もすれば、私は再び永い眠りにつかなければいけなくなるでしょう。
それまでにあの「クト」を喰わなければいけないのです。
ただ喰うだけではなく、奴の「もう一つの姿」が表面に出ているときでないと意味を成しません。
「力」が戻れば、ありとあらゆる手段で策を講じます。
奴の「もう一つの姿」を表に出すのはさほど難しくはないはずです。
利用できる駒はたくさんあります。
一番楽なのは、「イーダー」を使うことでしょう。
問題は、喰えるかどうか。
下手をすれば、逆に喰われてしまう可能性もあります。
でも、やらないといけません。
それが「あの御方」の御意志ですから。
「クト……必ず………必ず喰ってやる…ですね。」
奴の中にある。
「旧神」の力。
それを、喰う。
そうすれば、すべてが終わる。
時間は、限られてます。
でも。
私の「力」が戻るまでは。
しばらく、こうさせて下さい。




