すごろく?
だーさん、どんちゃんさん、いーださんと僕の4人で、「すごろく」と言う遊びをすることになった。
「サイコロ」と呼ばれる数字が彫られた物を振り、振った時に出た数字の数だけ自分の駒を進めていくという物。
大きな板の上に点々と何かが描かれた区切りがあり、その区切りを順番に駒で踏んでいけばいいのだとか。
一番先に「ゴール」をすればいいという訳ではなく、「ゴール」するまでにどれだけの「信者」を集められるか、と言うのがこの「すごろく」の遊び方らしい。
「よし!じゃあ順番決めるか!サイコロ振っていこうぜ!」
「じゃあまずはクト。振りなさい。」
「……は、はい。」
言われるがままに、僕は手渡された「八面サイコロ」を振るう。
この「サイコロ」はとても変わった形をしている。銀色をしていて所々から棘が突き出ている。
ちょっと痛い。
僕が振ったそれは「1」と出た。
「おう。クトどんまい!」
「次はイーダー振りなさい。」
「おっけーっ。」
いーださんが振ったのは「5」と出た。
その次にだーさんが振り、だーさんは「4」と出て、どんちゃんさんは「7」と出た。
数字がより大きい人から駒を動かせるようで、最初はどんちゃんさん、一番最後に僕だそうだ。なんだかちょっと悔しい。
「じゃあ始めるわね。」
どんちゃんさんが再び「サイコロ」を振り、駒を進めていく。
駒を置く場所には所々何か書いてあり、その書いてある指示通りにしなければいけないらしい。
簡単そうな遊びだが、無事にできるだろうか。
出来れば、こういうのは負けたくないのだが。
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何度か順番が回って、次は僕の番だ。
おそらく、今は一番進行が遅い。
僕が振ったサイコロは「4」と出て、その分だけ駒を進めていく。
「『信者の女性と結婚、3マス進む』…。」
「うわああああん!クー浮気しないでぇぇぇぇ~っ!」
「えっ…え。」
「まあクトだったら何人妻がいても可笑しくないしな!」
「でもダメなのぉぉぉぉ~!」
「…。」
こんな感じで、進むごとに彼女が何らかの反応をしてくれるのでなんだか面白い。
他の人たちの番でも、こんな風に反応を示しながら進めていっているので、思っていたよりも楽しい物になっている。
雑談しながら。笑いながら。悔しがりながら。
そんな。
とても、楽しい一時を過ごした。
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そして「すごろく」が終わり、いーださんが1位、だーさんが2位、僕は最下位だった。
悔しい。どうして僕はゲームでよく負けるんだろう。
やったことがないだけでも、こんなに負ける物なのだろうか。
「クー、どんまいっ♪」
「……はい、…悔しいです。」
「ふふっ♪何回もやってたら、その内勝てるようになるよっ!」
「……はい。」
ゲームの結果はともあれ。
彼女の元気が戻ったみたいだ。よかった。
彼女は落ち込んでも、こうのようにすぐ明るく振舞ってくれる。
それが、僕にとっては凄く心強い。
「さぁて!次なにすっかな~!」
「『トランプ』でもやりましょうか。」
「お!いいね~やろうぜ!なっクト!」
「………はい。」
この二人に聞きたいことはまだまだあるけれど。
今はこの時間を楽しもう。
しばらくここにいてくれると言っていたし、聞ける機会はたくさんあるだろうから。
この4人で過ごす時間が楽しい。
これが、「家族」という物なのだろうか。
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「…。」
灯りがついていない、暗い一室。
以前はゴミで埋め尽くされていた広い部屋は、綺麗に片付いている。
その部屋の真ん中で布団を敷き、うつ伏せに寝そべっている存在。
褐色の肌に、ツンとした短い茶髪。
右目が山吹色に、左が黄色。
「極毛」と書かれた黒いシャツに、ステテコ。
彼「ツァトゥグァ」は、新しく新調した「パソコン」をマウスでカチカチと操っている。
何かの「ゲーム」をしているようだ。
「…。」
後ろから、強烈な殺気を感じた。
「…っ!?」
イヤホンを外し、バッと振り返る。
後ろには、誰もいない。
しばらく警戒し、いつでも立ち上がれる体勢で留まる。
彼はすぐ、殺気の正体を把握した。
「………おいおい。勝手に人の部屋を覗き見とは、いい趣味してんなぁ?『ナイアーラ』さんよぉ。」
「――(ふふ、相変わらず察しだけはいい、ですね?)」
転がり跳ねるような、可愛らしい少女の声が部屋に響く。
その声から感じる、明確な殺気。
どこから声が発せられているのかは、すぐには解らない。
「俺になんの用だ。あ?」
「――(ずいぶんと勝気、ですね?嫌いじゃないです、その姿勢。)」
「当然だろ?『寝起き』の女の子にビビる男がいるかよ。」
「――(ふふ、面白い、ですね?ではそんな『寝起き』の女の子のお願い、聞いてくれますね?)」
「お願いだぁ?何の見返りも無しには聞けねぇな?」
「――(いえ、意地でも聞いてもらう、ですね?)」
「…ヤるきか。ちょうど体を動かしたかった所だ、表に出な。」
そう言ってツァトゥグァは床を蹴り跳躍し、部屋の壁をすり抜けて外に出た。
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スタッ
「…。」
外に出てきたツァトゥグァは周囲を見渡す。
外は薄暗いが、ツァトゥグァの目にはさほど暗くは感じない。
間もなくして、少し離れたところに先ほどの声の主を発見する。
上がツンと尖がった灰色のニット帽に、白いロングの髪の毛。
毛先がうっすらと赤みがかっている。
目は、虚ろな灰色の瞳。肌は白い。
全身を男物の大きな黒いコートで覆っている、その存在。
両腕を少し開きながら、不敵に笑っている。
「んで?そのお願いってのはなんだよ。」
「…『クト』を、外に呼び出してほしい、ですね?」
「はっ!お断りだ。自分で呼び出したらどうだ?」
「…お願いを聞けないのなら、貴方を拉致して『洗脳』し、無理矢理呼び出させる、ですね?」
「ほぉ~そいつはご苦労なこった。だが断る。まだ『クト』をお前に合わせるわけにはいかねぇからな。」
「…なら、こうするまで、ですね?」
「…っ!」
バンッ
「拳銃」を取り出し様に打たれたが、回避できた。
「はっ!安っぽいベレッタだなぁ?趣味悪いぜぇ?」
「…もっと大きい方がいい、ですね?」
そう言って、「ナイアーラ」が両手に一丁ずつMG3を構えた。
「おっと。『俺を守れ』!」
そう「命令」し、地面を盛り上げ、目の前に壁を作り出した。
ダダダダダダダダダダダダダダダッ
弾が放たれる音が絶え間なく鳴り響く。
「おいおい!『拉致』するとか言っときながら殺る気まんまんじゃねぇか!」
「…仮に死んでも、生き返らせればいいだけ、ですね?」
「ちっ、しゃあねぇ。『奴を貫け』!」
そう「命令」した途端、「ナイアーラ」に向かって無数の「土」の槍が向かって行く。
それを「ナイアーラ」が真上に大きく跳躍し、回避する。
「…そんな物が当たると思う、ですね?」
「『奴を捕えろ!』」
今度はナイアーラを囲うように巨大な壁が反り立つ。
その壁にナイアーラが包み込まれた、瞬間。
壁がバンッと破裂し、中から平然とした顔でナイアーラは出てきた。
「…ツァトゥグァ、見苦しい、ですね?抵抗しないで、大人しくやられ―」
「撃ちなさいッ!」
途端、ツァトゥグァの神殿からナイアーラに向かって、「追尾性」のある黒い砲弾が撃たれる。
「…!?」
さすがにそれには怯んだのか、ナイアーラはバッとその砲弾の追尾を振り切ろうとする。
だが、その行動を先呼んで。
「おらよッ!」
ガンッ
土の塊が纏わりついた腕で、ツァトゥグァがナイアーラを思い切りぶん殴った。
「うっ!くっ…」
地面に叩きつけられたナイアーラはすかさず体勢を立て直し、ツァトゥグァから距離を取った。
その様子を見て、ツァトゥグァが嘲笑する。
「『ナイアーラ』さんよぉ。見苦しいのはお前だぜ?『土』を操る力を失ったお前なんざ、俺たちにとっちゃ恐るるに足らんってことだ。大人しく帰りな。」
「…ツァトゥグァ、許さない、ですね?…」
ツァトゥグァを睨みつけながらナイアーラは言い放つ。
「…いいです、『クト』に干渉する方法は、まだある、ですね?」
「『クト』には指一本触れさせねぇ。今の『クト』には、な。」
「…必ず、『クト』を、『喰ってやる』ですね…。」
「あいつの『中身』を、だろ?今のままじゃ喰っても意味ないぜ?」
「……。」
そして、ふぅっと闇に溶けてナイアーラは消えてしまった。
「……ふぅ。焦った焦った。まぁ奴も『寝起き』だし、所詮はあんなもんだな。」
そう言って、近くに落ちていた「黒いぶよぶよと蠢く砲弾」を拾い上げ。
神殿からこちらに手を振ってくれている「シャタク」に向かって。
ツァトゥグァは手を振り返した。




