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記憶を失くした旧支配者  作者: 南瓜
8日目
24/45

いい人?

 小さな炎に変貌してしまった「クトゥグア」さんと会話している。


 先ほど僕は、襲いかかってきた「クトゥグア」さんの燃え盛る拳に触り、その触った時の衝撃で彼の黒い巨体を木っ端微塵にしてしまった。

 

 なぜ僕が触っただけで彼の体が砕け散ったのかは、詳しいことは解らない。

 ただ、僕は「水」で彼は「炎」であり、「炎」は「水」に消される物であると。

 そういーださんに説明され、そういう物なんだと納得してしまった。


「とりあえずさぁ、この周りの騒がしい人達って何とかできない?」

「…うむ。体を元に戻せれば、静まるよう我輩から『命令』しよう。」

「……本当に、すみません。」

「クトゥルフ。お主は先ほどからそれしか言っておらぬな。もうよいと言っておろうに。」

「…はい。」

「もぉクー、悪いのはこいつなんだからっ、落ち込んじゃダメ!」

「……はい。」


 そんな会話から間もなくして、「クトゥグア」に使えているのであろう人達が駆けつけ、彼の小さな炎に大量の薪を添えた。

 すると彼の姿は忽ち大きくなり、最初に見た黒い「大男」の姿へと戻った。

 体が戻るとすぐ彼は。


「諸君!!!我輩は不死身であるっ!!!静まりたまえぇぇぇ!!!!」


 と、この「王座の間」の全員に聞こえるような大声でそう叫んだ。


〈クトゥグア様が蘇ったぞ!〉

〈さすがクトゥグア様だ!〉

〈クトゥグア様バンザイ!〉

〈イーアッ!クトゥグア!〉

〈イーアッ!クトゥグア!〉


 周囲にいた人達もその一声に安心したのか、そんな彼の姿を見て散り散りに解散していった。


「不死身って…さっき消えかけてたくせにっ。」


 隣でいーださんが目を細めてボソッと呟いていた。 

 

__________________


 元の姿に戻った「クトゥグア」さんが、豪勢な椅子に腰かけながら僕たちと話をしてくれている。


「先までの多大なる無礼、失礼した。改めて名乗らせてもらおう。我輩―」

「『クトゥグア』だよねうんうんもう解ってるから名乗らなくていいよっ。」

「………うむ。」


 いーださんが何か喋りたそうな彼を無理やり黙らせた。


 僕は、この「クトゥグア」さんにあいさつしにここへ来ただけだと思っていたが。

 彼女はまだ何か彼に用があるようだった。

 それも、重要な話なのだという。


「して、イーダー。要件と言うのは何だ。」

「……『アイツ』に、何か動きがあるってつっちーから聞いたの。」

「つっちー、『ツァトゥグァ』のことであるな。」

「うん。つっちーが言うんだから、ほぼ間違いないと思うの。」

「ふむ………。」


 僕はそんな二人の会話を静かに聞いている。

 彼女の言う『アイツ』とは誰のことだろう。

 気になって、聞いてみた。


「……あの。」

「んっ?なにっクー。」

「……いーださんの言う、『アイツ』って、どなたですか?」

「…そういえばクーにはまだ言ってなかったっけ?」

「クトゥルフ。お主まだそんなことも知らぬのか。」

「うぅ!クーはまだお勉強中なのぉ~!」


 そして彼女が、僕の方に向き直って答えてくれた。


「『アイツ』って言うのはね、『ナイアーラトテップ』のことなのっ。」

「……ナ、ナイ…。」

「『ナイアーラトテップ』だよっ。」

「……。」


 難しい名前の人だなぁと思った。

 その「ナイアーラトテップ」さんが、どうしたというのだろうか。


「クトゥルフ。お主にとっても、そやつは決して無視できぬ存在であろうな。」

「……はぁ。」

「だからねクトゥグアっ!私たちに協力してほしいのっ!お願いっ!」

「……………。」


 その「ナイアーラ」さんについて聞く前に、話が進んでしまった。

 「クトゥグア」さんは少し考え、口を開いた。


「断る。」

「…なんでっ!」

「そもそも、クトゥルフ。お主はまだ一歩も『真理』に近づけてはおらぬではないか。そんな状態で我輩が協力した所で、何も意味は成すまい。」

「でもっ!」

「イーダー。お主の焦る気持ちは痛いほど解る。だが今はその時ではない。」

「…うぅ。」


「あの!」

 

 少し声を張り上げて、僕は話の流れを遮る。

 どうしても、気になる単語が一つある。


「『真理』って、何なんですか。僕は、何をすればいいんですか!」


 どうしても、もやもやする。

 僕が何も解らないのが原因で、彼女を困らせてしまっている気がするから。

 解らないことは、すべて解決しておきたい。


 そんな僕に、少し怒るような表情で「クトゥグア」さんが答えた。


「クトゥルフ。お主の『真理』は、お主自信が見つけ出すのだ。」

「……僕、自信。」

「そうだ。お主が自信の『真理』を見出せば、それに伴い周りの全てが変わるだろう。お主が『真理』を見い出さなければ、周りは何も手出しできぬのだ。」

「……。」

「だが『真理』はすぐそばにある。それにお主が気づいた時には、我輩もお前に協力することを約束しよう。」

「ほんとっ!クトゥグア!」

「無論だ。我輩も鬼ではない。」


 彼女の表情が和らいだ。何か安心したようだった。

 

 でも、僕はいまだにもやもやしたままだ。


 「真理」って何なんだろう。僕自身が見つけ出さなければいけない物らしい。

 周りは何も手出しできないのなら、その「真理」は僕にしか見えないのか。


 考えれば考えるほど。

 頭がくらくらしてくる。

 僕は、何をすれば。


 そんな思考の途中で。


 だらだらだら、と。

 唐突にいーださんが僕の頭へ、どこから出したのか「水」を垂らしてきた。


「クー、考え過ぎちゃダメっ。ゆっくりでいいんだよ。」

「……いーだ、さん…。」


 いきなり「水」をかけられて驚いたが。

 でも、その「水」のおかげで僕の思考が落ち着いた。

 「水」が体に浸透し、心が安らぐ。

 混乱していた僕の思考が、安定してくる。

  

 そしてもう一度、彼に問いかける。


「…その僕の『真理』って、すぐに見つけなきゃいけないですか。」

「それはお主次第だ。すぐにとは言わぬ。だが一つ言えるのは、時間は限られているということだ。」

「時間…。どれくらいの時間があるんですか。」

「………。」

「……『真理』が見つかれば、解るんですね。」

「その通りだ。」

「…教えてくれて、ありがとうございます。」

 

 ようやく解った。


 僕は「クトゥグア」さんに深々と礼をする。


 一つの答えが見つかった。僕はには、その「真理」が足りない。


 これからの「目的」が見つかった。

 僕の、「真理」を見つける。

 それが、僕のやるべきこと。


「礼などいらぬ。そんな暇があれば、『今』を大切にすることだな。この瞬間にも、できることはあるのだぞ。」

「……はい。」


 「クトゥグア」さん。

 思っていたよりも、とてもいい人だった。


__________________



 その後は彼女と相談し、とりあえず帰ることにした。

 頭の中がちゃんと整理できていないので、少し落ち着きたい。


「クトゥルフ。」

「………はい。」


 改まったように、帰ろうとしていた僕を彼が呼び止めた。


「『ハスター』にはもう会ったか。」

「…はい。」

「ふむ。ではこれも言っておこう。彼はお主を殺めようとあらゆる方法で接近してくるだろう。だが、彼そのものが『悪』という訳ではないのだ。それだけは心に刻んでおけ。」

「……は、はい。」


 いまいち言ってることが理解できないまま、返事をしてしまった。

 「ハスター」が、悪という訳ではない。

 どういう意味だろう。

 彼は、僕のことが嫌いなんじゃないのか。

 だがそれも、僕が僕の「真理」を見つければ。

 解るはずだ。 


「もぉ~『クトゥグア』!あんまりクーに次々と言わないであげてよ~!可哀想でしょ!」

「こやつを思って言っておるのだぞ。何も不必要なこ―」

「あーあーもう何も聞こえない~!もうっ!いちいち話が長いんだよっ!行こっ!クーっ。」

「ふん。イーダーも変わらぬな。自分を変えられぬままが故に、未だに一度もひめご―」

「だぁ~~~~~!!もおぉ!うるさいってばぁ!」


 

 そんな賑やかなやりとり。

 そして、「クトゥグア」とのしばしのお別れ。


 この人とは、今度もっと色々な別の話がしたい気がする。

 とても、僕にとって重要な人のような気がするから。



 そして僕たちは、「クトゥグア」の元を後にした。










「……『今回』のこやつなら、或いは、成し遂げられるやもしれぬな。」


二人の去った後。


そう、「炎の主」は呟いた。

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