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記憶を失くした旧支配者  作者: 南瓜
6日目
19/45

面倒くさい奴ら。

「……………………。」



 深い青色の湖から、風通しのいい大きな洞窟へと、浮遊しながら入っていく小さな存在がいた。


 黒いフードをずっと被ったままの男の子。

 両腕には、歪な「刺青」。


 彼「ハスター」は洞窟の中にある自分のテリトリーを目指して飛んでいく。



 多少、頭が冷えてきた。

 さっきは気が立ち、「シュー」に対してあらぬ暴言を吐いてしまいそうになって自ずから洞窟を出た。

 その後は、あの口やかましい翼の生えた馬鹿を危うく殺してしまいそうになったが。そいつに頼みごともできた。

 あいつは頭こそ悪いが、仕事の速さだけは一級だ。


 きっとそんなに日を経てず、ヒトの「兵器」を持ってきてくれるだろう。

 そもそもあいつがそれをどんなものか理解しているかは不明だが。

 

 まあ思ったのと違う物を持ってきたならぶっ殺してボクが取りに行けばいい。

 「ヒト」のことだ。脅せばすぐ差し出してくれるだろう。




 そう考えてるうちに、いつもの居住スペースにたどり着いた。



 が。



「お姉ちゃんトランプしよ~?」

「とらんぷとらんぷ~。」





 引き返すことにした。


 面倒くさいのがいる。



「あっ、ハスターだっ!」

「はすた~はすた~!」





 やばい見つかった。

 少し速度を上げて、急いでその場を離れようとした。



 が。


「えいっ!」



 遅かった。

 ボクはその背中に「乗ってきた」奴の殴打で、力なく地面にたたきつけられた。

 続けてボクの背中に二度、強い衝撃が走る。肩の上と、腰の上に。

 ボクに馬乗りになって、ボクの動きを封じてきた。痛い。



「ハスタートランプしよ~?」

「とらんぷとらんぷ~。」

「…シューとお前らで3人いるんだから充分だろ。」

「トランプは4人が鉄板だよ~。」

「てっぱんてっぱん~。」

「ボクは色々準備しなきゃいけなんだ。お前らに構ってる暇はない。」

「トランプしてくれないならハスターの目玉食べる~。」

「あたしもたべゆ~」



 はあうざい。


 何でボクの周りにはこう面倒くさい奴しかいないんだ。

 これも全部「クト」のせいだ。


「僕は右目~。」

「あたしはひだりめ~。」

「…わかったよトランプするから離れろ。」

「やったー!」

「やった~!」


 そういうと、ボクに馬乗りになっていた二人が立ち上がり、ボクを解放した。

 なんでトランプしないだけで視力を奪われなければいけないのか。はたまた疑問だ。


 この隙に逃げてやろうかと思ったが、こいつらから逃げるのはそれこそ命がけだ。今はこいつらに従うしかない。



 ボクはずるずると二人に引きずられていく。

 まるで肉食動物が、捕えた獲物を自分の住処に引きずり入れるかのように…。



__________________



 こいつらは双子だ。


 ボクの左側にいるのが「ナグ」。性別は男。さっき肩に乗っかってきた方。

 青い髪の毛に黄色の目。肌は茶色で、目は猫のように瞳が縦に長い。

 性格はしっかりしてるが、面倒くさい。


 右側にいるのが「イエイブ」。性別は女。腰のあたりに乗っかってきた方。

 赤い髪の毛に黄色の目。肌は白く、こいつも目が猫みたいだ。

 いつもふわふわしていて、面倒くさい。



 「シュー」がボクの所に来て以来、こいつらがたまにここに遊びにくるようになった。確か「シュー」の弟と妹だ。


 二人ともかなりへんちくりんな性格で、気に食わないことがあたったらすぐ何か仕出かす。



 実際ボクはこいつらに、両腕を「噛みちぎられた」事がある。

 側にいた「シュー」がすぐに繋ぎ止めてくれたが、「シュー」がいなければ今ごろボクの腕はこいつらの腹の中だ。

 それくらい、面倒な奴ら。



「……あ、はすたー。おかえり。」


 いつもの居住スペースに戻ってきた。

 すぐ正面で「シュー」がゆったり座っている。


 青紫の髪の毛。灰色の瞳。今は白いもこもことして温かそうな服を着てる。

 あんな服あったっけ。


「今度からこいつらをどこかに縛りつけといて。」

「……今は、盛んな年頃。仕方ない。」

「トランプしよ~?」

「とらんぷとらんぷ~。」

「…………はあ。」


 溜息をつき、敷いてあるマットの上で座る。


 ただでさえ憂鬱なのに。

 こいつらのせいでさらにイライラする。

 全部「クト」のせいだ。全部。


「……はすたー。いらいら、してる?」


 後ろから「シュー」が抱きしめてきた。


「してるように見える?」

「……見える。」

「だろうね。」

「……りらっくす。りらっくす。」


 そう言ってボクの頭をフード越しに撫でてくる。正直うざいからやめて欲しいが、悪い気はしなかった。


「お姉ちゃんトランプシャッフルして~。」

「しゃっふるしゃっふる~。」

「……うん。貸して。」


 ボクの後ろから立ち、二人の元へ歩いて行った。



 こんなことしてる場合じゃないのに。

 ボクは何やってるんだ。

 自分の「使命」を果たすべく、準備しなきゃいけない事があるのに。



 でも。


「お姉ちゃんっこの前のシャッフルやって~?」

「やってやって~。」

「……うん。見てて。」

パラパラパラパラパラっ

「凄~い!」

「すごいすご~い。」




 …たまには息抜きも必要か。


 そう自分に言い聞かせ、面倒な一時を過ごす。









 まだ、「日」に余裕はある。


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