ACT.4 Chap.2-4
驚くことに、それはあの夜、私を殺したうちの一人―――私にナイフを突きつけた、あの若い男だったのだ。
男は、少女たちを殺すことに快楽を覚える性質の人間だったらしい。その所行の全てを、私が外国人だったということだけで全てなすりつけようとしたのだ。
私はある晩、男の家に忍び込み、彼を糺した。彼は全て認めたよ。笑いながらね!
その笑みを見た私は、酷く残酷な衝動に駆られた。
この男がいなければ、このような身体になることはなかったのに―――この男が馬鹿なことをしなければ、リョウが死ぬこともなかったのに、と。
私が不穏なことを考えたのが分かったのだろう。男は暖炉から火掻き棒を取り出して私に向けて振り回した。生身の人間であれば多少なりひるんだだろうが、私にとっては脅しにさえならない。私はそれを右手で奪うと、残った手で鳩尾に当て身を食らわせてやった。右手の平は熱を帯びていた火掻き棒の所為で焼け焦げているようだったけれど、構わなかった。
力の抜けた男の首筋に牙を剥き、それこそ血の気が無くなるほど私は『食事』を貪り続けたのだ。―――不味かったよ。血の味というのは、その人間の性根によって善し悪しがあるのだろうか、というほど。悪酒のような不味さだった。
ぐたりと倒れた男を見た瞬間、何とも言えぬ快感と、同時に、途方もない空虚が腹の底から湧いてきて、私は気分が悪くなった。身体はとっくにヴァンパイアであったのに、心はまだ人間だったようだ。身も心も化け物に成り下がったという事実が、私のわずかばかり残っていた良心を責めた。
その責め苦に耐えかねた私は、また食事を絶った。馬鹿だと思うだろう―――だけれど血を見るたびに、リョウを殺した日のことを思い出すのだよ。男を殺したこと自体には、正直何の感慨も湧かなかった。ただ、犯人を見つけて恨みを晴らしてしまえば、後に残ったのはリョウを殺してしまったことを嘆き続ける私一人だ。私が蘇ったのはきっと、真犯人を捜すことへの執念と、再びリョウと暮らすことへの執着に違いない。そのどちらも失っては、私は生きる理由さえ見つけられなかったのだ。
私はそれ以来、完全に人との関わりを切った。町の人間たちは、私が屋敷を捨てたか、死んだのだろうと思っていたようだね。それは私にとって好都合さ。疑いをかけられることなく『食事』をすることが出来たからね。私は一人殺めるたびに薔薇の苗を植えるようになった。罪滅ぼしにはならないだろうけれど、私が一体何人を手にかけたのか忘れないために。
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