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渇きの聖域 —— 聖女の毒を啜る異形騎士の狂愛  作者: beens
第1章 蜜の枷と堕ちた騎士

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第8話:冷たい拒絶と、首輪を繋ぐ極上の蜜

深夜の大聖堂。何重もの結界が張られた聖女の自室の重厚な扉が、乱暴にこじ開けられた。

「……エアラ様ッ!!」

暗い部屋に転がり込んできたのは、誇り高き騎士団長アラリックだった。

兜は放り捨てられ、金糸の髪は脂汗で額に張り付いている。彼の右目は、もはや人間のそれではない、どす黒い真紅の光をギラギラと放っていた。

彼は四つん這いになり、猛獣のような荒い息を吐きながら、寝台で祈りを捧げていたエアラの足元へとすがりついた。

「どうしたのですか、アラリック。夜更けにそのように乱れた姿で」

エアラは驚く素振りも見せず、手元の聖典をゆっくりと閉じた。

彼女の放つ、あのむせ返るような甘い血の匂い。それを嗅いだ瞬間、アラリックの喉がヒュッと鳴り、全身の筋肉が歓喜に痙攣した。

「ほ、北方の……辺境へ行けと……大教主が! 半年です、半年も……ッ!」

アラリックは、すがるように彼女の純白のドレスの裾を強く握りしめた。

「耐えられません! あなたの……あなたの『これ』がないと、私は……私はもう、一日たりとも正気を保てない! どうか、私を連れて逃げて……いや、あの豚(大教主)を今すぐ殺して――」

「黙りなさい」

ピシャリと。

絶対零度の冷たい声が、アラリックの狂乱を切り裂いた。

エアラは冷酷な目で見下ろし、自身のドレスの裾をアラリックの手から乱暴に引き剥がした。

「……教会の決定に逆らい、大教主を殺す? それが、光の聖女に仕える筆頭騎士の口から出る言葉ですか」

「え、あ……ら、様……?」

「醜いですね、アラリック。ただ血に飢え、理性を失い、飼い主に泣きつくただの獣。……私の誇り高き騎士は、そんな浅ましい化け物ではありませんでしたよ」

彼女は冷ややかに背を向けた。

「私のもとから去りなさい。半年すら耐えられないというのなら、あなたは私にとって無価値です」

ドンッ、と。

アラリックの視界が、真っ暗に染まった。

突き放された。見捨てられた。

彼女の庇護がなければ、自分はただの呪われた異形だ。血の渇きに狂い、やがて討伐されるだけの惨めな怪物。何より――この至高のエクスタシーを、二度と味わえないという圧倒的な絶望。

「あ、あああ……っ! 嫌だ、嫌です、嫌だッ!!」

アラリックは床に額を打ち付け、ボロボロと大粒の涙を流しながら泣き叫んだ。

騎士としての尊厳など、欠片も残っていない。ただ、麻薬を取り上げられた重篤な患者のように、自身の髪を掻きむしり、彼女の足にすがりつく。

「捨てないでください! 私はあなたの犬だ! あなたの犬だ! 何でもします、何でも……だから、どうか、見捨てないで……ッ!!」

嗚咽が部屋に響き渡る。

彼が完全に壊れきり、自らの意思をすべて放棄して『完全な服従』を誓ったその瞬間。

「……ええ。よく言えましたね、私の可愛いアラリック」

不意に、冷たかったはずのエアラの声が、とろけるような甘さを帯びた。

彼女は床で泣き崩れるアラリックの前にしゃがみ込むと、その両手で彼の顔を優しく包み込み、引き上げた。

「……え?」

「あなたは私のもの。私が命じない限り、死ぬことすら許されない私の所有物です。……それを、その身の奥底まで刻み込んであげたかったの」

彼女は妖艶に微笑むと、自らのドレスの裾を太ももまで大きく捲り上げた。

月明かりに照らされた、雪のように白く柔らかな肌。彼女はそこへ、ためらいもなく短剣の刃を滑らせた。

ツー……と、黄金の果実から滴るような、濃密で甘い血が溢れ出す。

「半年間、北の辺境で生き延びなさい。同行する異端審問官の監視を欺き、その呪いの力を完全に自分のものにして……。そして、私を奪おうとするあの豚どもを皆殺しにする『真の怪物』になって、ここへ帰ってくるのです」

それが、聖女の口から放たれた恐るべき『殺戮の密命』だった。

「さあ、誓いの口づけを。半年間、他のどんな血を啜ろうとも、決して私の味を忘れないように……最も深い罰(ごほうび)を与えてあげます」

「あ……ああ、あぁぁぁッ!!」

アラリックは弾かれたように彼女の太ももにすがりつき、深く、深く牙を突き立てた。

首筋や腕とは違う、直接的な生命の熱が伝わる柔らかな肉。

流れ込んでくる桁違いの質量の『業(毒)』が、アラリックの全身の細胞を焼き尽くし、脳髄をドロドロに溶かしていく。

(――誓う。誓います、我が聖女(あるじ)様!)

強烈な快楽(エクスタシー)の中で、アラリックは歓喜の涙を流しながら血を貪った。

北方の極寒の地だろうが、どんな地獄だろうが構わない。この血を再び味わうためなら、世界中を血の海に沈めてみせる。

冷たい月明かりの下、聖女は恍惚と血を啜る怪物の頭を撫でながら、来るべき王都崩壊の未来を夢見て、淫らに微笑んでいた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

読者の皆様の応援のおかげで、ここまで書き進めることができています。

もし「続編が気になる!」「応援してるぞ!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや、星での評価で応援をいただけないでしょうか。

皆様のポイントが、ランキングを駆け上がる原動力となります!

これからも熱い展開をお届けします!

よろしくお願いします!


<beens 過去作>

https://mypage.syosetu.com/mypage/novellist/userid/3017364/

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