↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
渇きの聖域 —— 聖女の毒を啜る異形騎士の狂愛  作者: beens
第3章 狂愛の檻と血塗られた箱庭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/75

第22話:砕け散る聖剣、そして無慈悲なる絶対悪

王都の正門前広場。

教皇領最強の剣聖、ヴァンデルの全身から立ち昇る神聖力(ホーリーオーラ)は、暗く沈んだ王都の空に巨大な光の柱を打ち立てていた。

「おお……! 剣聖様の『天光裁断(てんこうさいだん)』だ!」

「いかなる魔物も一刀に付す、神の奇跡の具現……ッ!」

背後に控える聖騎士たちが、その神々しい輝きに祈りを捧げる。

ヴァンデルの構えた白銀の聖剣は、凝縮された光のエネルギーによって元の数倍の大きさに膨れ上がり、周囲の石畳がその熱と圧力だけでチリチリと崩壊していく。

「アラリック……かつて我が誇りであった、哀れな教え子よ。せめて私の手で、お前の魂を光の元へ還そう!」

「――おおおおおォォォッ!!」

ヴァンデルが地を蹴った。

音置き去りにする神速の踏み込み。歴戦の技術と、揺るぎない信仰心、そして己の全生命力を乗せた、物理と魔術の頂点とも言える必殺の一撃。

巨大な光の刃が、アラリックの巨体を真っ二つに両断すべく、脳天へと振り下ろされた。

直撃の瞬間、凄まじい閃光が広場を飲み込んだ。

「やったか……!?」

聖騎士たちが歓喜の声を上げかけた、次の瞬間。

「……随分と、冷たい光だな。老いぼれ」

光の奔流の中心から、退屈しきったような重低音が響いた。

「な、に……!?」

ヴァンデルの目が見開かれた。

閃光が晴れた視界。そこには、振り下ろされた神聖なる光の刃を、アラリックが『素手』で――それも、欠伸を噛み殺すような気怠い表情で、片手で鷲掴みにしている姿があった。

「ば、馬鹿な……!? 我が命を削った神聖力だぞ!? なぜ、魔に堕ちた貴様の肉体が消滅しない!」

「消滅? この程度の火遊びでか?」

アラリックの口元が、耳まで裂けるように吊り上がった。

彼が掴んでいる光の刃の周囲から、どす黒い真紅の瘴気が溢れ出し、ヴァンデルの純白の神聖力を『喰らい』始めたのだ。

シュゥゥゥッ、と光が黒く変色し、蒸発していく。

「技術。信仰。正義。……下らない。そんな脆いもので、俺を満たせるわけがないだろう」

アラリックの腕の筋肉が、丸太のように膨張した。

「俺を焼き焦がすのは、あのお方の甘く残酷な『毒』だけだ。貴様らの安い光など、ただの泥水に等しい」

メキキッ……! バキィィィィンッ!!

信じられない音が響いた。

アラリックがギリッと掌に力を込めた瞬間、絶対に砕けないはずの聖剣の刀身が、ガラス細工のように無残に粉砕されたのだ。

「あ……」

ヴァンデルの口から、絶望の吐息が漏れた。

剣が砕かれたのではない。自分の人生、正義、光の神への信仰、そのすべての価値が、目の前の理不尽な暴力の前に「無意味なゴミ」として握り潰されたのだ。

「さて。早く、あのお方の温かいベッドに戻りたいのでね。……退場しろ、恩師殿」

アラリックは、呆然と立ち尽くすヴァンデルの胸ぐらを片手で掴み上げると、空いた右手を槍のように真っ直ぐに突き出した。

ドスゥッ!!

「が、はっ……」

白銀の分厚い胸当てを紙のように貫通し、アラリックの凶悪な爪がヴァンデルの背中から突き抜けた。

その手には、まだドクドクと脈打つ老騎士の心臓が握られている。

「団、長……?」

「あ、あああ……っ! 剣聖様が、一撃で……!?」

背後の聖騎士たちが、恐慌状態に陥り、武器を取り落とした。

アラリックはヴァンデルの心臓を無造作に握り潰すと、その遺体をゴミのように石畳へ放り投げた。

血に濡れた手を鬱陶しそうに払いながら、彼は震え上がる聖騎士たちを一瞥する。

「レオン。残りのゴミの掃除は任せる。……一匹たりとも、生かして帰すな。この王都の静寂を乱した罪、その命で償わせろ」

「はっ! 御意のままに、我らが真王(あるじ)よ!!」

立ち上がったレオンをはじめとする白銀の亡霊たちが、絶望して逃げ惑う聖騎士たちへ、飢えた獣のように飛びかかっていった。

もはや戦闘ではない。それは、上位存在による一方的な「屠殺」だった。

悲鳴と血しぶきが舞い散る広場を背に、アラリックはゆっくりと大聖堂へと歩みを進める。

視線の先、遥か上空のバルコニーでは、純白のドレスに黒いチョーカーを巻いた聖女が、頬を紅潮させて下界の惨劇を見下ろしていた。

彼女の瞳にあるのは、慈愛ではなく、自分に絶対的な暴力を捧げる魔王への、狂おしいほどの愛欲と熱情。

(待っていてください、私の聖女様。すぐに貴女の元へ戻りましょう)

アラリックの口元に、甘く残酷な笑みが浮かんだ。

正義は死に絶えた。ここからは、誰にも邪魔されない、本当の『魔王と聖女の狂宴』が始まるのだ。

更新通知を受け取りたい方は、ぜひブックマークをお願いします!

「続きが気になる」「面白い」と思っていただけたら、下の☆☆☆☆☆から評価をいただけると、執筆の大きな励みになります!


<beens 過去作>

https://mypage.syosetu.com/mypage/novellist/userid/3017364/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。