6話「ベタな師弟関係」
今回少し少な目ですね。
あらすじ
ギルド登録を果たし、初クエスト!
と思いきや保護者同伴?!
この小説に普通などあり得ない
きっとまたベタなハプニングがぁ!?
夕暮れの森の中で二人の男女が走っていた。
それはどうも駆け落ちなどという熱い逃避行
ではなく、何者かに追われているようだった。
刻一刻と日は落ちていき、森の中の
視界も徐々に悪くなっていく。
足場の悪い森の中で暗くなって行く足元。
女の方が何かに躓き倒れこむ。
「ルーシー!大丈夫か?!」
男は女の方を振り返り手を指し出す。
追っ手は運良く二人を見失っていたらしく
すぐに追いつかれることは無さそうだ。
「ありがとうございます碧大さん。
でも……こんな事になるなんて……」
ルーシーは差し出された手を取ると、
自分たちを追っていた魔物を木陰から見据える。
「あぁ……ルーシーはゴブリンに追われる
星の下にでも生まれてきたのかい?」
碧大がそう冗談めかして言うと
頬をふくらませたルーシーが抗議する。
「いじわるです!
……そんなつもりないのに……」
ルーシーが落ち込んだような
演技をして碧大を見た。
「ごめんごめん。冗談だよ!」
「もう!
今日の夕食、
碧大さんだけおかず抜きです!」
冗談を言えるだけ
状況は切迫していないのだろうか。
そんなハズは無く、
二人のイチャイチャした雰囲気に気付いたのか
何体かのゴブリンがこちらへ向かってくる。
今朝ギルドの採集クエストを受けていた
ハズの二人がなぜゴブリンなどに追われて
いるかと言うと、時間は今日の昼過ぎに戻る。
―――
「碧大さんそろそろお昼にしましょう!
私サンドイッチ作ってきたんです。」
「おっ、そうしようか
だいぶ集まったし食べ終わったら町に戻ろう」
ルーシーの同行を、このころには半ば
諦めていた碧大が答える。
「あの辺なんてどうですかね?
日蔭もありますし」
ルーシーが指し示した先は森の入口にある
少し傘が大きめの木で、
碧大達を、刺すように照る太陽の日差しから
昼食を食べる間隠すのに
ちょうど良さそうな日陰を作っていた。
「でもあそこ
森の入口だぜ?危ないんじゃないか?」
「中まで入らなければ大丈夫ですよ!
ほら行きましょ!」
そういうとルーシーは碧大の手を取り
件の日陰まで引っ張る。
案の定そこはとても涼しく、
午前中採集を続けて火照ったからだを
休ませるには丁度いい場所だった。
「涼しいな……」
「でしょう?!
私も野草なんかを取りに来るとき
ここで食べるんですよ!
なので安全は保障します!」
そうルーシーに促され、
木陰に腰を下ろす碧大。
確かにいつも来ているのなら
安全なのかもしれない。そう気を抜いたのが
間違いだった。
二人でルーシーの作ったサンドイッチに舌鼓を
打っていると、
その匂いに誘われたのか前方から
野犬が近づいてくるのが見えた。
昼間の採集でも
何体か相手をしたこともあり、
それに気づいた碧大は、
食べかけのサンドイッチをルーシーに預け
立ち上がる。
「ルーシーはここで座っていてくれ」
どうやらルーシーも気づいていたらしく
特に疑問を抱く様子もなく
サンドイッチを受け取る。
「紅き精霊よ我に力を……」
シンプルに簡略化された呪文を唱えると
碧大の体を赤いオーラが包む。
ルーシーも最初こそ驚いたものの
今は慣れたのか落ち着いていた。
「来いっ!」
碧大のその言葉を理解したかのように
野犬が碧大に向かい飛びかかり、
それを最小の動作で躱すと同時に
野犬の脇腹へと拳を叩き込む。
流れるような動作だった。
殴られた野犬はキャウン!
と一声鳴き絶命したようだ。
それを見届けた碧大は
魔法を解除せずに立ち尽くす。
これには理由があり、午前中の戦闘で
野犬が群れで行動し、狩りも複数で行うことを
知っていたからだ。
案の定視界の端から3体の野犬が
襲い掛かって来るのを確認すると、
それを迎え討つ為に腰を低くして構えを取る。
「ワンパターンだな犬共!」
碧大がそう言いながら地面を蹴ると
一飛びで一体の前にたどり着く。
俊敏を上げた恩恵だろうその速度は、
野犬がこちらへ攻撃する隙も与えず
一息で残りの三体を仕留める。
「キャー――――!!!」
その時碧大の鼓膜を打つ高い悲鳴が聞こえた。
碧大が振り向くとそこには、
ルーシーに近づくゴブリンの姿が見えた。
恐らく野犬の血の匂いに誘われたのだろう。
森の入口で戦闘行動をしたのはどうやら
間違っていたようだ。
先ほど同様一飛びでゴブリンとルーシーの
間に躍り出た碧大は、その勢いでゴブリンに蹴り
を放つ。
しかしゴブリンは少し体勢を崩しただけで
反撃のため再び攻撃の姿勢を取る。
「クソッ!やっぱり野犬とは違うか……」
ゴブリンと距離を取りながら碧大が呟く。
再び攻撃しようとしたその時、
碧大を覆う赤い膜が薄れた。
「なにッ?!」
碧大は驚いていたが、朝から採取してる
時に襲ってくる野犬の群れと何度も戦っているのだ。
魔力の量にそろそろ限界が来ていたのだろう。
咄嗟にそのことを理解した碧大は
すぐさま振り返りルーシーの手を取る。
「ルーシー逃げるぞ!」
「は……はい!」
普段草原で野草を取っているルーシーにも
野犬と戦う程度の戦闘能力はあったが、
ゴブリンに敵うほどの能力なら碧大と出会っては
いなかっただろう。
「こっちだ!!」
碧大がゴブリンの攻撃からルーシーを庇い
逃げた先は森の中だった。
「よりによって森か……」
咄嗟のことで選択肢が無かったとはいえ
自分の実力不足と運のなさを恨むように碧大が呟く。
「いえ……碧大さんのせいじゃありません!
私があんな場所で休憩しよう
だなんて言ったから……」
「今は悔やんでも仕方がない
入口をふさがれたみたいだ。
別のところから逃げよう。」
碧大の言う通り、先ほどのゴブリンが
碧大達の後を追って
森の中にあった道を塞いでいた。
碧大とルーシーはゴブリンに背を向け
走り出すと、元々群れで移動していたのか、
木々の隙間から他のゴブリンがその姿を覗かせる。
「くそっ囲まれたか……
ルーシーこっちだ!!」
碧大は周囲を素早く観察し
ゴブリンのいない道を見つけると
ルーシーの腕を引き寄せ、腰を支えながら
目的の方向へと誘導する。
「あっ……」
碧大に腰をいだくように身を寄せられた
せいか、状況にも関わらずルーシーが恥ずかし
そうな声を上げる。
「ッ!
ごめん!
……走れ!」
ルーシーの声に碧大も気づいたのか
腰から手を離したが、
ルーシーよりも幾何か冷静だったこともあり
すぐに気を取り直し腕を引く。
どれくらい走ったであろう、二人の体力は
消耗し日も落ちかける。
しかし碧大の冷静な判断のお蔭か
ゴブリン達とは少し距離がある。
二人はそれに気付いたのだろうか、
少し表情に余裕の色が戻る。
それゆえか冒頭のイチャイチャっぷりに
戻る訳だが……
碧大達に近づいて来たゴブリン達は
狙ってか碧大達を包囲する形を取る
ゴブリンに知識はないため
恐らく偶然であろう。
もちろん碧大達には嬉しくない偶然なのだが、
「クソッ囲まれたか……」
「碧大さん……」
絶対絶命というやつである。
するとその時、
―チリン―
微かな鈴の音が聞こえた。
そう二人が思った瞬間、
碧大達を囲むゴブリンが倒れてゆく。
「大丈夫か!」
また鈴の音が聞こえる。
碧大達が鈴の音と思ったのはどうやら
人の声で碧大達の安否を確認していた。
碧大が声の出所を探るように周囲を見渡すと、
碧大達を囲んでいたゴブリンの
最後の一体が倒れた場所から、
一人の女性が現れる。
赤い鎧を見に纏い、髪は後ろで一つに結んだ
ポニーテールで、小さな顔立ちと
大きなクリっとした目は、
美しいと言うよりも可愛らしいと形容出来る
女性だった。
「君たち大丈夫か?」
その声は碧大達が初め鈴の音と
間違えてしまったのも頷けるほど
リンとした、それもまた可愛い声が
碧大達の無事を再度確認してくる。
「あ……あぁ助かったよ
魔力が切れてしまってね……」
「そうか、無事でなにより
私はソフィア
このあたりで冒険者をやっている。」
ソフィアと名乗る少女は、剣についた血を払い
それを鞘に納める。
「俺は環 碧大。
こっちはルーシーだ
本当に助かったよ
ありがとうソフィア」
「気にするな私も森での任務の帰りだ。
魔力が切れたのなら帰りの道中
心許ないだろう
町まで送る。」
そういうとソフィアは碧大達に背を向け歩き出す。
ついてこいということなのだろう。
「……申し訳ない……
重ねて礼を言うよ。」
「あのっ私からも
ありがとうございます!!」
碧大とルーシーは心から申し訳なさそうに
それぞれ礼の言葉を述べる。
「それにしても君は装備が無いようだし
先ほどからの身のこなしを見ると
……そのなんだ……
なぜ森に?」
言外に"お前弱そうだな"と言われたことに
碧大も気づいたのだが、
事実なので素直に事情を話す。
ソフィアも碧大に対し言い過ぎたことに
遅れて気づいた。
「あっ……その先ほどの言葉は
気にしないでくれ……
今まであまり人と接することが無かった
ので、人付き合いの感覚を誤ったらしい」
「事実だし気にしないさ!」
ソフィアの言葉に
(あぁ……友達いない系女子か……)
と思い気にしていないことをつげる。
「うん……ありがとう
そう言って貰えると助かる。
その……なんだ
私が稽古をつけてやろうか?
これでもAランクだ」
カラカラと笑いながらソフィアが言う。
「えっいいのか?」
ソフィアの言葉を聞き、先ほどゴブリン達を
文字通り瞬殺した身のこなしと、
いましがた本人の口から出たAランクという
言葉を聞き碧大が素直な質問をぶつける
「え”っ
あぁ……冗談のつもりだったのだが……
また間違えたか……」
本当に人付き合いが苦手なのだろうか
ソフィアの冗談がわからない。
「あー、冗談か……
結構いい話かも……
なんて思ったんだけどな」
ソフィアの誘いにあまりにも乗り気すぎる
碧大に先ほどのゴブリン戦から
腕を掴み離さないルーシーが力を込めて
何かを訴える。
(ルーシーさん、なんか怖いっす……
痛いっす……)
碧大がそんなことを思っていると
ソフィアが振り返り、
「まぁ、そのなんだ
私も久しぶりに両親以外のものと会話
出来てうれしい。
町に戻っても気が変わらないようなら
訪ねてくれ」
そう言いながらなにやら住所の書いた
紙を差し出した。
「ありがとう。
まぁ弟子云々は分からないけど
今日の礼もしたいし
必ずうかがわせてもらうよ」
こんなことを口にしながらも碧大は
(異世界で戦う女の子系師匠か……
今回のベタは
アリだな……)
そう考えながら更に強くなった
ルーシーの迫力におびえるのであった。
二人目のヒロイン登場ですね。
昨日小説を投稿した際いつも以上のアクセスが……
沢山の方に読んでもらうのはうれしいことですけどね
こんな稚拙な文章でも読んでくれているみなさん
ありがとうございます!
そんなPVが何気に励みです!
今回はステータスに変更はないので書きませぬ
また次回お会いしましょう




