第84話:因縁の瓦解
「認めない……認めないわよ聖良ァッ! お前が神にでもなったつもり!? 私の正義を、私の人生を、これ以上否定するなァァッ!」
私の提示した絶対的な支配の理を前に、美咲は自らの魂の命火を限界まで燃やし尽くし、最後の一撃を放った。それは彼女の内に残った全ての憎悪、嫉妬、そして身勝手な絶望が混ざり合った、ドス黒い黄金色の呪いの光。
かつて前世の「忘却の丘」で、私が背後から突き落とされたあの瞬間の、醜悪な裏切りの光景が脳裏をよぎる。あの時、彼女は笑顔で私を奈落へ落とした。
だが、あの頃の無力で優しかった魔法少女は、もうどこにもいない。
「往きなさい、美咲。貴方の執着も、その呪いも、私の世界には一滴すら届かないわ」
迫り来る呪いの光に対し、私はただ静かに一歩を踏み出した。 私の身体から放たれる『誰も犠牲にしない支配』の概念が、空間そのものを塗り替えていく。美咲が放った執念の光は、私の周囲の闇に触れた瞬間、パチパチと頼りなく爆ぜ、何一つ傷つけることなく虚無へと霧散していった。
「な……あっ、ああ……っ!」
防壁すら張る必要のない、次元の違う絶対的な拒絶。 前世の因縁が、その圧倒的な格の違いの前に、文字通りサラサラと崩壊していく。
「これで、本当に終わりよ」
私が美咲の目の前まで歩みを進め、そっと指先を彼女の額に向けると、目に見えぬ深淵の圧力が彼女の全身を襲った。
「ひっ……う、あぁッ!」
ドサリ、と重い音を立てて、美咲は地面へと膝を突き、そのまま這いつくばるようにして地に伏せさせられた。私の放つプレッシャーの前に、彼女の肉体は指一本動かすことすら許されない。
前世で私を奈落へと見下ろしていた少女は、今、同じ丘の上で、私の足元に無様にひれ伏している。かつて世界を狂わせた因縁の糸が、今、完全に私の手によって断ち切られた瞬間だった。




