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『裏切りの魔法少女、魔王軍で真の救世主となる』  作者: たい丸
【第1部:偽りの光と、決別の宣戦布告】

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第8話:絶望の果ての誓い

「……ああ、熱いな」

星野聖良セイラの視界は、どろりとした赤に染まっていた。 心臓を貫かれた痛みは、すでに麻痺している。それよりも、体の芯から熱が奪われ、代わりに得体の知れない虚無感が全身を侵食していく。

頭上には、勝利を目前にした「外神」の巨大な触手が、とどめの一撃を加えんと振り上げられていた。 かつての仲間たちが去った後、この忘却の丘に残されたのは、死を待つ生贄の少女一人。

「これが……私の人生の、結末?」

喉の奥から溢れるのは、乾いた笑いと血の塊だった。 思い返せば、魔法少女になってからの毎日は、他人のために自分を削り続ける日々だった。 パトロールの代行、書類の代筆、怪物の討伐、そして仲間たちへの謝罪。 「みんなの笑顔が見たい」 その純粋な願いは、いつの間にか仲間たちの怠慢を育て、自分の価値を「便利な道具」へと貶めていた。

「助けて……なんて、もう言わない」

空を仰ぐ。そこには、仲間たちが自分を売って手に入れた「別の世界への光」の残滓が、皮肉にも星のように瞬いていた。 彼女たちは今頃、安全な世界で、聖良の死を「悲劇の英雄」として語る準備をしているのだろう。聖良が命を懸けて守った「正義」は、彼女たちの輝かしい未来を彩るための、安っぽい飾りに過ぎなかったのだ。

「……ふざけないで。そんなの……正義じゃない」

意識が遠のく中、聖良の胸の奥で、ドス黒い魔力が脈動を始めた。 光の使者が与えた「清らかな魔力」ではない。それは、世界への憎悪、仲間への呪い、そして自分自身の愚かさへの怒りから生まれた、真実の力。

『もっと……もっと強く……!』

内なる声が響く。 だが、肉体はすでに限界だった。外神の触手が、ついに彼女を粉砕せんと振り下ろされる。

「もし……次があるなら」

聖良は、血に濡れた指先で、首元の魔法少女の紋章を引きちぎらんばかりに握りしめた。

「二度と、誰のためにも戦わない。二度と、誰の影にもならない。私は……私のために、私の敵を、全て踏みつぶすために……っ!」

ドォォォォォォォォン!!

触手が丘を粉砕し、衝撃波が世界を揺らした。 星野聖良という少女の肉体は、その一撃と共に消滅し、彼女が守ろうとした世界もまた、外神の侵食によって緩やかに終わりを迎えていった。

――だが。

深淵よりも深い闇の中で、一つの魂が、消えることなく燃え続けていた。 それは絶望という名の薪をくべ、憎悪という名の炎を上げる、黒い種火。

(忘れない……美咲、詩織、蘭、未来……。あなたたちが選んだ『幸せ』を、いつか必ず、地獄に変えてあげる……)

その呪詛が、異世界の境界線を越えた。

「……さま。アリシアお嬢さま!」

不意に、意識が浮上する。 死の冷たさとは違う、柔らかな陽だまりのような温もり。 鼻をくすぐる、焼きたてのパンの香りと、誰かが自分を呼ぶ愛おしそうな声。

「アリシアお嬢さま、起きてください。今日は魔力適性の鑑定式ですよ」

聖良――アリシアは、ゆっくりと目を開けた。 そこには、前世にはなかった「本当の家族」の姿があり、鏡の中には、銀髪をなびかせた幼き少女がいた。

魔法少女・星野聖良は、ここで死んだ。 そして、王国に反旗を翻し、魔王軍へと身を投じることになる稀代の魔女、アリシア・ベルンシュタインが、静かにその産声を上げた。


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