第79話:空白の地平
地響きとも、世界の悲鳴ともつかぬ余震が収まった荒野に、冷徹な静寂が戻ってきた。
直後、大陸全土の通信碑と魔導スクリーンが、息を呑むような映像を一斉に映し出した。精霊通信網を通じて世界中に報道されたのは、先ほど私が放った一閃がもたらした、信じがたい「結果」の光景だった。
画面に映し出されたのは、かつて人類の絶対的な権力の象徴であり、強固な結界を誇っていた大教会の総本山。そして、特区を包囲するために築かれていた巨大な軍事要塞群の「その後」だった。
「……消えて、いる……?」
画面を見上げる人類連合軍の生き残りや、各国の王族たちの口から、驚愕の呟きが漏れる。
そこには、破壊された建物の瓦礫すら残っていなかった。 私が放った漆黒の斬撃が通過したルート。そこにあった大教会の巨大な軍事要塞も、そびえ立つ大聖堂の本山も、文字通り「地形ごと」綺麗に消滅していたのだ。
存在そのものを深淵へと消し去る概念の刃は、大地すらも等しく虚無へと還していた。 画面の向こうに広がっていたのは、どこまでも平坦に削り取られ、奈落へと続くかのような巨大な峡谷――後に人々が『空白の地平』と呼んで恐れる、不気味なほど静かな一本の「無」の傷跡だった。
「防壁も、大教会の歴史も、すべてを一撃で……」
人類を脅かす最大の障害を、文字通り一撃で地図から消し去った瞬間。
それは同時に、大教会という名の絶対的な権威が、物理的にも、概念的にもこの世界から完全に消滅したことを意味していた。画面の前に立つ世界中の人間たちは、もはや言葉を失い、ただただその「空白」を前にして、私の持つ絶対的な力への畏怖に震えることしかできなかった。




