第78話:地図を書き換える一撃
精神が完全に崩壊し、泥に塗れて笑い続ける美咲。彼女の敗北によって、この荒野の戦いは完全に決した――誰もがそう確信した、その瞬間だった。
ゴオオオオオオオッッ!!
天地を揺るがすような不気味な地鳴りが、遥か彼方から響き渡った。同時に、荒野の遥か南の空――人間の大教会本山が位置する方角から、かつてないほど強大で、禍々しいまでの神聖な魔力の波動が立ち昇る。
大教会が誇る絶対の防衛遺物。人間の敗北を感知したシステムが自動で起動した、超巨大神聖魔導砲『神の裁断』が、その莫大な照準を平和特区『ベルンシュタイン・サンクチュアリ』へと定めたのだ。
「な、何ですか、あの禍々しい光は……!? 大陸の向こう側から、特区のすべてを消し飛ばす気ですか!」
後方に控えていたリリスが、その莫大な魔力量に顔を青ざめさせる。それは、一つの国家を一瞬で蒸発させ、世界の均衡を物理的に破壊するために作られた古代の遺物だった。
「逃げなさい、みんな。……いえ、その必要もないわね」
私は一歩前へと進み出た。 特区には、私が守ると誓った大切な仲間たちがいる。あの紛い物の砲撃など、我がサンクチュアリに一歩たりとも踏み込ませはしない。
私は漆黒の大鎌を、真っ直ぐに天へと掲げた。
「概念武装『深淵の処刑者』――最大出力、解放」
オォォォォォォンッ!!
私の纏う漆黒の魔法少女衣装から、光すら侵入を拒むほどの絶対的な闇の波動が噴き上がった。大鎌の刃は空間そのものをドロドロと溶かすように黒く明滅し、世界そのもののルールを上書きしていく。
遠く南の空で、超巨大神聖魔導砲が放たれた。空間を焼き尽くしながら、すべてを滅ぼす光の大奔流がこちらへと迫る。
「消え去りなさい。――その傲慢な存在ごと」
私は掲げた大鎌を、ただ一気に、遥か彼方の光の源流へ向けて振り下ろした。
――『終焉の一閃』
放たれたのは、巨大な漆黒の斬撃。 それは向かってくる光の奔流と激突した瞬間、爆発すら起こさせず、そのエネルギーをすべて深淵へと呑み込みながら直進した。斬撃は空間そのものを真っ二つに裂きながら光速で突き進み、放たれた大教会本山がある大陸の遥か彼方へと、一瞬にして消えていった。
直後、世界の反対側から、視界が白く染まるほどの超巨震が鳴り響いた。 私が放った一撃は、特区を狙う砲撃を無に帰しただけでなく、その攻撃の起点となった大教会の本山そのものを、世界の果てごと真っ直ぐに撃ち抜いたのだった。




