第74話:顕現、漆黒の魔法少女
天を埋め尽くす黄金の太陽が、容赦ない熱量で大地を焼き焦がしていく。圧倒的な『神罰の劫火』を前に、ルナリエやリリス、そして魔王軍の精鋭たちですらそのあまりの圧に息を呑んでいた。
だが、その破滅の光に照らされながら、私はただ静かに微笑んだ。
「世界を焼き尽くす神の奇跡、か。相変わらず、見掛け倒しの派手な舞台装置が好きね、美咲」
私はそっと胸に手を当て、自らの魂の最も深い場所に眠る、あの忌々しくも強大な記憶の蓋を外した。 解放するのは、前世で「聖女・聖良」だった頃、文字通りこの世界を救い、理の頂点に立っていた最強の概念。かつて世界を優しく包んだ救世の輝きを、今世の絶望と深淵の魔力で完璧に反転させ、我が身へと降臨させる。
――その瞬間、私の足元から、光すら吸い込む漆黒の魔力が爆発的に噴き出した。
「な、何よそれ……!? 何をする気よ……っ!」
エレナの狂気の笑いが引きつる。
噴き上がった深淵の闇は、私の身体を優しく包み込み、流麗な術式となって編み上げられていった。 光の衣を漆黒の闇に染め上げ、聖なる装飾を禍々しい棘の意匠へと変え、顕現していくその姿。それは、前世の魔法少女(聖女)としての美しさを保ちながらも、圧倒的な破壊と絶望を体現する、あまりにも禍々しく、そして神々しいほどに美しい『漆黒の魔法少女衣装』だった。
「待って……そんな、あり得ないわ。お前は魔女のはずよ!? なぜそんな、聖女を超えるような概念の格を保っているのよ……!」
ガタガタと震えだすエレナを、私は闇のヴェールの奥から見つめ返した。
ただそこに佇んでいるだけで、世界そのものが私の存在の重さに耐えかねるように、周囲の空間がミシミシと不気味な音を立てて軋み始める。私が一歩を踏み出すたびに、世界の法則が私を中心に書き換えられていくのが分かった。かつて世界を救った最強の力が、今、黒き深淵を纏って完全な形で覚醒したのだ。




