第73話:禁忌の神聖魔法『神罰の劫火』
「あああああッ! なぜよ、なぜ私の可愛い信者たちが、あんな亜人どもにゴミのように蹴散らされているのよ!」
自らの足元が完全に瓦解していく光景を前に、エレナは完全に理性を失っていた。狂信者の残党がリリスとルナリエに圧倒される中、一人でこちらへ歩んでくる私を見つめる彼女の顔は、屈辱と恐怖で引き歪んでいる。
「認めない……私が敗北するなんて、そんな現実、絶対に認めないわ!」
エレナは自らの心臓へ、聖なる杖の先端を容赦なく突き立てた。衣服が鮮血に染まり、彼女の生命力が、大教会の最奥に封印されていた呪わしき禁忌の術式へと急速に生贄として捧げられていく。
「目覚めなさい、神の怒りよ! すべてを灰塵へと帰す、絶対の裁きをここに!」
彼女が血を吐きながら絶叫した瞬間、荒野の夜空が突如として、昼間をも凌駕する禍々しい「黄金色」へと染め上げられた。
それは、自らの命と引き換えに発動する大教会の最終禁術、禁忌神聖魔法『神罰の劫火』。
大気が一瞬で沸騰し、大地がめきめきとひび割れていく。天空に現れたのは、大陸の半分を文字通り焼き尽くすほどの莫大な熱量を孕んだ、巨大な黄金の太陽だった。その超質量の破壊のエネルギーが、ピンポイントで私の頭上へと収束し、世界そのものを押し潰さんとするプレッシャーとなって降り注ぐ。
「あははははは! 見なさい、この圧倒的な神の奇跡を! これでお前も、お前が作ったその小癪な特区も、すべて跡形もなく終わりよ! 私を怒らせた代償を、その身を以て支払いなさい、聖良ァッ!」
死への恐怖すら消し飛んだのか、エレナは血の涙を流しながら狂喜乱舞し、高笑いを上げた。
大陸の命運すら揺るがす神罰の光が、私の視界を黄金一色に染めていく。しかし、その圧倒的な破滅を前にしてもなお、私の心に去来したのは、退屈な幕引きへの、ただ冷ややかな溜息だけだった。




