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『裏切りの魔法少女、魔王軍で真の救世主となる』  作者: たい丸
【第4部:世界統一戦争・魔法少女の矜持】

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第66話:賢者の誤算

情報の隠蔽が不可能となった焦りから、賢者シオンは最悪の手段へと踏み切った。勇者連合の本陣のさらに奥深く、強固な結界に守られた儀式間で、彼は無数の魔導書を広げ、禍々しい術式を地面に刻み込んでいた。

「情報戦でどれだけ優位に立とうが、特区ごと消え去れば意味はない。私の『賢者』としての魔術理論の前にひれ伏すがいい、アリシア……!」

彼が発動しようとしているのは、かつて失われた古代の禁忌魔術『天焦がす極光アルテミス・レイ』。超長距離から標的をピンポイントで消滅させる戦略級の儀式魔術だった。膨大な魔力がシオンを中心に収束し、空気があちこちでパチパチと悲鳴を上げる。

だが、彼は気づいていなかった。その部屋の隅、細く揺らめく空気の微粒子(風の精霊)が、彼の構築する術式のすべてを克明に見つめていることに。

――カチリ。

またしても、大陸全土の通信碑と勇者連合の魔導スクリーンが、強制的に切り替わった。画面に映し出されたのは、まさに今、狂気に満ちた表情で呪文を唱えているシオンの姿だった。

「な、何だ、これは!? また魔女の配信か!?」 進軍を停止していた兵士たちが、一斉に画面を仰ぎ見る。

「皆さん、ご機嫌よう」 画面の端に、私の冷徹な微笑みが重なるように映し出された。

「今、勇者連合の『賢者』を騙るシオンが、私たちの平和特区を消し去るために禁忌の魔術を起動しようとしているわ。……だけど、相変わらず彼の理論は穴だらけね。シオン、貴方が今展開している第3節の魔力回廊、そこ、基礎的な計算が致命的に狂っているわよ?」

「な、何だと……!?」 大音量で儀式間に響き渡った私の声に、シオンは驚愕して呪文を止めた。自分が全世界に『生中継』されていると気づき、彼の顔が瞬時に血の気を失う。

「嘘だと思うなら、自分の足元の数式を見てみなさい。その欠陥のせいで、術式が発動した瞬間に魔力が暴走し、特区だけでなく、その手前にある人間の村や、貴方がた勇者連合の前線基地まで完全に巻き添えにして焦土と化すわ。……ふふ、これが人類の命を守る『賢者』のやる生真面目な仕事かしら?」

私の言葉に、大陸中の人々、そして勇者連合の末端兵士たちが色めき立った。 「おい、俺たちの基地も巻き添えになるって言ったか!?」 「民間人の村まで消し飛ばす気かよ! 教会は俺たちを殺す気なのか!」

「ち、違う! 私の計算に狂いなどない! 黙れ、黙れ魔女め!!」 シオンは狂ったように叫び、プライドをズタズタに引き裂かれてカメラ(精霊)の向こうの私を睨みつけた。しかし、かつて彼の魔術の癖を誰よりも熟知していた私が指摘した欠陥は、紛れもないファクトだった。

「自分の無能を証明し、味方まで平然と生贄に捧げる冷酷さ。それが貴方の正義なのね。――ルナリエ、リリス。もういいわ、強制終了シャットダウンしてあげなさい」

「了解ですわ、お姉様」

特区から放たれたリリスの精神攪乱の魔力と、ルナリエの風の干渉が、精霊通信網を通じてシオンの結界を容易く突破した。暴走寸前だった術式の核がピンポイントで撃ち抜かれ、巨大な魔方陣がガラスのようにパリンと砕け散る。

「ガハッ……!?」

強烈な魔力のバックラッシュを受け、シオンは無様に床を転がり、大量の血を吐き散らした。 全世界の目の前で、その無能さと冷酷さを完全に暴露され、赤恥をかかされた賢者。シオンのプライドは、再起不能なまでに叩き潰されたのだった。


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