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『裏切りの魔法少女、魔王軍で真の救世主となる』  作者: たい丸
【第3部:かつての仲間の再来と「亜人」の解放】

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第53話:激突、盾と矛

地響きと共に要塞の至る所から黒煙が吹き上がり、武器を手にしたドワーフたちの怒号が響き渡る。地下からの蜂起とルナリエたちの襲撃により、不落を誇った聖騎士団の防衛網は内側から瓦解しつつあった。

その大混乱の渦中、要塞の中央広場で、私はアイラと対峙していた。

「……身の程を知れ、魔族どもがッ!」

アイラが巨大なタワーシールドを地面に叩きつける。凄まじい衝撃波が走り、近づこうとした魔族の兵たちが弾き飛ばされた。しかし、私はその衝撃を闇の衣で容易く受け流し、静かに歩みを進める。

「周囲を見なさい、アイラ。貴女の言う『正義の要塞』は、もう足元から崩れているわよ」

私の冷徹な声に、アイラは激しく肩を揺らした。彼女の白銀の鎧には、飛び散ったドワーフたちの血と煤がこびりついている。光の壁の向こう側で、彼女の瞳はかつてないほどの狂気と動揺に濁っていた。

「黙れ……黙れ、黙れ! 私は間違っていない! 私は神の正義の騎士、悪を挫く不落の盾だ!」

「本当にそうかしら? 貴女のその頑丈な盾は、目の前の現実から目を背けるためのただの『目隠し』。前世で私を見捨てた罪の意識から、必死に逃げ回っているだけの臆病者の壁よ」

「違うっ!!」

私の言葉が、アイラの心の最も深い傷を正確に抉った。 アイラは顔を真っ赤に腫らし、自らの罪の意識を裏返したような、悲痛な絶叫を上げた。

「聖良が死んだのは、あいつが弱かったからだ! 聖女のくせに魔族の不意打ちを喰らうような、あいつが、あいつの弱さが悪かったんだ! 私は私の義務を果たした! だから私は、絶対に間違ってなんかいないぁぁぁ!!」

その叫びは、自分自身に「お前は悪くない」と言い聞かせるための、醜い自己弁護の咆哮だった。

「神よ、我が正しさを証明せよ! 『イージス・ウォール・マキシマム(絶対神聖不落結界)』!!」

アイラが自身の全魔力、そして生命力すらも削りながら放った光は、これまでにない密度で収束していった。彼女の周囲に、幾重にも重なる幾何学的な光の防壁が展開される。触れるものすべてを消滅させ、あらゆる概念の攻撃すらも跳ね返す、彼女の歪んだ信念が具現化した最大級の防御陣。

「……そう。そうやって最後まで自分の正しさを疑えないのね、蘭」

私は右手を天へと掲げた。 私の指先から溢れ出すのは、昨晩の調律によって完成した、光を一切通さない完全なる「無」の闇。

「貴女のその硬い盾が、私の絶望にどこまで耐えられるか、試してあげるわ」

今、前世の因縁を乗せた、最強の「盾」と最強の「矛」が正面から激突する。


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