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『裏切りの魔法少女、魔王軍で真の救世主となる』  作者: たい丸
【第3部:かつての仲間の再来と「亜人」の解放】

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第41話:精霊の森の異変

魔王城の謁見の間に、異様な光景が広がっていた。 連行されてきたのは、数名のエルフの難民たち。彼らはエルフ特有の美しい容姿を保ってはいたが、その瞳はハイライトが消え、まるで精巧に作られた蝋人形のように虚ろだった。

「……救済を。女王様に、救済を……」

一人のエルフが、うわごとのように繰り返す。その首筋には、薄く淡い桃色の光を放つ紋章が浮かび上がっていた。

「アリシア。貴様なら、この『不気味な平和』の正体がわかるのではないか?」

玉座で頬杖をつくゼノス様が、顎で難民を指し示す。 私はそのエルフに近づき、その額に指先を触れた。瞬間、私の指を弾くような、甘ったるくも粘り気のある魔力を感知する。

(……間違いないわ。この不快な感触、そして精神の奥底を書き換えるような構築式……)

それは、前世で「聖女」のパーティーメンバーだった魔導師、花音カノンの固有魔法――『洗脳チャーム』の痕跡だった。

「精神への強制介入ですわ。それも、恐怖ではなく『全能感と多幸感』を与えて支配する、極めて悪趣味なやり方。……これを施された者は、自分が奴隷であることすら気づかず、幸せの中で魂を摩耗させていきます」

私は冷たく吐き捨てた。 かつて花音は「みんなが幸せなら、少しぐらい嘘があってもいいじゃない」と笑っていた。その自分勝手な正義感が、転生したこの世界で最悪の形で花開いているらしい。

「精霊の森を支配しているのは、カレンという名の『救済の女王』だそうだ。森の資源が止まり、周辺の亜人たちが次々とその軍門に降っている」

「……その女王様を、引きずり下ろせということですね?」

私の問いに、ゼノス様は愉快そうに口角を上げた。 「平定せよ。必要ならば滅ぼしても構わん。だが、あのような『空っぽの人形』をこれ以上増やされては、魔界の均衡が崩れる」

「承知いたしました」

私は一礼し、踵を返した。 背後では、リリスが目を輝かせながら私に付き従っている。

「お姉様、次はエルフ狩りですか? 楽しみですね、あのプライドの高い連中がどんな顔で絶望するのか」

「……いいえ、リリス。今回は狩りではないわ。……かつての『仲間』に、借りていたものを返しに行くだけよ」

私の瞳に、闇の色が深く沈む。 聖女を裏切り、背後から魔法を放った一人、花音。 彼女が作り上げたという「偽りの楽園」を、その土台から腐らせてあげるために、私は精霊の森へと足を踏み出した。


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