表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『裏切りの魔法少女、魔王軍で真の救世主となる』  作者: たい丸
【第2部:魔王軍の客将・「不殺」の進撃】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/54

第37話:前世の絶望、深淵の境界

「あ、あああ……っ! 嫌、見たくない! 離して、離してよおぉ!」

リリスの悲鳴が、私の精神世界に木霊する。 彼女が触れているのは、私が「聖女」として崇められ、そして「化け物」として排斥された数百年前の地獄絵図だ。

目の前で展開されるのは、私が守り抜いたはずの街の人々が、笑顔で私を火炙りにしようと薪を積む光景。 私に命を救われた騎士たちが、報酬のために私の四肢を鎖で繋ぐ音。 そして、信頼していた仲間の手によって、心臓に聖剣を突き立てられた瞬間の――あの、魂が凍りつくような冷たさ。

「……これが、貴女が覗きたかった私の『中身』よ。リリス」

闇の中から現れた私は、現実の姿よりも背が高く、瞳は血のように赤く光っていた。前世の怨念と今世の魔力が混ざり合った、真の深淵の姿。

「こんなの……狂ってるわ! なんで、こんなに裏切られて……なんで貴女の魂は、まだ形を保っているのよ! 普通なら、一瞬で自我が霧散するはずなのに!」

リリスは頭を抱え、地面をのたうち回る。 彼女の精神容量キャパシティは、すでに限界を超えていた。他人の精神を「読み取る」専門家である彼女にとって、この密度の高い絶望は、脳内に直接高電圧の電流を流されるのと同じ苦痛だ。

「……保っているのではないわ。……私は、この絶望を『燃料』にして、魂を繋ぎ止めているの。誰も愛さない、誰にも期待しない。ただ、奪われたものを取り戻すという執着だけでね」

私はリリスに歩み寄り、その震える指先をそっと踏みつけた。

「さあ、リリス。貴女の精神干渉魔法は、対象と『同調』することで力を発揮するわよね? 今、貴女の魂は私の絶望と完全にリンクしている。……つまり、私が感じたこの数百年分の痛みを、貴女も今、この瞬間に『自分の体験』として味わっているのよ」

「ひっ、いあああああああ!!」

リリスの瞳から、光が消える。 彼女の真っ白な精神体に、無数の「裏切りの傷」が刻まれていく。彼女の自我が、私の巨大すぎる絶望の渦に飲み込まれ、粒子となって分解され始めていた。

「助け……て……お姉様……。壊れる、私が……私じゃなくなる……っ」

傲慢だった少女の顔は、今や恐怖と懇願に塗りつぶされている。 私は冷たく彼女を見下ろした。

深淵を覗く者は、深淵からも覗かれている。 他人の心を弄んだ代償は、自分の心が跡形もなく塗り替えられるという「完全な崩壊」だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ