表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『裏切りの魔法少女、魔王軍で真の救世主となる』  作者: たい丸
【第2部:魔王軍の客将・「不殺」の進撃】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
36/55

第36話:精神浸食(マインド・レイド)

「アハハ! つかまえた! 逃がさないわよ、お姉様!」

リリスの勝ち誇った声が、意識の海に響き渡る。 『深層意識への葬列』――それは、対象の最も柔らかい記憶の層を食い破り、自我を書き換える禁忌の精神魔術。

リリスの意識は、私の脳内へと深く、深く潜り込んでくる。 通常の精神干渉なら、ここで「幼少期のトラウマ」や「家族との別れ」といった、今世の脆弱な記憶が展開されるはずだ。リリスはそれをズタズタに切り裂き、私を自分の言いなりになる「壊れた人形」に作り替えるつもりなのだ。

「さあ、見せて……。貴女が大事に隠している、一番痛くて、一番汚い記憶を!」

リリスが私の意識の「核」へと手を伸ばした瞬間。

景色が一変した。

そこは、花が咲き誇る離宮でも、温かなベルンシュタイン家でもなかった。

「……えっ? なに、ここ。……冷たい……」

リリスの困惑した声。 そこは、色彩の消えた世界。降りしきる雨はどす黒く、足元には無数の死体が積み重なっている。空には「正義」を謳いながら私を処刑しようとする、何万もの人間の醜悪な顔、顔、顔。

「何よこれ……こんなの、人間一人が抱えていい記憶の量じゃないわ……! どこまで続いてるのよ!」

リリスが怯えたように周囲を見渡す。 彼女が見ているのは、今世の記憶ではない。私が数百年もの間、魂に刻み込んできた「前世・聖良」としての凄惨な終焉。

「……ねえ、リリス。楽しいかしら、他人の人生を覗き見するのは」

闇の中から、私の声が響く。 それは現実の私よりもずっと低く、慈悲の欠片もない、凍てつくような「死」の響き。

「な、なんなのよ貴女! ただの没落令嬢じゃないの!? なんでこんな……こんな真っ暗な記憶を、平気な顔をして抱えていられるのよ!」

「平気なわけないでしょう。……私は、この絶望を毎日、毎秒、噛み締めて生きているのだから」

足元の死体の山が動き出し、リリスの足首を掴む。 それはかつて私を裏切り、私が殺し、そして私を殺した者たちの怨念。

「やめて! 来ないで! 私の術が……逆流してる……!? 離しなさいよ!」

リリスの真っ白な精神体に、どす黒い「絶望」が墨汁のように染み込んでいく。 他人の心を壊そうとした少女は、今、自分が飲み込めないほど巨大な「深淵」の口の中に放り込まれたことに、ようやく気づいたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ