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『裏切りの魔法少女、魔王軍で真の救世主となる』  作者: たい丸
【第1部:偽りの光と、決別の宣戦布告】

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第20話:叛逆のアリシア、あるいは魔女の誕生

「助けろぉぉぉ!!」

情けなく叫び、尻餅をつくエドワード。 魔獣の巨大な爪が、彼の黄金の鎧を紙切れのように引き裂こうとした瞬間――私は、指先一つでその一撃を受け止めた。

物理的な力ではない。私の周囲に展開された、目に見えるほど濃密な「闇」の結界が、魔獣の動きを完全に停止させたのだ。

「あ……あ……」

腰を抜かした王子が、私を見上げる。 その目に宿るのは感謝ではなく、道具が自分に従わなかったことへの、醜い驚愕だった。

「アリシア……何をしている! 早くこいつを殺せ! 僕がとどめを刺す演出を――」

「演出? ……ああ、まだそんなことを言っているのですね」

私は、首に嵌められた『従属の首輪』に手をかけた。 王子の意思に従い、私の肉体を焼こうと紫の電撃が走る。だが、私の内側から溢れ出す全属性Sランクの魔力は、そんな呪具を「不純物」として拒絶した。

パキィィィィィィィィィィン!!

闘技場全体に響き渡る破砕音。 王家が誇る禁忌の呪具は、私の首元でただの鉄屑となり、砂の上に転がった。

「馬鹿な……!? 『従属の首輪』を、力ずくで……っ!」 観覧席で魔導師長が絶叫するのが聞こえる。

私はゆっくりと、エドワードが握りしめている「聖剣」へと歩み寄った。 王家の象徴、勇者の証。前世で美咲が私を貫いた、あの忌々しい剣と同じ輝き。

「……もう、誰の影にもならない」

私はその刀身を、素手で掴んだ。

「何をする……放せ! それは王家に伝わる聖なる――」

「壊れなさい」

私の魔力が、聖剣の内部構造を直接破壊する。 キィィィィィィィィィンという悲鳴のような金属音と共に、王国の至宝と呼ばれた聖剣は、王子の目の前で文字通り「粉々」に砕け散った。

「あ……ああ……僕の……僕の聖剣が……」

「これが、貴方の実力です。エドワード殿下」

私は、絶望に染まった王子の胸元を、無造作に蹴り飛ばした。 泥の中に転がり、豪華なマントが汚れに塗れる。観衆は、自分たちが英雄だと信じていた王子のあまりの無様さと、現れた少女の圧倒的な力に、声を出すことさえ忘れていた。

「アリシア! 反逆だぞ! 貴様の家族がどうなってもいいのか!?」

「家族?」

私は空を見上げた。 私の魔力はすでに、ベルンシュタイン領を包む結界と同期している。 もし、王宮が家族に手を出そうとすれば、その瞬間に私はこの王都を、地図から消し飛ばす準備ができている。

「……やってみればいいわ。その瞬間に、この国が終わるだけだから」

私の背後から、漆黒の翼のような魔力が吹き上がる。 その余波だけで、堅牢な闘技場の壁が崩れ落ち、王宮の式典場が半壊した。 轟音と土煙の中、私は魔獣の首を優しく撫でた。

「……貴方も、もう自由よ。行きなさい」

魔獣は私に一度だけ深く頭を下げると、壊れた檻を飛び出し、森へと消えていった。

私は、崩れ落ちた瓦礫の頂点に立ち、王都を見下ろした。 前世の聖良は、ここで死んだ。 期待に応え、裏切られ、一人で散った魔法少女は、もうどこにもいない。

「お父様、お母様。……今、帰りますわ」

私は自らの力で宙へと浮き上がった。 追手など誰も来られない。私の放つプレッシャーだけで、王宮の魔導師たちはその場に伏し、震えているのだから。

「アリシアぁぁぁ! 待て! 戻ってこい! 貴様は僕の道具だろぉぉ!!」

泥の中で叫ぶエドワードの声を、私は風の中に捨て去った。

銀色の髪をなびかせ、私は夕闇に染まる空を、家族の待つ家へと向かって飛翔する。 これから始まるのは、王国との戦争かもしれない。あるいは、さらなる追放の日々かもしれない。

けれど、私の心は、かつてないほどに澄み渡っていた。


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