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『裏切りの魔法少女、魔王軍で真の救世主となる』  作者: たい丸
【第1部:偽りの光と、決別の宣戦布告】

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第2話:エトワールの光と影

「魔法少女チーム『エトワール』! 今日も街の平和を守ってくれてありがとう!」

テレビ画面の向こう側で、司会者の明るい声が響く。画面中央で華やかに微笑むのは、リーダーの美咲を中心とした四人の少女たちだ。彼女たちの衣装は汚れ一つなく、カメラのフラッシュを浴びてキラキラと輝いている。

「いえ、私たちは当然のことをしたまでです。みんなの笑顔が、私たちの力ですから」

美咲が聖女のような微笑みを浮かべて答える。その隣で、詩織や蘭、未来も完璧なアイドルスマイルを振りまいていた。茶の間で見守る人々は、彼女たちを「希望の象徴」として崇め、惜しみない拍手を送る。

だが、その画面の隅にも映っていない場所で、星野聖良セイラは独り、薄暗い作戦室の隅にいた。

「……っ、つ……」

聖良の手元には、魔法で生成した水の入った桶と、ボロボロになった自分の衣装がある。 彼女の肩や脇腹には、今日の戦闘で負った生々しい裂傷が刻まれていた。本来、癒やし手である未来が治癒魔法をかけるべき傷だ。しかし、未来は「カメラ映りが悪くなるから」と、収録前に自分の髪を整えることを優先した。

結局、聖良は止血だけを済ませ、自分一人で衣装の修復魔法を編み上げる。

「聖良ちゃーん、お疲れ様。あ、さっきの収録の時、陰に隠れててくれて正解だったよ。エトワールは『四人の美少女』ってイメージで売ってるから、あんまりボロボロの人が映ると視聴者が引いちゃうもんね」

収録を終えた詩織が、スマホをいじりながら作戦室に入ってきた。労いの言葉はない。そこにあるのは、ゴミ箱の容量を気にするような、事務的な確認だけだった。

「……ううん、大丈夫。みんなが綺麗に映るのが一番だから」

聖良は無理に口角を上げて笑った。本心だった。自分が影に徹することで、このチームが、この「平和」が維持されている。自分が傷つくことで、大好きな友人たちがアイドルとして輝ける。それが魔法少女になった時に自分が選んだ道だと、彼女は自分に言い聞かせ続けていた。

だが、現実は残酷だった。

聖良が裏で倒した怪物の数は、他の四人の合計を遥かに上回る。 聖良が徹夜で書き上げた討伐報告書のおかげで、四人のランクは上がり、国からの多額の報酬が彼女たちの口座に振り込まれる。 しかし、その報酬のほとんどは四人の「美容代」や「衣装のグレードアップ」に消え、聖良の手元に残るのは、最低限の生活費と、戦いで摩耗した魔法触媒の補充費用だけ。

「ねえ、聖良。明日の湾岸地区の哨戒、一人で行けるわよね?」

美咲が、鏡で自分の顔をチェックしながら無造作に言った。

「えっ……でも、あそこは最近、上位個体の目撃例があるって……」

「私たち、明日は新曲のダンスレッスンがあるのよ。エトワールの知名度が上がれば、それだけ世界に希望が広がる。これも立派な『正義』の活動でしょ? それに、あなたなら一人で十分倒せるじゃない。最強なんだから」

最強。 その言葉は、聖良にとって称賛ではなく、逃げ場を奪う鎖だった。 強いから、代わって。強いから、我慢して。強いから、一人でいい。

「……わかった。私、行っておくね」

聖良の答えを聞く前に、四人は楽しげに笑い合いながら作戦室を出ていった。夕食の予約がどうとか、新作のコスメがどうとか、普通の女子高生のような会話をしながら。

独り残された静かな部屋で、聖良は自分の手を見つめた。 戦いすぎて、指先は荒れ、爪の間には魔法の反動で生じた黒い紋様が浮かんでいる。

(私の『正義』は……どこにあるんだろう)

窓の外では、エトワールの巨大な街頭ビジョンが輝いている。 四人の輝かしい笑顔の下で、聖良は深く、深く溜息をついた。 その溜息さえも、誰にも届かない影の中に消えていった。

この時、聖良はまだ知らなかった。 彼女が守り続けていた「光」が、実は彼女自身を焼き尽くすための燃料でしかなかったことを。 そして、仲間の瞳に宿っていたのが「信頼」ではなく、ただの「傲慢な利用」であったことに。

エトワールの光が強まれば強まるほど、聖良の影は濃く、そして孤独になっていく。 終焉の足音は、もうすぐそこまで迫っていた。


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