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第2章 エピローグ

 勇輝は現在自宅にいた。クリスマスが終わり、二日酔いに苦しんでいるところに母親、暁美がやってきた。

 みんな元気? と前触れもなくやって来た彼女はお茶をよばれて談笑していた。普通に様子を見に来たらしい。

 それを見て、そういや保護者的立場だっけ? と勇輝は母親の役割を確認していた。

 しかし、帰る時になって勇輝は首根っこを掴まれた。曰く、大掃除はあんたがいないと話にならない、そうである。

 勇輝は猫のようになりながら、家の状況を思い浮かべる。昔から、掃除が大変だった。

 父親が容赦なく散らかし、母親がそれを片づけていくが追いつかない。勇輝が加わることでなんとかバランスを取っていたのだが、いない今、家はどうなっているのか……。


 考えたくない。


 荷物をまとめ、簡単に別れを告げて家に帰った勇輝が見たのは、きれいながらも汚い我が家だった。綺麗なのはごみが固まっているから。しかし物があふれており視覚的圧迫感を感じる。清潔感はある。ただ乱雑なだけだ。

 年末の大掃除、これは三日はかけないと家の垢は落としきれないだろう……。


 そして怒涛の掃除デーを完走し、本日は大晦日。夕食を軽めに済まし、除夜の鐘を聞きながら年越し蕎麦を食べるのが恒例だった。

 十二時までには少し時間があるので、勇輝は自室のベッドで横になっていた。

 特に見たい番組もなく、というかテレビを如月に置いてきたので何も見れない。両親は下で歌合戦を見ているのだろう。


 年末。ずっと父親と二人きりだった。それが今年からは違う、母親が帰ってきたのだ。

 勇輝は携帯を持ち上げた。めったに使われることのないそれは、時を告げるだけだ。

 可愛いストラップが揺れている。彼女、彩との思い出が残る唯一のもの。

 勇輝は突然消えてしまった彼女の姿を思い浮かべた。消える瞬間の、綺麗な笑顔は記憶にこびりついている。


「彩……」


 名を呼んでも、以前のような悲しみには襲われない。ただ懐かしい、心地よい風が胸を掠めていく。

 思えば、あの時から勇輝の世界は動きだしたのだ。良い方向にも、悪い方向にも。

 彩をあのような状態にした人物のことはまだ分かっていない。それでも、


(あいつらに出会えたのは、良かったよな)


 そう思える。

 失って得たもの。いや、失ったから得たもの。この三カ月で勇輝の生活は目まぐるしく変わった。

 ただの不良では経験できない喧嘩をした。空も飛んだ。銃も使った。

 いろんなことを知った。隠された世界や、人の痛み。

 ぶつかって、見えたものもある。諦めないで、じたばた見苦しくもがいて、少し分かった気がした。

 勇輝はくくっと笑った。

 あそこまで人に関われるようになったのは、彩のおかげだ。以前、彼女が自分にしたように、勇輝は彼らと接した。

 彩の最後の願いが、その言葉が蘇る。


(ありがと、彩。今俺、すっげぇ楽しいよ)


 笑顔が好きだった彼女。勇輝に笑顔を与えてくれた彼女。

 彼女が彼らを呼んだ。彼らが母親を呼んだ。

 全てがどこかで繋がっている。これからも繋がり続ける。


「大晦日に一年振り返るって、恥ず……」


 自然と顔がにやける。新年まで後三十分。きっと、楽しい一年になる。


 部屋に置かれている時計がカチカチと時を刻む。後二十分、勇輝はリビングに下りた。

 暁美が年越し蕎麦の準備をしている。普通の家庭の風景がそこにある。


 勇輝も皿の準備をしてあと十分。テレビがニュースに切り替えられ、除夜の鐘を待つ。

 残念ながら近くに寺は無く、あったとしてもこの寒さの中つきにいく気にはなれない。


 後五分。三人で蕎麦をすすりながら、テレビを見ていた。和やかな食事風景が手に入る時がくるとは思っていなかった。

 勇輝はカウントダウンを待つ人々の映像を見て、ふと笑みをこぼした。

 毎年同じ光景。日常が流れていく。だが、日常と同様に非日常も流れていることをどれぐらいの人が知っているだろうか。

 誰が、突然非日常に巻き込まれると予想できるだろうか。


(ほんと、運命ってわかんないよな)


 勇輝がかまぼこを口に入れた瞬間、除夜の鐘がテレビから流れた。


「明けましておめでとう」


 暁美が箸を止めて、そう言った。男二人は豆鉄砲を食らったような顔をし、それを居心地の悪そうな表情に変えて、


「明けましておめでとうございます」


 と返した。二人でいた時には交わしたことのない言葉。年は超すが、挨拶は朝起きてからが多かったのだ。


(新年明けましておめでとう。今年も良い年でありますように)


 勇輝は心の中でそう願った。

 新しい年が、どういったものになるのかは、あけてからのお楽しみ。

 除夜の鐘が人々の家に、寒い街に鳴り響く。

 百八煩悩を払い。新しい気持ちで新年を迎えられるように。

 煩悩から逃れるのが難しいが故に。


 寒い、暗い夜の闇を、人の吐息が白く染めた。


とまあ、こんな感じで二章は完結いたしました。


一章と同じ話数ですが、中身は倍以上に膨れています。

大きな山場もなく、爆弾が降りつづける二章でした。思えば魔術といえるものを使っていませんね。それだけ平和ということだ!


エンディングももっとチャラけたものに……いえ軽いものにしようかと思いましたが、主人公が出張って真面目にまとめましたね。エライよ勇輝君。


三章は、少し彼らの過去の一部に迫れたらと思います。

ちょっぴり、いえ、ざっくり、ざっくざっく? シリアスです。

コメディーが入りつつですが。だって、コメディーですから!

主人公が奮闘するのは毎度のことなので、暖かく見守ってあげてください。


最後に、いつも私と並走して応援してくれている方々! 柱や草むらに隠れて見守ってくれている方々! ありがとうございます!


四月まであと少し。作者はこれから見直し期間に入ります。

小休止したら、三章へ。では、また新たな章でお会いしましょう。


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