第2章の1 ドアの向こうは非日常
勇輝は軽い足取りで学校へと向かっていた。彼らがいる学校は楽しくて仕方がない。
誰かに因縁をつけられることも無くなり、毎日がさぼりたい放題。
季節は冬だが、暖かいテントの中で快適に暮らしている。
彼らが来てからの一か月は怒涛のように過ぎ去った。
人生の全てのスリルが詰まったのではないかと思えるほど濃く、それを潜り抜けた勇輝は今後何があっても大丈夫、という変な自信を持ってしまっていた。
「おは……」
勇輝は屋上にあがり、テントの布を引いた。そしてすぐに閉める。
一度空を見上げて今日もいい天気なのを確認すると、もう一度開けてみた。
見える景色は先ほどと同じ。
見たことのある、景色だった。
だがそれはテントの、いつものテントの中ではない。
まず広さ、テントの何十倍もあろう部屋がすっぽりと入っている。
そして天井、立派なシャンデリアだ。こんなものはテントに吊れない。
そしてとどめは彼ら、彼らは実にこの部屋を使いこなしていた。まるで自分たちの家のように……
(いや、これこいつらの家じゃん! こないだ行ったやつそのまんまじゃん!)
戸口で呆然としている勇輝に気づいた秀斗が近寄って来た。
「面倒だからよ。繋げたんだ」
胸を張って自分の仕事を誇る秀斗に、勇輝はただただ拍手を送った。
秀斗が持つ能力は空間支配。空間同士をつなげるなどお茶の子さいさいだ。
それゆえの彼らの屋敷inテント。
「すげ~もうすげ~。考えることが普通じゃない」
ひとしきり拍手を送るとこの間はじっくり見れなかったので、部屋を歩き回る。
部屋には全員がいるかと思ったが、錬魔の姿が見えなかった。
(うわ~やっぱすげぇな)
さりげなく掛っている絵を見て、自分が中世ヨーロッパにタイムスリップしたような気分になる。
彼らの容姿が西洋っぽいので全くこの屋敷と違和感がない。彼らの髪はカラフルで、瞳も灰色っぽい。
ぼーとしながら歩いていると何かにぶつかった。
「うわっと」
「どけ、邪魔だ」
切れ長の目に見下ろされ勇輝は凍りついた。
(ちょ~機嫌悪。低血圧か……?)
勇輝が気を落ち着かせて振り向くともう錬魔の姿は部屋にはなかった。
向かいのドアからでていったらしい。
(うわ、あんなとこにドアがある)
「勇輝~お前気をつけねぇと焼かれっぞ?」
錬魔の属性は火だ。それは彼の髪の色にも表れている。
「大人しくしてます」
もう一人で探検はしないと心に決めて、大人しく座っていることにした。




