↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/301

第1章の34 お別れ

 思いのほか一章が長くなってしまった。


   答えを言いましょうか? 作者さん。


   一話が短すぎるんです。


 はい、猛省いたします。

 その夜、弥生は自室で窓の外を見ていた。

 弥生の部屋には机とベッドの外に目立った物はない。

 明かりもつけず、部屋に入る光は月光のみ。


 自然と昼間のことが思い出された。

 拳銃を向けた時の怒りに満ちた顔と、その後に見せた笑顔が交互に蘇る。

 

(勇輝は強い……)


 風が髪を撫でて通り過ぎていく。

 外界の風は冷たくなっているが、ここはいつも丁度よい涼しさだった。


“弥生ちゃん”


 風の音に混じって声がした。

 弥生は声のしたほうへ顔を向けた。

 そこにいる女の子は宙に浮いていて、細い糸で弥生と繋がっていた。魂どうしの繋がりだ。


「彩……」

 

 今の彩は魂が繋がっている者にしか見えなかった。

 そしてその糸も弱くなっている。


“はるゆきを守ってくれてありがとう”


 彩は、一部始終を全て見ていた。

 体が消滅しても、すぐに弥生の魂と分離したわけではなかった。

 同化していた期間が長すぎたのだ。


「約束したから」


 弥生はふわふわと飛んでいる彩を目で追った。

 彩は弥生の目の前で止まると、にこりと笑った。


“いままでありがとね”


「……逝っちゃうの?」


“うん。もう心残りはないから”


 弥生は自分と彩を繋ぐ一本の糸に目を向けた。

 逃れられない檻が、今はこんなに頼りない糸になってしまった。


「――勇輝に、会わなくていいの?」


 彩は少し瞳を揺らしたが、微笑んだまま答えた。


“いいの。今会ったらよけい心配させちゃうから”


 それにね、と彩は続ける。


“お別れじゃないから。私、向こうで待ってる。はるゆきのことも、弥生ちゃんのことも、待ってるから……寂しくないでしょ?”


 彩は小指を突き出した。

 弥生も小指を出し、絡める。


“約束だよ”


「うん。私も、彩との約束を守る」


 弥生は自分の体から、魂から糸が抜けていくのを感じた。

 はっとして彩の顔を見つめる。

 それでも彩は笑っていた。


“忘れちゃ、やだよ。じゃぁね、弥生ちゃん”


 糸が完全に弥生から離れると、彩はすっと消えた。

 

 ふわりと、風で髪が揺れる。

 まるで彩が撫でていったような優しい風だった。

 弥生は小指を絡めた手をぐっと握る。


(彩……ありがとう)


 弥生は窓の外に視線を向けた。

 三日月が雲の合間から覗いている。

 その光が心に染みいるの感じながら、風の音に耳を傾けた……。



次回一章完結です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。