第1章の33 おかえり
今回は短め
勇輝の後姿を見送ると、弥生は拳銃を拾った。
そして屋上の影に声をかける。
「隠れてないで、出ておいでよ」
「……あ、ばれてた?」
悪びれもせずに出てきた秀斗に、弥生はためらわずに拳銃を向けた。
「げっ、ちょい待て! 今俺ノーガードだから!」
秀斗が慌てて止めようとするが、聞くはずもない。
「盗み聞きした罰よ」
弥生はためらいもせず引き金を引いた。乾いた破裂音が寒空に響く。
(もうこれは避けるっきゃねぇ!)
秀斗は銃口に意識を向けたが、そこから飛び出したのは弾ではなく紙テープだった。
火薬の臭いが鼻につく。
「って、あれ?」
しかも紙吹雪も飛んでいる。
「ばーか。おもちゃに決まってるじゃない」
くすくすと弥生が笑っていると秀斗があからさまに不機嫌な顔になった。
「お前最初から知ってたのかよ……結局心配してたのは俺らだけってか?」
「本物かと思っていました」
他の三人も姿を現した。こちらは秀斗と違い複雑そうな顔つきだ。
「ねぇ弥生ちゃん……あの話本当なの?」
癒慰が申し訳なさそうな顔で訊く。
「本当だよ」
「ではどうして早く言ってくれなかったのですか?」
零華は少し憤りが混じっている。
自分達よりも先に勇輝に話したことが納得できないらしい。
「……私の記憶がどこまで正しいのか、私にも分からなかっから。最初は勇輝にも言うつもりはなかった」
「そう……ですか」
「疑って、すまなかったな」
錬魔は無表情ながらも瞳には弥生を信じきれなかったことへの後悔が滲んでいた。
「いいよ。気にしないで」
弥生は淡く笑った。
(無条件で受け入れられるより、疑われていた方がいい。それは、私のことをちゃんと見てくれているってことだから)
「じゃ、改めて、おかえり弥生」
秀斗が満面の笑みで軽く手を挙げた。
「ただいま。みんな」




