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「ここでは動きに対応出来ないか……動くぞ」

「ですわね」


「承知しました。人の手配をします」

「ハンナ様、私は先に行きます」

「ええ、お願い」



 情報交換、指示、キラキラ男女とハンナ達は忙しそうだった。

部屋の外には大勢の気配。

それと対照的なのがフローラとデーガ、二人でほんわかしている。

晶が出した追加のシュークリームが乗った皿を大事そうに抱えていたり。



「デーガ君、それはシュークリームというお菓子なんだ。日持ちしないから気を付けてね」


「しゅーくりーむ!ひもち?」


「早めにたべましょうねって事」


「そっかぁ!」



 晶がほんわか組に参加。

父上、母上に食べてもらいたいと言っていたデーガ。

そんなデーガに晶が説明している。

日持ちに付いて判りやすく説明しなおすフローラ。

ニコニコな二人であった。



「私達は席を外させてもらう。首輪の礼に付いては後ほど……本当にありがとう」

「そうですわね。デーガの件、ありがとうございました」


「アキラ、私からも礼を。ありがとうございました」



 キラキラ男女が立ちあがり、アキラに礼を言っている。

ハンナもだ。

デルマは既に部屋から退出している。



「礼、そういうのもあったな。忙しそうだからそれで、おっけー」


(おたからー)


「では、また」



 晶は軽い。

お宝大好きカヅキが反応。

忘れるなと言っているだけだろう。

キラキラ男が手を上げて晶に挨拶。



「アキラ、ゆっくりしていってくれ」


「あいよ」


「ちょーっと待った!」

「そうだぜ!」


「まったくだぜ!」

「ノック様……」



 ハンナもキラキラ男女に続いて部屋を出ていこうとする。

それを止める脳筋ズ。



「何かな?」



 脳筋ズに止められたハンナが振り返る。



「西に出た魔族と大亀の方へ行くんだろ?」

「俺達も連れてけ!」


「おうよ!」


「お前ら……」


「アキラ、いいのかね?」


「「「アキラ!」」」



 ワイザーが魔族と大亀の名前を出す。

バドがハンナに一緒に連れていけと要請。

ノックも彼らに同意らしい。

冒険者としてはありがちな行動なのだろうか?

金、名声、戦い……そんな気がする。

ハンナの顔からは感情を読み取れない。

そんなハンナが一行のリーダー格である晶へ確認して来た。

脳筋ズが晶の方を一斉に振り返った。

ちょっと怖い。

そして名前を呼ぶ。

エルも晶を見ていたり。

口元を白くしながら……。

既に彼女の手からシュークリームは消えている。



(魔族とやらに会いたいとか戦いたいとかだよね?)


(そうじゃな。ワシも興味あるぞい!)

(私はどっちでもー)

(青羽魔族は昔から人族と敵対しておる。ワシは会ったことがないがのぅ)

(あの『反帝十傑』……あの人数で当たる相手なんですよね?危なくないですかぁ?)


(確かに……)


(昔、異世界人前衛が二体相手にして撃退した事があるそうじゃ。アキラ、ワシ、エルが出れば十分いけるじゃろう)


(ふむ……まぁ、いいいか。俺も見てみたいし)




 新たな戦場へ向かいたいと言う脳筋ズ。

戦闘狂と言っていい。

それしか出来ないと言えるかも知れない。


 晶が脳内会議を開催。

タケマツが青羽魔族に興味があると脳筋ズに賛成を示す。

カヅキはどっちでもいいと言いつつ、反対っぽい。

わざわざ危険に突っ込む必要はないだろうと。

ごもっともである。

意見を聞いては揺れる晶。

それもタケマツからの追加情報で決着がつく。

気にはなっていたようだ。

カヅキも絶対に止めたいという訳ではなかったのか、何も言わなかった。



「いいぞ。行こうか」


「ええ!」


「よっしゃ!!」

「そうこなくっちゃ!」


「さすがアキラだぜ!」

「行きましょう!」


「それなら私と一緒に行こうかね」



 晶が許可を出す。

エルが一番に反応。

やる気満々だったらしい。

鉄腕兄弟も拳を天に突き上げて喜んでいる。

ノックは腕を組んで、うんうんと頷いている。

その彼の背に赤マントはない。

コス家で取り上げられ、どこかへいってしまったようだった。

シーベルもやる気がありそうだ。


 ハンナが同行を認める。



「アキラ、私は……」


「デーガ君の側で待っていてくれてもいいけど……一緒に来るか?守るぞ?」



 フローラが晶の袖口を掴んでくる。

不安そうだ。

晶がフローラ、デーガの順で視線を動かす。

待つという言葉で顔を曇らせたフローラであったが、一緒にと守ると言う言葉で表情を明るくさせる。

年相応の笑顔になるフローラ。

とても嬉しそうだ。



「行く!」


「おう」


「話がまとまったなら行こうかね」


「「「おう!」」」



 フローラは即決。

様子を伺っていたハンナは急ぎたいのか、先を促す。

全員、動き出した。


 小さな手を可愛らしく振って見送ってくれるデーガを部屋に残して……。








「明るい所で見るといいもんだな」


(ですねー。建物も揃った造りですー)

(石切り場が近くにあるのじゃろうな)


(木造もありますが、色合いといい統一感があるね)


(しかし、やっぱり偉い人がいると対応が違いますねー)

(素通りじゃったな)


「アキラ、また来たいね!」


「おう」



 貴族街を馬車で抜け、庶民が住む街の通りを行く晶達一行。

晶が街を眺めながら楽しそうに言う。

カヅキ、タケマツも街の様子に感想を言う。

石を多用した家が多い。

赤色レンガも多く使われている。

昼近くなっているので人の活気も感じられる。

南大陸の町ドンはもちろん、タマギ島のアミよりも整った街だ。

規模も違う。


 フローラも珍しそうに馬車から見ていた。

そして、また来たいとも。

晶も異論はないようで、了承している。

落ち着いて観光したいのだろう。




 貴族街の第一防壁に続いて庶民街を覆う第二防壁も通り過ぎる。

そして、都市の外で待っていたモノは……。



「うはーっ!でけーなっ!!」

「足が八本もあるぜ!」


「これで行くのか?」

「獣臭以外に人の匂いもあります。飼い慣らされていますね」



 鉄腕兄弟が大興奮。

ノックもソレを見上げている。

シーベルが冷静に分析。



「このアサルトボアで行くからね」


(このちょっとしたビル見たいなのはアサルトボアって言うんですねー)

(大きいのぅ……)


「言う事を聞くのか?これ……」


「アキラ!大きいね!」



 ハンナが大きい獣を指差して晶達に告げる。

大きい獣はカヅキが言うように大きかった。

ノックの身長が二m越え、そのノックが見上げている。

対比すると……倍以上の差がありそうだ。

体高五mくらいであろうか?

体長も十mは下らない。

巨大な猪であった。

首元に騎乗用の席。

背中にも大勢が乗れる席が作られていた。

風防付きだ……風防が必要なほどの速度が出るらしい。

ガラスではなく木の風防。

景色などは二の次らしい。

その席から縄梯子が下がっている。


 そんなアサルトボアが五頭もいた。

圧巻である。



「この子達は直線でしか速度を出せないが、そのために整えられた街道を行くのよ」


「ほー」


「各国の首都同士を繋ぐ街道でもあるのよ」


「ほほー」


「ギャミッソ王国にいた『反帝十傑』もこれで来たのよ。駿馬でも勝負にならないわ」


「おー」



 ハンナが説明してくれる。

新幹線のようなモノだろうか?

長距離高速移動用らしい。

面白い。

晶も感心している。


 ハンナに続きアサルトボアに乗る晶達一行。

席は十人程度が乗れる。

図体の大きい脳筋ズが乗っても大丈夫。

席の後ろにある荷物置き場へ各自の荷物を置いて行く。

もっとも武器防具以外の荷物はほとんどない脳筋ズ。



 他のアサルトボアには兵士達、それから違う装備の者達もいた。

武装していない一般人に見える者達も……おそらくハンナ達、諜報部隊だろう。



「ハンナ行きます!」



 キラキラ男女は付いてきていない。

だが仕立ての良さそうな服を着たおじさんがいた。

そのおじさんにハンナが告げてアサルトボアが動き出す。

各アサルトボアの首元には操縦者が乗っていた。

足を首に打ち付けて出発。



(ゼロ!上から付いて来てくれ)


(解りました。マスター)

(ぴよこちゃんは元気ー?)

(はい。今も私の上で頭を突いていますよ)

(あー、見たいなぁ、会いたいなぁ)



 晶が動き出したアサルトボアからゼロへ念話を入れる。

上空で一緒に移動していくらしい。

晶は安堵の表情。

やはりゼロを頼みにしている部分があったのだろう。

空の覇者ゼロ。

まぁ、ここでも覇者でいられるかは判らないが。

カヅキがぴよこの様子をゼロに聞いている。

晶に使役されている者同士、念話が使える。

その意味で言えば別件で契約しているエルは参加出来ない。



「う、うぉぉぉっ!!」

「くっ……マジかよ!」


「うひょーっ!!」

「こ、これは……」


「ア、アキラ」


「フローラ、俺の後ろにくっつきな」

「うん!」



 走り始めたアサルトボア。

徐々に上がっていく速度。

流れる景色。

風防があっても置いて行かれそうになる体。


 鉄腕兄弟が体勢を低くしなおしている。

ノックは嬉しそうだ。

シーベルが止めなければ仁王立ちでもしそうであった。

子供か!


 フローラが息も絶え絶えに晶の名を呼ぶ。

この一行の中で一番フィジカルが弱いフローラ。

きついのであろう。

晶がフローラの前の席に移動する。

晶は余裕そうだ。

ゼロで慣れているからに違いない。

最初は風に押されてあえいでいたものだ。

エルは晶が隣に来て動く。

距離を縮めていたり。

ピトッとくっついている。

どういう心境の変化であろうか?

何となくだがシュークリームが効いたのではないかと思われる。

デーガではなくエルが餌付けされている気がする。



 アサルトボアの上は阿鼻叫喚。

大騒ぎだ。

首元でアサルトボアの制御をしている従者はどうやっているのやら……。

風防もあったが前を見る必要もあるからか、それほど大きい風防ではなかった。

大変な仕事である。


 恐らく他のアサルトボアはもっと悲惨であろう。

晶や脳筋ズより強そうな者はいなかったからだ。



 更にあがるスピード。

もう景色を見る余裕などなかった……晶を除いて。

いや、カヅキとタケマツも喜んで見ている。

異世界人、やはりおかしい。




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