3-28
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昼飯も食べずにアサルトボアで爆進した晶達一行。
数時間でかなりの距離を移動した。
そのおかげでエルを除く女性陣がぐったりしている。
フローラについては途中で晶が抱きかかえて衝撃を和らげていた。
青白い顔を満足そうにさせていたフローラ。
アサルトボアの速度がやっと落ちた。
目的地が近い。
そんな一行の目に惨状が映る。
「お、おいおい……」
「なんだこりゃあっ!!」
鉄腕兄弟が辺りを見回している。
ワイザーが絶句。
バドは大声を上げた。
「道がなくなってんぞ」
「細長い水溜りが……」
ノックがぼやき、シーベルも驚いている。
「ハンナ様!ここは危険です!移動してください!!」
「そのようだねぇ、街道を逸れて森へ!」
「はっ!」
アサルトボアの下からハンナへ向けて声があがる。
どうやら彼女の部下らしい。
ようやく止まったアサルトボアがのっそりと動き出す。
高速移動とは差がある。
ありすぎる。
ゆっくりした歩み。
街道、草むらを抜け、木が生い茂る森の側で全員がアサルトボアから下りた。
「部下からの報告によると、道に出来ていた水溜りは大亀の水流ブレスの結果らしいわ……」
「マジかよ!?結構先から続いていたぞ!」
「そんなのと戦えるのか!?」
ハンナが晶達に情報を教えてくれる。
大亀の水流ブレス。
細い水溜まりはそれで出来た模様。
バドが言う通り、道のかなり先から続いていた。
整備された街道を削るほどの威力、しかも遠距離まで届いている。
ワイザーがその威力を思い、大亀の戦闘力に驚いている。
「ミナロコ共和国の兵五千に向けて放たれたらしいわ。二千以上の兵が水流ブレスでやられたみたい……その半分は残念な事になったそうよ……」
「どんな化け物だよ!」
「亀ってそんな事が出来るのかよ!」
「お前ら、うるさい」
「ええ」
「だってよぉ、アキラ……」
「兵二千以上を一撃だぜ!?」
「だーかーらー、落ち着け。話は最後まで聞こうぜ」
「まったくです」
「……解ったよ」
「おう」
ハンナの報告に興奮する鉄腕兄弟。
そんな兄弟を窘める晶。
晶の隣でエルも同意。
なおも言い募ろうとする鉄腕兄弟であったが、晶に話を最後まで聞こうと言われ黙る。
バツが悪そうになる鉄腕兄弟。
みっともない所を見せたと思ったのだろう。
少しは冷静さを取り戻したようだ。
晶は体だけでなく心もタフになっている。
前は、鉄腕兄弟の側であったろうから。
自身の力に自信を持ったのか、他の要因があるのかは定かではない。
「街道を進んでいた兵士達は直線で並んでいたのが最悪の事態に繋がった訳よ。ただ、最初の一発以降は水流ブレスは放たれていないみたい」
「そりゃー……被害甚大だ」
(大亀の水流ブレスのぅ……体内に水を溜めてあった水で撃ったのだとしたら次はないのかも知れんのぅ……)
(私もそう思いますー。それだけの威力があって使わない手はありませんからねー)
(そうだね)
「おそらく連発出来ない」
「知っているのか?エル」
「いや、結果からそう思っただけ」
「あっそ……」
鉄腕兄弟が静かになった事でハンナが言葉を続ける。
タケマツとカヅキも話から大亀について考察する。
そこへエルが断言。
晶が自信満々で言い放ったエルを凝視する。
まぁ、ただの感想だった模様。
「いや、私達の分析もそうさ。もう水流ブレスは来ないと踏んでいる」
「そう願いたいね」
「ミナロコ共和国の兵士、その残りは遠巻きに大亀を包囲しているそうよ」
「話を聞くに、兵士じゃ荷が重そうだもんな。無理もない」
「そうね。『反帝十傑』に任せる事にしたのでしょう」
「それで今の戦況はどうなの?」
「ミナロコ共和国所属の『反帝十傑』二人も参戦しているわ。『反帝十傑』七人で青羽魔族と大亀を抑えているそうよ」
「まだ戦闘は終わっていないんだな?」
(『反帝十傑』あのレベルが七人もいて、決着がついていないんですねぇ……)
(決して弱い連中ではなかったぞい。青羽魔族、大亀……面白そうじゃのぅ)
(タケさん、悪い顔してそう)
(戦闘狂ですー)
(ふふふっ)
ハンナからの情報は続く。
コス家の庭で戦った『反帝十傑』以外の『反帝十傑』も新たに戦線に加わっている模様。
どんな者達なのか。
気になります。
だが、晶の興味は戦闘自体らしい。
参戦するつもりなのだろう、戦闘が終わっていないか聞いている。
「まだ戦闘中よ。青羽魔族は文字通りで空を飛べるわ、だから魔法主体でやりあっているみたい」
「空かぁ……それは面倒そうだなぁ」
「大亀には大剣などで傷は付けることが出来ているそうよ。大きなゴーレムで何とか抑えつつらしいわ」
「ゴーレム……あれか。あれなら抑えられるのか、大亀」
「大亀はやれそう。魔族は面倒」
「エルも言うなぁ」
「ええ」
戦闘は継続中との事。
そして青羽魔族は空を飛べるという。
遠距離攻撃での戦闘になっているとも。
コス家に来た気怠げな魔法使いが頑張っているのだろう。
ゴーレムマスターも大亀相手に気合を入れてそう。
大剣使いなども大亀の方らしい。
亀というからには頑丈な甲羅を持っているはず、上手く装甲の薄い所を狙っているに違いない。
エルはゴーレムと戦った経験からか、大亀に対し自信ありげ。
「俺達じゃ、魔族は無理だな」
「兄者、俺達がやるなら大亀だな!」
「大亀か!あんなブレスを撃つ大亀……おもしれぇ!!」
「血が騒ぎますね!」
自分達がやりあった相手、『反帝十傑』の面々が大亀と戦えていると聞いて戦意が戻った鉄腕兄弟。
ノックも獰猛そうな笑顔で声を張り上げる。
子供が見たら泣いてしまいそうだ。
獣人シーベルもやる気満々。
やはり脳筋ズ。
「魔法……私も魔法には自信がある。青羽魔族に……」
「フローラ……」
「アキラ……」
フローラも参戦するつもりらしい。
晶もそれに気づいてフローラの名前を呼ぶ。
ニュアンス的には、出来れば止めて欲しいといった感じ。
対してフローラは、お願いやらせて?といった所だろう。
傍から見ればお互いの名前を呼び、いちゃついている奴らに見えなくもない。
若干甘さが足りない。
「わらわも攻撃魔法は使える。得意ではないが」
「ふむ」
「フローラの魔力が尽きるまで、わらわが抱きかかえて移動を担当」
「頼めるか?」
「ええ」
「エル、ありがとう」
エルが名乗り出る。
なるほど、エルの戦闘力も頼みにしたい所だが温存というのもありだろう。
しかもフローラの守りにもなる。
妙案だ。
フローラがエルに笑顔で礼を言う。
エルは鷹揚に頷き、礼を受け取った。
(アキラ、ワシ、ワシも出るぞい!!)
(言うと思ってましたー)
(ついでにグラムとロックを引き連れていこうではないか)
(嬉しい)
(おお)
(了解)
晶にタケマツが参戦を伝える。
戦闘狂健在。
そしてグラムとロックも連れていくと言うタケマツ。
ずっと大人しくしていたグラムとロックが喜ぶ。
晶も止めたりはしなかった。
相手の力が全て判った訳ではない。
自分達の戦力、出せる者は出したい所だ。
「全員、戦闘準備!!」
「「「おう!」」」
「はい!」
「頑張る!」
「ええ」
晶がみんなに大声で伝える。
嬉しそうな声が直ぐに帰って来た。
そして晶も準備に取り掛かる。
まずは巨体のアサルトボアの陰へ……。
カードが鎧に変わる。
三つの鎧。
(不死者作成)
晶がこそっとタケマツ達を動けるようにした。
続いて、剣、盾。
あっという間に鎧ズの完成。
晶、タケマツ、エルは晶達のスリートップの戦力だ。
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「私はこれ以上前にはいけないからね!無理しないように!!」
「あいよ!」
準備の整った晶達はハンナに見送られて歩き出していた。
遠くの森、その側に大きな影が見える。
大亀だろう。
影に近づくに連れ、争う音や声も聞こえてくる。
「うぉぉっ!これだぜ、これ!!」
「俺達は戦う事しか出来ねーからな!」
「滾るぜ!」
「ですね!」
戦いの場が近くなりテンションが上がる晶達一行。
晶も静かに闘志を燃やしていた。
空にはゼロの姿も。
きっとぴよこも謎力でゼロの頭辺りにくっついているのだろう。
大亀の全貌がみなの視界に捕えられた。
テンションマックス。
誰からともなく、雄叫びが上がる。
戦場に木霊する声。
木々が揺れた気さえした。




