3-26
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(アキラ、この子可愛い!餌付けしましょう!!)
(落ち着けい!カヅキ)
(お、落ち着こう。しかし餌付けって……)
カヅキが小学校に上がったかどうかくらいの子を見て興奮している。
委員長カヅキに、こんな性癖があったとは……ショタ好きカヅキ。
ぴよこにやられていたので可愛いもの好きだとは思っていたが……いやこれも可愛いものには違いない。
男の子を捕まえて可愛いは申し訳ないが。
今もおにいさま、おねえさまにくっついて甘えている。
キラキラ男女も嬉しそうにして止めたりしていない。
むしろドンと来い、そんな感じに見える。
仲の良い兄弟だ。
タケマツと晶に窘められるカヅキ。
(子供だから……あっち系?)
(子供と言えばアレでしょう!)
(でもいいの?カヅキが体を取り戻すまでは控えて欲しいってお願い。ちゃんと守ってたけどさ)
(私が食べられないのは、とーーーっても悔しいけど、あの子が喜ぶ顔も見たい!)
(カヅキが壊れておる……)
(カヅキがいいなら……出そうかな)
ほんわかした空間を温かい目で見ながら脳内会議。
晶がカヅキの提案を飲んだ。
ずた袋をゴソゴソ漁っている振り。
物を探しているのではない。
手元を隠すためだ。
晶が特殊能力を使う。
地球で食べた事のあるモノを具現化出来る力。
厳密に言うと口に入ったモノらしかった。
因みに、食べ物のみならず風邪薬なども具現化出来ていた。
今の所、役には立っていないが……。
みんなに見えない位置で具現化されるモノ。
「デーガ君……美味しいモノ食べないか?みんなの分もあるよ」
通学路辺りで言っていたら、お巡りさんが飛んできそうな誘い文句。
今はセーフ。
晶がテーブルの上に大き目の木皿を出し、その上に乗せたモノ……。
(いいなぁ……シュークリーム)
(果物ではないようじゃが、何じゃ?)
(甘くて美味しいモノですよー)
(生クリームとカスタードのダブルですぜ)
(くぅっ……じ、自分の提案ながら悔しい……)
カヅキに体があったら指をくわえていそう。
薄茶色の皮に包まれた食べ物。
シュークリームであった。
しかも二種類のクリームで二倍楽しめる。
お菓子としては悪くない選択ではなかろうか?
「おにいちゃん、おいしいものなの?」
(私もおねーちゃんって呼ばれたいー!)
(おねえちゃん)
(タケさんからじゃ呑み屋のおねえちゃんです!)
(ふふふっ)
「うん。甘くて美味しいぞー!お兄さん、お姉さんが良いって言ってくれたら一緒に食べような」
「あまくておいしいもの!」
デーガが晶の言葉に反応してくる。
少し舌ったらずな感じのしゃべりが可愛らしさを倍増させている。
追加情報で甘いという言葉。
晶が保護者らしい兄妹の了承を得てからねと配慮を見せている。
デーガが甘いモノと聞いて目をキラキラさせている。
その目はキラキラ男女へ。
お願い視線である。
「デーガ食べたいのね!」
「いいぞ!一緒に食べさせていただこうか」
「やったぁ!」
「まずは私がいただきましょう!」
「私も……」
キラキラ男女はデーガの視線と戦う事すらなかった。
気持ちは解る。
そしてキラキラ男女が望んだ顔。
デーガが喜色満面、嬉しそうだ。
ハンナとデルマが毒見のつもりか前に出て来た。
だが仕事というよりは甘いモノに負けた、そんな気がする。
テーブルの上にあるシュークリームへ視線が釘付けだからだ。
「う、うむ。先に食べたまえ」
「えーっ、ボクもー」
「ハンナ達も食べたいのよ。先を譲ってあげましょうね?」
「はーい」
ハンナ達の勢いに押されたキラキラ男。
デーガが口を尖らせて自分もと言う。
キラキラ女がそれを窘める。
晶の手前毒見だと言えないのだろう。
上手くデーガを誘導。
素直そうなデーガは元気の良い返事。
「フォークやナイフで食べられなくもありませんが、手で持ってかぶりついてください」
晶が食べ方を説明。
ハンナとデルマは素直にシュークリームを手に取った。
デーガは護衛達の動かした椅子へ、ちょこんと座った。
大人しく待つらしい。
ジーッとハンナ達の手元を見ている。
キラキラ男女もソファーへと座った。
「では、いただきます」
「いただきます」
ハンナとデルマが手に持ったシュークリームを小さくかじる。。
(それじゃ皮だけになっちゃいますよー!もっとガッといかないとー)
「外の皮で中身を包んでいるので、中身と一緒に食べた方が美味しいです」
カヅキがハンナ達を見てもどかしそうにしている。
晶も苦笑して、カヅキの言いたい事をハンナ達へ伝えた。
ハンナとデルマが顔を見合わせてから、先ほどより大きくかじりついた。
やはり皮だけでは味気なかったのだろう。
香ばしい皮だけで喜んだ可能性もあるが。
ハンナとデルマがシュークリームの皮を噛み切った。
彼女達の目が大きく見開かれる。
そして再びお互いの顔を見合わせている。
頷く二人。
「アキラ、これは何と言う食べ物なのかしら!とても甘くて美味しいわ!!」
「ど、どこで買えるのでしょうか!?タマギ島ですか!?美味しいです!!」
デルマとハンナが甘くて美味しいシュークリームを絶賛する。
言葉だけではなく表情でもだ。
子供のみならず女性も甘いモノが好きだと判る。
晶の返事を聞く前に次の一口へと動いていたり。
大好評。
ハンナはタマギ島と口にしていた。
色々と調べがついているのだろう。
きっとコス家の者からの情報も得ているはず。
王家直属の諜報組織、侮れない。
「ハ、ハンナ、デルマどうなんだい?」
「早くおっしゃい!?」
「ボクもたべたいよー」
「ボクも食べたい」
キラキラ男女がハンナ達の食べっぷりを見て返事を促している。
テーブルの上にあるモノが美味しいモノだと伝わっていた。
デーガは素直に食べたいと言っている。
フローラまでもだ。
デーガとフローラ、小さい男の子とボクっ子、同じ呼称を使う者達。
お互い顔を見つめ合って、にへらっと柔らかく笑いあっている。
気が合いそうだ。
「も、もう少し調べませんと……」
「そうですね!もう一つ……」
ハンナとデルマ、いい度胸である。
口元が粉砂糖で白くなっている。
それが気にならないほどの食べっぷり。
それほど大きくはないとは言え、もう食べ終わっていた。
そして二つ目に手を伸ばしていたり。
「もういい!デーガいただこう!」
「そ、そうね」
「わーい」
「いただきますね」
「わらわも……」
キラキラ男女がハンナ達の許可を待たずにシュークリームへ手を伸ばす。
先にデーガへ渡す辺り、理性は残っているようだ。
受け取ったデーガが喜んでいる。
フローラ、エルも手に取った。
「俺達も食っていいんだよな?」
「止めても食うけどな」
「こんなのが甘いのかぁ?」
「良い匂いがします」
脳筋ズもハンナ達の反応を見て我慢できなくなったようだ。
ノックも疑問を呈しながらも手を伸ばしている。
獣人らしく鼻が良いシーベルは甘さを疑ってはいなさそう。
嬉しそうだ。
甘いモノは一般的に少ないのだろう。
果物以外は特に。
「あ、甘い!甘くて美味い!」
「ふわふわ、しっとり……卵の風味も感じられますわ。美味しい……」
「よくある砂糖の塊とは大違いだな……」
「ええ」
「どんな物を使って作られているのか……」
「いくつかの食材は想像が付きますが、どうやったらこうなるのかしら……」
「ふわふわー!あまくておいしー!!」
「皮の香ばしさが甘さを際立てているの。美味しい」
「ひ、人の世界にはこんなモノが……」
「美味い!」
「これはお高いんじゃねーの?」
「うほーっ!甘い!果物の比じゃねーぞ!?」
「ですね!!初めての味です!甘い!!」
キラキラ男女、デーガを始めとして大興奮。
ここはキーナ商業国、色々な所の物資が集まっているはず。
そんな場所に住んでいると思われる者達が絶賛している。
お菓子はあるだろうが、これほどのモノはないという事だ。
キラキラ女がニコニコしているデーガの頬をハンカチで拭ってやっている。
粉砂糖かクリームが付いていたのだろう。
さすが、おねえさま。
フローラは嬉しそうにしながらも解析している模様。
自分の所で作れないか考えているのだろう。
しっかり者だ。
エルはシュークリームを一口食べてワナワナと震えている。
感動しすぎだ。
そしてこれは人の世界でも、特別なモノ。
後で晶が解説するだろう。
脳筋ズは大人の男達だが、悪くない反応。
シーベルも甘いモノが好きなのか特に反応が良い。
奴隷という立場だったシーベル、楽しんで欲しいものだ。
メイドさん達がみなの前にお茶の入ったカップを置いて行く。
紅茶っぽい。
砂糖はないが、甘いモノには良いかも知れない。
「メイドさんや、他の方達もどうぞ」
晶が自分の前にお茶を置いてくれたメイドさんにシュークリームを持たせた。
そして皿に数個乗せて他のメイドさんに渡す。
評判が良かったのでみなに食べてもらいたいと思ったのだろう。
優しい事だ。
可愛い子だからかも知れない。
メイドさん達は嬉しそうに受け取り礼を言って下がった。
下がった先には家庭教師のおじさんもいた。
キラキラ男が護衛に何かを伝えた。
少し戸惑ったようであったが、メイドさん達の方へ動いた護衛達。
彼らもシュークリームへありつけている。
大声で騒いだりはしなかったが、喜んでいるのは晶に伝わっていた。
晶も嬉しそう。
「ちちうえとははうえにもあげたい……」
「デーガの首輪が外れた事も説明にいくしな」
「デーガは優しい子ねぇ……」
デーガが半分になったシュークリームを見て呟く。
半分食べてしまったが、他にも食べて欲しい者がいた事を思い出したのだろう。
優しい子だ。
そうキラキラ女も言っている。
言いながら晶の方を流し目で見ていたり……色っぽい話ではない、もっとよこせと言う事だろう。
晶は苦笑しながらも、それを正しく理解したようだった。
追加を出している。
ちゃんとデーガの前にだ。
他の所に置いたら食べられてしまう。
さすがに誰もデーガからはとるまい。
ほんわかした空気がデーガの優しさで、更に温かくなった。
そこへ部屋の扉がノックされる音。
護衛の一人が慌てて扉の側へ。
扉越しに何か小声で話している。
そして開かれる扉。
入って来た者は兵士。
帯剣もしていた。
護衛から耳打ちされるキラキラ男。
「構わない。そこで言ってくれたまえ」
「はっ」
キラキラ男がソファーに座ったまま、兵士にその場でしゃべれと言う。
やはりキラキラ男は若いが大物なのだろう。
入って来た兵士も畏まっている。
「数刻前、『反帝十傑』と魔族が激突しました」
兵士が言うと部屋のほんわかさがなくなり、緊張感が漂った。
誰かの喉が鳴った音すら聞こえた。
コス家で晶達と争った者達は晶達を追う事もなく、本来の仕事へ動いたのだろう。
忙しい事だ。
「場所は?」
「ミナロコ共和国との境から我が国に侵入した辺りです」
「そうか……」
「我が国の方へ来ましたのね」
「手の者を増やします」
「鳥も、もっと出させましょう」
「うむ」
キラキラ男が激突した場所を尋ねる。
自国での戦闘になったと聞いて黙り込んだ。
ハンナとデルマが情報収集の手を増やすと提言。
キラキラ男が頷く。
(この人、ハンナとデルマに指示を出せる人なんですねー)
(うむ。王家の者という事じゃな)
(俺、一般人だったんだけどなぁ……何でキラキラした人達が集まるかなぁ」
(力ある者の宿命じゃな)
(そう言われるとそんな気がしますー)
ハンナ達の言葉を聞いて、参謀カヅキが言う。
タケマツも同意。
キラキラ男女は王家の者だと。
晶が溜息を一つ。
ずいぶん遠くへ来たらしい。
キラキラ男女、ハンナ達、そして護衛も忙しそうに動き出した。
良く解っていなそうなデーガをフローラが相手をしている。
ボク同士、仲良くなっている。
フローラは一人っ子だ、弟が欲しかったのかも知れない。
脳筋ズは興味深そうに話に耳を傾けている。
荒事大好き、さすが脳筋ズ。
ましてや自分達とやりあった相手の戦いだ、気にならない訳がなかった。
エルは最後の一個であるシュークリームを確保してご満悦。
みなの注意が逸れたのが大きかろう。
口元が白かったり。
甘いモノに目がなかったようだ。
晶の側に来れて良かったろう。
これからも機会はあるはず。
晶は一人、お茶を傾けるのであった。




