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3-20

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「旦那、俺達こんな事してる場合じゃねーんだぜ?」

「まったくだ……」


「そうよねぇ。昼には魔族とグランドタートルの相手をしなくちゃいけませんのに」

「お師匠様、私がやりますよ!」

「頼もうかしら。こんな所で力を使いたくないわ」


「魔族を倒す前に体を温めておこうではないか」


「温まるのかねー」

「うむ……」

「『反帝十傑』が出る相手なのかしら」




 晶を視界に納めても余裕な者達。

武器を抜きもせず話している。

仮面紳士トールを旦那と呼ぶ若い男。

大柄で寡黙そうな男。

前衛ではなさそうな美女……前衛どころか後衛にも見えない。

これからパーティにでも行こうかというような出で立ちだ。

場違い極まりない。

浮きまくりだ。

その美女をお師匠様と呼ぶ少女。

こちらも戦う恰好ではない、町娘っぽい。

二つのおさげが更にそう思わせてくる。


 どうも、昼になったら魔族と戦うための集団らしい。

牢屋にいた時に聞いた魔族の話だと思われる。

『反帝十傑』、これが彼らの集団についている名前だろう。

十人いるに違いないが、ここにいるのは五人だ。



(『反帝十傑』って何者?)

(確か……帝国に反旗を翻して独立した国が対抗するために作った強者の集まりだったはずー)

(うむ。ワシもそう聞いておる)


(って、タケさん、話す余裕あるのね……)

(凄いー)

(ワシも外で戦った方がええかの?)

(ピエロ達を抑えるのと安全な方向を確保したいから、そのままお願いします)

(解ったのじゃ)



 晶の問いにカヅキとタケマツが答える。

情報収集はバッチリ。

タケマツから返事が来るとは思っていなかった晶、驚き、呆れている。

ピエロ達は広くもない通路に釘づけされている模様。

タケマツがいれば壁があるようなものだろう。

タケマツが余裕綽々でこれからの方針を晶に聞いている。

外で戦うのはタケマツ以外の面々になりそうだ。



「むっ!ヴァンパイアの……エル!」


「ヴァンパイアがいるのかよ!!」

「……」

「どういう事かしら?トール」



 トールが晶の後ろから出て来たエルを見て大声を出す。

ヴァンパイアという言葉が出ると『反帝十傑』とやらの面々が反応する。

武器を構えた。

剣、大剣、盾。

町娘っぽい少女がお師匠に盾を渡していた。

パーティに行こうかという恰好には似合っていない。

体の半分ほどが隠れている。

どういう職業なのやら。

町娘も小さい盾で防御体勢。



「ぬぅ、君!教会へ走れ。ヴァンパイアがコス家に出たと伝えたまえ」


「はっ!」



 トールが背後にいた兵士の一人に声をかける。

兵士は十人。

兵士十人に『反帝十傑』の五人。

コス家の庭にいる者はこの十五人だ。

トールに指示されて外へ向かった一人が減る。


 トール、『反帝十傑』の言葉は無視。


 美女が無視されてトールを睨みつけている。

彼らの上下関係が判らない。

トールが長柄武器を構えた。

エルの登場で遊びがなくなった模様。

教会の者を呼びに行かせたことから、ヴァンパイアに対抗出来ないのかも知れない。

エルはコス家の地下に幽閉されていた。

コス家の関係者であるトール、エルの情報も色々知っているはず。

エルは強いと。



「エル、警戒されてるなー」



 晶が不満そうな顔をしてエルに話しかけている。

従者のエルは警戒されているのに自分はおざなりだとでも思っていそう。

困った主だ。



「教会の者に追い込まれるまで、暴れました」

「エル、強いんだね」

「ええ」



 エルが晶に警戒されている理由を述べる。

エルに抱きかかえられたままのフローラがエルを褒める。

殺伐とした空気の中、ここだけは華やかであった。

背景を描くなら薔薇とか花が咲き乱れている事だろう。



「アキラ、やっちまおうぜ!」

「兄者の言う通りだぜ!」


「そうこなくっちゃな!!」

「腕がなりますね」



 脳筋ズが晶の横に出て大声を出す。

いや、大声がデフォルトなのだろう。

ガサツそうな冒険者だもの。



「『反帝十傑』って奴らが相手らしいけど、大丈夫か?」


「相手にとって不足はねぇ!!」

「俺と兄者なら十分やれる!」


「おもしれぇ!!」

「フォローはお任せを」


「そっか……屋敷の方はタケさんが抑えるから気にするな」


「「「おう!」」」



 『反帝十傑』の名前を脳筋ズも知っているらしい。

知っていてなお、やる気満々。

頼もしい。


 脳筋ズは敵に突っ込んでいった。

怖い物知らずか……。



「エル、フローラは俺が見る。お前は怖がられているみたいだし、暴れて来ていいぞ」

「ええ!」



 晶はフローラをエルから預かる。

と言ってもお姫様抱っこではない。

フローラも魔法で戦うと言っていたので、守るために前に出ているだけだ。

フローラを降ろしたエルも嬉々として脳筋ズの後を追った。

素手のままだがいいのだろうか?



(アキラ、良かったのー?)

(ん?あぁ、俺が出なくてもって事?)

(うん。アキラが最大戦力だと思うんだけどー)

(脳筋ズはともかくエルへの警戒……教会の者が来るまでは問題ないだろうと思ってさ)

(そうですかー)


(魔力量で敵の身体強化が、どの程度か想像できるし)

(まぁ、それはそうですねー。脳筋ズも負けていませんねー)


(情報を集めたいってのもね)



 カヅキが晶に聞いている。

晶にも考えがあるようだ。

仲間の力も低くは見ていない。

十分やれるとの判断。

晶は敵を魔眼で視て魔力量を計っていた。

ワイザーとバドの兄弟も男にしては魔力量が多い。

カヅキの言う通り、敵に負けていない。

ノックは鉄腕兄弟より魔力量は少ないが頑強持ちだ、タフさがある。

シーベルは魔力量が多くはないが、獣人特有の速さを持っている。

素の身体能力も高い。


 十分やれると晶は思っていた。



(ゼロ!聞こえるか!?)



(……はい。聞こえます、マスター)

(屋敷からの脱出成功。都市から出たいんだがどうだ?)


(一番外の城壁は魔物避けがありますがいけるでしょう)

(そうか!俺の位置は解るな?来い)


(解りました)

(ゼロちゃん、下からの攻撃に気を付けてねー)

(カヅキ、忠告ありがとう)



 晶が都市郊外にいるゼロへ念話を飛ばす。

戦闘へ出なかったのは、これがあったからかも。

落ちついて指示を出すためには必要であろう。

少しラグがあったがゼロからの返事。

キーナ商業国の首都コナモ、都市の防御にも力が入っている。

魔物が嫌がる仕組みが城壁にあるらしい。

ゼロには問題なさそうだが……ゼロが強いおかげであろうか?

問題無いと聞いて、ゼロを呼ぶ晶。

カヅキもゼロへ言葉をかけている。



(こやつらは敵ではないのぅ……ワシも外で暴れたいのじゃ)


(タケさん、脳筋ズがやばそうだったら頼むからさ)

(むぅ、仕方あるまい)



 タケマツが念話でブツブツ言っている。

ただでさえ頑丈な黒鉄のフルプレート。

更にデスアーマーとして強化されている。

刺突剣や短剣ではタケマツの防御は抜けないらしい。

つまらなそうなタケマツ。

それを晶が慰めている。

リーダーも大変だ。



「アキラ、ボクも攻撃していいかな?」


「魔力を全部使うなよ?」


「もちろん解っているとも!」


「ならよし」



「……ストーンバレット」



 フローラが上目遣いで晶を見て聞いている。

男への頼み方を良く知っている。

可愛らしい。

もっとも晶も止めようとは思っていないようで、注意点だけ伝えている。

嬉しそうなフローラ。

丁重な扱いとはいえ、隷属の首輪を着けられ誘拐されたのだ、思う所があったのだろう。


 晶の了承を得て、フローラはブツブツと口の中で詠唱した。

魔法を使うのに詠唱はいらないが威力を高めたり魔力消費を抑えるための詠唱は有効。

フローラの周辺に小さく白い魔法陣がいくつも浮かぶ。

晶が魔法陣をキラキラした目で見ている。

大好物なのだろう。

闇夜に浮かぶ魔法陣。

幻想的である。

一緒に姿が浮かび上がるフローラも美しい。


 ただ、目立ちすぎて敵にもバレバレであろう……。

魔法使いは強いが問題もありそうだ。


 そして浮かぶ魔法陣から射出される石礫。

ちょうど吹き飛ばされたノックを追撃しようとしていた大剣使いの大男に向かう。



「っち」



 大剣使いはフローラが放った魔法を大きく飛び退いて回避。

だが、フローラは考えて魔法を放っていた。

大剣使いが避けても無駄にならないようにだ。

後ろにいた兵士達に石礫が当たる。

くぐもった悲鳴とともに倒れる兵士達。

二人の兵士が倒れ、一人の兵士が武器を手放した。

さすがタマギの王族、その一員というべきか。



「やるな!フローラ」


「えへへ」



 フローラが嬉しそうに晶を見ていた。

その意図を正しく理解した晶。

ちゃんとフローラを褒めている。

ちょうどいい位置にある頭を撫でたりはしていなかったが。


 フローラはフムーッと鼻息も荒く敵を探している。

褒められたのが嬉しかったらしい。

次の相手が可哀想である。




(エル、強いですねー)

(ね)


(素手なのに仮面紳士を押していますよー)

(エルの速さなら長柄武器の懐にも入れるんだな)

(敵は防戦一方ですねー)

(懐に入られて耐えられているのを褒めるべきかも……あれはきついはず)



 フローラが戦場を見渡している間に、カヅキが晶に念話。

一番目立っている戦いの話だ。

エルが仮面紳士トールを襲っている。

武器防具を装備していないエル。

だが異常な身体能力のみで圧倒している。

仮面紳士の鎧は防御力が高いのだろう。

そうでなければ骨まで砕きそうなエルの攻撃に屈していただろう。

打撃音が凄まじい。

鐘を突くような音がしている。



(ノックは押されているな……シーベルのフォローがあってもきつそうだ)

(でも嬉しそうに笑っていますよー)

(脳筋だから……)

(ですねー)


(鉄腕兄弟は……苦戦しているな)

(剣の男は速いですねー。ハンマー使いの兄弟では相性が悪そうですー)

(呼吸の合ったコンビネーションがなけりゃ沈んでいるね……)

(兄弟って凄いんですねー)

(全部の兄弟がそうじゃないかと……)



 脳筋ズの方は押され気味であった。

細かい傷は負ってそう。

嬉々として立ち向かっているのでしばらくは持ちそうだが……。



(あっ!あれは!!)

(ゴーレム?人形?)

(あっちの女達っぽいですー)

(エルに向かったか……エルで良かったというべきかな)



 庭に異形のモノが蠢いていた。

ここにいる誰よりも大きい姿。

土の塊?

ゴーレムだろうか?

腕も大きい。

エルへ向かって剛腕を振るった……側にいる仮面紳士を気にもせずにだ。

轟音とともに少しの振動。

当たれば凄い威力であろう。

エルは難なく回避している。

仮面紳士もだ。

まぁ、女達の方を見ているのは非難の目であろうが。

異業のモノはゴーレムだけではない。

兵士達が増えたかと思ったがそうではない。

人型のモノがエル達を包囲していた。

人形……木製の人形に見える。

魔力を吸い取りそうな踊りでも踊りそうな感じ。

手には槍を持っている。

彼女達師弟の力だと思われる。

なにせ彼女達の周りを中心に固めているからだ。



「フローラ!あの人形を潰してくれ」


「うん。ボクの出番だね!」



 晶がフローラに指示を出す。

嬉しそうに返事をするフローラ。

まだまだ鬱憤を晴らしたいようだ。

それとも晶からの頼みだというのが大きいのだろうか?

判らない。


 フローラの周囲にまたも魔法陣が浮かぶ。

今度は複数ではない。

一つだけだ。

そして敵も馬鹿ではなかった。

暗い庭、松明といくつかの照明魔導具以外の明かりはない。

そこへ浮かびあがる魔法陣目掛けて矢が迫り来る。



「そうはさせないっよっと」



 フローラへ向かって来た矢を晶が事もなげに手で叩き落としていく。

フローラを守る。

ちゃんと忘れていなかった。



「ファイアーボール!」



 フローラが出した魔法陣から人の頭くらいの火の玉が飛び出す。

なるほど、木製の人形なら火が有効だろう。

ちゃんと考えている。


 あわよくばと思ったのか、火の玉は仮面紳士トールとその背後にいる人形へ向かった。

仮面紳士トールは難なく回避。



「なっ!?」



 動きの遅そうな人形にも回避された。

フローラも避けられるとは思っていなかったようだ。

驚愕の声を漏らす。

轟音とともに庭を燃やす火の玉。

被害は庭だけである。


 敵の女達の笑顔が見える。

うちのモノがそう簡単にやられるものですかと言わんばかりの笑顔。



 しかし燃える人形。

エルの仕業である。

仮面紳士、ゴーレムの腕を掻い潜って人形を火へ叩き込んだのだ。

既に三体が燃えながら蠢いている。

時間の問題だろう。



「火が役に立っている」

「エル、凄いね」



 晶がフローラのフォロー。

フローラはエルを賞賛。




「くっ……」



「あらら……」


「遅いぞ」

「やっと来ましたわね」



 褒められたエル。

そのエルが大きく飛び退いた。

離れた所の地面が弾ける。

何か魔法を避けたようだ。

風の魔法だろうか?


 そしてのほほんとした声。

女?

仮面紳士トールが声の主に話しかける。

お師匠様と呼ばれた女もだ。

大剣使いの大男と剣士の若い男は脳筋ズとやりあっていて、言葉はない。



 更なる敵の登場らしい。



(遅れてくる奴は大物説)

(魔法使いっぽいですねー。魔力もエルほどではありませんが多いですー)



 新たな敵。

晶も動いていた。

動いていたと言っても走り出した訳ではない。


 晶の側には武器庫でいただいた鎧が二つ。

カヅキがカード化から戻していた。



不死者作成(クリエイトアンデッド)



 タケマツの後輩が出来るのであった。


 敵味方が交錯する戦場。

敵の増援が次々来る可能性が高い貴族街。

ゼロの到着が待たれるのであった。

しかし、この人数ではゼロに乗せきれない。

さすがに晶も考えてはいるはず……。



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