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「おぉ!カヅキ、これ凄くね!?」
(緑風の小手、良さそうなマジックアイテムですねー)
「この剣は金ぴかで成金丸出しだけど、これもマジックアイテムだった!」
(ぐふふー。カードを見る楽しみー)
「ねー。これは楽しい!」
宝物庫は小さい部屋だった。
物置小屋程度の広さ。
窓もなく、分厚い壁、金属の板が壁に入っているのが叩いた音で解る。
鍵付きの金属扉は晶が三回蹴っ飛ばしたら吹っ飛んだ。
超力技。
棚にある物、箱に収まっている金貨、銀貨、宝石。
良い笑顔でカードにしていった。
そしてカード化した物のテキストを見ては一喜一憂。
当たりの代物としてマジックアイテムがあった。
大事にしまわれていた物がマジックアイテムではなかったり、そういうのがハズレであった。
ゲームのような効果を持つマジックアイテム。
晶とカヅキが興奮してしまうのも無理はない。
狭い部屋が少し広くなった。
物がなくなったからだ。
(次は隣の部屋ですね-)
「当主の部屋かー。まぁ、やばそうな文書とかあったら外でばら撒いてやろう」
(それ、いいですねー)
「恨み晴らさでおくべきかー」
(ふふっ)
隣の部屋へ。
またも扉を蹴り破る晶。
力技に慣れてきている。
脳筋化が進んでいたり。
「おー、本が結構ある」
(こんなに揃っているのは、こっちで初めて見ましたー)
「俺もー」
(貰って読めば?)
「そうしようかな……参考にして名前以外も掛けるようになりたいかも」
(いきなり読めたから私も書けませんー)
「そのうち困りそうだから勉強しようっと」
当主の部屋は書斎といった感じだった。
本棚には本がいっぱい。
数百冊はありそう。
こっちの世界にも紙はある。
あるが一般庶民が軽々使えるほど安くない。
その紙をたくさん使っている本。
それがいっぱい……一財産だろう。
価値を解っている者にはお宝の山。
晶達、異世界人は言語チートがある。
いきなり話せるし読める。
だが文字を書くのだけは別であった。
晶も名前だけは書けるようになったが、それ以上は勉強していなかった。
晶とカヅキは、本を大量に手に入れた今、勉強を始めようと決心している。
「この壺は良い壺だ」
(ツッコミませんからねー)
「寂しい事いうなよー」
(寂しいといえば、他の人が今のアキラを見れば独り言を言う寂しい人でしょうねー)
「ぐふっ!」
(ぐふって声に出すとかー)
「ようしゃないなぁ」
当主の部屋を物色していく晶。
晶とカヅキは仲良し。
いい関係になってきている。
(アキラ、そこの絵の裏に何かありそうですー。魔眼で魔力を視てくださいー)
「お、どれどれ……」
カヅキがお宝嗅覚を発揮している。
晶は魔眼で確認せずに即、絵を壁から外した。
カヅキの話を疑う必要もないからだろう。
絵の裏には小さな鉄の扉。
鉄の金庫が壁に埋め込まれていた。
「カヅキ、面倒だから金庫ごとお願いー」
(はいはい、お任せをー終の手札」
晶の頼みでカヅキが金庫まるごとカード化。
壁にぽっかりと空間が出来た。
便利な力。
一家に一台カヅキさん。
「物を確認したいけど、後回しねー」
(みんな待ってますものー)
もう部屋に用はない。
自然、晶は早足になっている。
「階下が騒がしいな……」
(戦ってますねー)
階段付近で晶が音に気付く。
そして晶は急いで階段を降りた。
乱戦にはなっていなかった。
タケマツ達が遠巻きに包囲されている。
とは言っても各通路を封鎖されているだけだ。
階段前だけは広い空間になっているが戦いにくい場所。
味方にとっても敵にとっても。
「おーっと!新たな敵ですかぁ?」
「余所見するな」
「でも一杯血が見れるんですよぉ?嬉しいじゃないですかぁ」
「お前だけだ」
「くふふっ」
散発的に金属同士がぶつかる音。
そんな中、敵の声がホールに響く。
階段を降りた晶を見つけたらしい。
晶が声のした方を見る。
声の主達は他の兵士とは違う恰好をしている二人。
晶は少し驚いている。
(うわー!ピエロ、ピエロですよ!!)
(うはー!マジか!)
(顔に何か塗っている者の事かのぅ?)
(はい。それがピエロですー)
(やはりか。もう一人は細目だが特徴がないからのぅ)
カヅキが興奮した声を送っている。
晶もカヅキに反応。
念話が聞こえたであろうタケマツも参加。
そう、声の主は独特な存在感を示しているピエロと細目の者であった。
ピエロは顔を白塗りにして赤く涙のような線。
服は白衣っぽい。
こちらはピエロとは言い難い。
白衣の袖からは金属の小手が覗いている。
両手にダガーナイフ。
ジャグリングでもしそうな感じだ。
もう一人の細目は普通の革鎧。
刺突剣、エストックをタケマツに向けている。
周りの兵士と同じ恰好をしていれば目立たないくらいだ。
「早く血を見せてくださいよぉ!けへへっ!」
「ってピエロの方じゃないのかよっ!!」
(細目がイカレタ感じのしゃべりとかー!!)
「失礼な。俺をこいつと一緒にするな!」
「戦うのが好きって意味じゃ似たようなものじゃないですかぁ」
ええ、血を見るのが好きだとか言っていたのは細目の方でした。
ピエロは逆にまともそう。
思わず晶がツッコミ。
カヅキもだ。
晶のツッコミが辺りに響き渡り、周囲の戦いが止まった。
「普通、ピエロがイカレタ口調だろっ!?」
(まったくですー)
「俺の顔は家の事情だ。仕方ない」
「そう……なのですかぁ。ならば次は私もジェドのマネをしましょうかねぇ」
「ヤ・メ・ロ!」
晶が声を荒げる。
同意しているのはカヅキのみ。
こちらの世界では、そういうお約束はないのかも。
ピエロが淡々と晶に返事。
真面目か。
細目がピエロのメイクをしようかと言い出す。
ピエロこと、ジェドという者が道化師のメイクを歪めて嫌そうに止めている。
中々愉快な奴ららしい。
(タケさん、あいつらの強さはどうなの?)
(どうやら闇ギルドの面々らしいのじゃ。どちらも速い)
(倒せる?)
(余裕じゃな。奴らの武器では今のワシは抜けん。狭い通路というのもこちらに利があるのじゃ)
(おー。余りここに留まっていないほうがいいと思うんだ、殿は任せて良い?)
(任せい!)
漫才のようなやり取りをしているピエロと細目を横に、晶が念話でタケマツに聞いている。
ここで時間を取られると外から援軍が来ないとも限らない。
貴族街にあるコス家の屋敷だ、屋敷以外の兵も動く可能性が高い。
夜とはいえ常時、兵は詰めているだろう。
タケマツはピエロと細目の速さを褒めてはいるが、問題ないと言い切っている。
自信満々で殿を任せろとも。
(エル、俺が突破口を開く、フローラを守りながら付いて来い)
(解った)
(すまんね)
晶が隣に来たエルに耳打ちする。
エルに守られていたフローラにも聞こえたようだ。
嬉々として兵士達を向い合っているノック、シーベル、鉄腕兄弟には何も言わないのだろうか?
邪魔をしてはいけないなんて思っていそう。
一気に加速する晶。
壁を蹴り兵士の頭を超える。
兵士達の中には反応した者もいたが、何がどうなったのかは理解していなかった。
あっさり兵士達の後ろをとる晶。
「狭い所での戦いはつまらんだろ?場所を変えようぜ!!」
「それもそうだな!アキラ、いい事を言う!」
「いきましょう」
「タケさんが殿をしてくれるから、前にだけ進め!」
「「おう!」」
後ろから兵士達を蹴り飛ばしながら晶がノック達に声をかける。
狭い所での戦いにイライラしていたのか、ノックが頷きながら兵士達に突入。
シーベルも続く。
フローラを守りながらエルも走って来た。
鉄腕兄弟はタケマツを見た後で晶の方へ。
タケマツは悠々と歩いている。
何というか雰囲気がある。
不気味ってのもあるが、大物っぽい。
動きがゆっくりで余裕があるのが理由かも知れない。
いきなり動きだした晶達に兵士達が動こうとするが、タケマツには近づけない。
危険を察知できる程度には強い兵士達らしい。
と、思ったら細目がエストックを構えてタケマツに突っ込む。
ピエロも細目の背後にいた。
響く金属音。
タケマツの盾とエストックがぶつかった音だ。
更に金属音。
タケマツの持つ盾、その死角からピエロの強襲。
しかし目で見ていないタケマツには通用せず。
振られた盾でダガーナイフを弾かれていた。
まぁ、鎧の隙間を狙っても体はないので意味はなかったろうが……。
タケマツ、言うだけの事はある。
「タケさん!落ち着いたら手合わせ願おう!!」
「兄者、俺もやりたいぜ!」
「ぬっ!ワイも!!」
「面白そうですね!」
背後の音に振り向いた脳筋達。
目の前の兵士達は既に倒れていた。
強そうな二人を軽くいなしているタケマツを見て、脳筋達が嬉しそうにしている。
模擬戦の依頼に剣を上げて答えるタケマツ。
戦闘狂はいっぱいいるようだ……。
エルもジーッと見ていたり。
晶は苦笑しながら屋敷の通路を走った。
もちろんカヅキのナビゲートである。
屋敷の中については完璧だ。
屋敷の外はどうなのだろうか?
霊体でウロウロしていたので頼れるに違いない。
エルも晶に続いて走る。
フローラをお姫様抱っこしている。
走る速度に問題があったのだろう。
守るのにもいいのかも。
フローラの顔は何とも言えない感じ。
嬉しいとも困るとも判断が付かない。
こんな時でなければ晶が凝視していたであろう光景。
百合?いいえもっと素晴らしいモノです。
少なくともむさい男達が除外されているのは大きい。
その脳筋ズも付いてきている。
やはり狭い所での戦いは性に合わないのだろう。
ムキムキで大雑把そうな彼らだもの。
(そこの扉を出れば屋敷から出れますー)
(おぉ)
「外に出るぞ!」
晶が後ろを振り向くことなく大声を出す。
走る速度を落とさず扉へ突進。
そんな晶の表情は真面目と言っていい。
砕ける扉。
その先には人がいた。
晶は魔眼で確認していたのだろう。
だからこその表情。
「起こさないで欲しかったな」
仮面紳士ことトールが薙刀のような長柄武器を肩に担いで立っていた。
トールの後ろにも数人いた。
待ち受けていたらしい。
貴族の屋敷だ、簡単には逃してくれない。




