3-18
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「おう!来たな!!ガッハッハ!」
「おせーぞ!」
「まったくだぜ!」
(ワシは止めたのじゃぞ?)
晶が屋敷の中で一番騒がしい所へ着いた。
コス家の兵士の後ろ姿が見えたので後ろから首トン。
瞬く間に兵士五人が崩れ落ちる。
晶は一々倒れた者の様子を伺ったりはしていない。
ちゃんと生きているのだろうか……。
そして見知った顔達。
武器庫前の通路で大立ち回りをしている面々。
どの顔も嬉々としている。
もっとも黒鉄の鎧であるタケマツの表情は判らない。
向うも晶を見て晶に声をかけて来た。
六尺棒で兵士の腹を突くノック。
横から剣で切り掛っている兵士に蹴り。
立ち上がろうとしている兵士に踵を落とす狼獣人シーベル。
彼は素手だ。
徒手空拳。
大雑把なノックの後始末に忙しそう。
鍛冶屋で使いそうな大槌を床に付け、そこを軸に兵士を蹴るワイザー。
弟であるバドも同じような事をしている。
大きい鈍器と格闘が武器だろうか。
似た物兄弟。
ハンマーを振るわないのは通路が広くないせいだろう。
そしてタケマツ。
晶へ一言念話を入れると、タケマツはアキラの方を見る事なく奥にいる兵士へ突撃していった。
言い訳っぽい。
追及を逃れるために奥へ向かった気がする。
「おう……って……」
(あちゃー)
「あぅ……」
晶が手を挙げて返事をした。
その言葉も途中で途切れる。
カヅキからも困った感じの声。
フローラも惨状を見てしまった。
領主の娘とはいえ、刺激が強い光景だ。
エルは何の反応もなし。
晶達の反応は二つに分かれた。
どちらが正解という事もないが、解りやすい。
四人程度しか並べそうにない通路。
そこに倒れている兵士達を見たからだ。
血だまりを作ってない者を探す方が難しい……。
嫌そうな顔をした晶であったが、これをやったであろう者達には何も言わなかった。
表情も直ぐに元へ戻った。
自分のやり方や都合を押し付ける気はあまりないのだろう。
だが気分の良いものではなかったようで……。
「ここは任せるぞ。もうちょいここを頼む」
ノック達の返事を待つことなく武器庫へ姿を消す晶。
コス家にダメージを与えるためか、いただける物はいただくの精神かは判らない。
カヅキが大活躍。
剣、槍、弓、矢、盾、鎧。
武器庫に収まっていた物がすっからかんになった。
スケルトンなどを造りだせる晶なら、有効活用できるであろう。
晶とカヅキが嬉々として武器防具を消していった。
それを背後から見ていたエルが呆然としている。
何に驚いているのか……格納できる速さ?収納量?魔法が掛っている代物を仕舞ったから?
理由は色々ありそうだ。
マンガであれば、目のハイライトが消えているシーンかも知れない。
晶は常識外れ、エルはそう思っているに違いない。
晶達のやることに慣れる日が来るのだろうか?
それもどうかと思うが。
(当主の部屋近くに宝物庫もありますよー)
(おっけー。また頼むね)
(あいあいー)
武器庫を空にして気分が良さそうなカヅキ。
更にいただくつもりらしい。
晶も同類らしく、軽く了承。
カヅキ、ご機嫌である。
お宝、光りもの……大好物だと思われる。
その辺りが天職をトレジャーハンターにしたのかも……。
「来た奴らは全部やったぜー!」
「スッキリしたー!!」
「次は広いとこでやりたいぜっ!」
「ノック様、まだ人の気配はあります」
「よしよし、よーし!」
(この者達、中々の腕前じゃ)
鉄腕兄弟がヤンキー座りをして晶に言ってくる。
目を合わせたくない奴らだ。
血塗れのハンマーがそれを加速させている。
カヅキではないが、鉄腕兄弟もご機嫌だ。
牢屋暮らしをさせられていた鬱憤を晴らせたのだろう。
ただ顔に返り血を付けているので危ない人に見える。
ノックもご機嫌。
仁王立ちをしている。
だが、まだ暴れたりない様子。
ノックの奴隷である獣人、シーベルが戦う相手がまだいると伝える。
更に嬉しそうな顔になるノック。
決してイケメンではないが笑うと愛嬌がある。
まるで子供だが。
黒鉄の鎧、デスアーマーになっているタケマツがむさい男達を褒める。
タケマツが褒めるのだから、強いと言える。
少なくとも平均は超えているはずである。
「次行くぞ、つぎー!」
(宝物庫ですー!)
(次はそっちなのじゃな)
「「おう!」」
「走るか?」
「走りますか?」
「楽しみにし過ぎだろう……」
「ガッハッハ!」
晶は彼らを牢屋から助けて以降、彼らのリーダーっぽくなっている。
移動を伝える。
鉄腕兄弟は息の合った返事。
ノックとシーベルも息が合っている。
行動原理が同じという意味で。
暴れるために次の場所へ走ろうと言っている。
それに対し晶が素直な感想を漏らす。
ノックは嬉しそうに大笑い。
館の構造を偵察で知っているタケマツが先導。
姿は見えないが館の中に騒めきが残っている。
兵士はまだいるようだ。
「アキラ、様。残り五十名ほど」
「五十名……兵士か」
「ええ」
晶の隣を歩くエルが晶に館の状況を伝えている。
先ほどの通路に倒れていた兵士達は二十名ほど。
寝ていた者達にも召集がかかったのであろう。
結構な人数だ。
「結構いるじゃねぇか!」
「やりましたね、ノック様」
「呼び捨てでいいっつってんだろ?」
「しかし奴隷ですから……」
「かんけーねーよ」
晶達の後ろを歩くノック。
ノック達にもエルの報告が聞こえたようだ。
人数に喜ぶノック。
喜ぶ理由を理解しているシーベル。
ノックは名前に様が付いている事を嫌がっている様子。
呼び捨てでいいらしい。
しかし頑なに固辞されていたり。
「奴隷、奴隷と言えば晶、隷属の首輪をしてなかったか?」
「お、おぉ!そういや、なくなってんな!どうやったんだ?」
伝言ゲームみたいに前の話が後ろに流れていく。
シーベルが言った奴隷という言葉に反応したワイザー。
今更か。
まぁ、合流した時は戦闘中だったから仕方ないかも。
バドが晶に問いかけている。
「ちょっとした奇跡が使えるんだよ」
(私がですけどねー)
(カヅキの力は本当に便利じゃな)
(えへへー)
「奇跡……」
晶は説明する気がないようで、適当な返事。
タケマツに褒められて嬉しそうに照れているカヅキ。
エルは胡散臭そうなものを見る目だ。
「ほー」
「はー」
「アキラ!すげーな!こいつのも外してやってくれよ!」
「……」
鉄腕兄弟は半分くらいは疑っていそう。
だが隷属の首輪が外れているのは事実。
こちらも適当な相槌。
ノックほど単純ではなさそう。
いやノックがおかしいのだろう。
一番単純そうな男、ノック。
晶を褒めてシーベルを指差している。
シーベルは黙ったままだ。
だが、目は晶を凝視している。
期待しているのかも知れない。
「おー、いいぜ」
(出番ー)
「アキラ」
「あっさりだな」
「軽っ!」
「さすがアキラだぜ!」
「いいのでしょうか……」
ノックの依頼を軽く了承する晶。
出番とあって嬉しそうなカヅキ。
役に立てる事が嬉しいのだろう。
健気な子である。
フローラは晶の名前を呼んだ。
嬉しそう。
首輪を着けられていたのはフローラも同じだった。
気持ちが解るのだろう。
この子も優しい子だ。
鉄腕兄弟は晶の返事に驚いている。
何の条件もないからかも知れない。
うんうんと頷いて満足そうなノック。
ノックの中で晶はどういう存在なのか……気になります。
首輪を着けられている張本人シーベルは戸惑っている。
状況についていけていなそう。
展開が早すぎる。
「おりゃー」
(終の手札)
気合の入っていない掛け声。
晶は右手でシーベルの首輪に触っている。
左手はローブのポケットに突っ込まれている。
そしてカヅキの力が発揮される。
みなの視線が集中している中、シーベルの首輪が消えた。
カードは晶のポケットの中。
単に首輪が消えたように見えたであろう。
「マジか……」
「……すげーな」
「おー!なくなった!なくなったぜ!!」
「なく、なった……」
「やっぱりおかしい……」
「アキラ!凄いね!」
(カヅキ凄い)
(うむ)
(やっぱりー?えへへー)
みなが目を見開いて驚いている。
驚き方は色々であったが。
晶とタケマツは誰の力なのか解っているのでカヅキを褒める。
褒められてご満悦のカヅキ。
(ここの階段を上がった所に当主の部屋と宝物庫があるのじゃ)
(人の気配は……なさそうだ。俺だけで行ってくるね)
(うむ)
(行きましょー!)
「上に行ってくる。用が終わったら戻ってくるから退路の確保よろしく!」
(任せておくのじゃ)
「「おう!」」
「いいぜー!」
「お任せを!」
「エルはフローラを守れ」
「ええ」
「アキラ、早く戻ってね。エル、よろしく」
「ええ」
フローラの守りを晶が頼んでいる。
脳筋組も留守番。
ここに兵士達が来たら、また惨状になること請け合い。
これ以上フローラの心に傷がつかない事を祈るばかり。
逃げない晶。
誘拐、拷問、それらの仕返しのつもりだろうか?金目の物はキッチリいただく模様。
その選択が正しいのかは判らない……。




