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(戻りましたー)

(カヅキ、ありがとう)


(この上ですよー。フローラさんの部屋の前に二人の兵士が立ってましたー)


(さすがに見張りはいるか……)

(ですねー。後、私達ラッキーみたいですよ?)

(ラッキー?)

(はい。隣の国なんですが、この国との境近くで強い魔族が出て暴れているらしいです。兵士達が話していましたー)

(ほー)

(コス家からも警戒の兵が出て行ったようですー)

(おぉ!それはラッキー)



 晶とエルはコス家の屋敷内を移動している。

通路に明かりの魔導具はあるが、それほど多くは配置されていない。

深夜なので人の動きも感じられない。

偵察にいったカヅキからの報告。

ここの所、手薄になっていた模様。

ラッキーである。

さすがにフローラの部屋には見張りはいるようだが。



「エル、この上の部屋に救うべき人がいる。見張りは二人」


「上、そして二人の見張り」



 音を立てずに階段を上る。

暗いが晶もエルにも問題はない。

夜は晶達の味方だ。



「アキラ、様、ちょっと待って」


「ん?どした?」



 階段を上り切る辺りでエルが前に出て晶を止めた。



「階段上にある明かりの魔導具……たぶん警報装置でもありそう」


「マジか……良く判ったな。大きいからか?」


「大きいっての関係なくはないけど……魔力源が二か所」


「お、どれどれ……本当だ」


「アキラ様も判るのだな」


「魔法は使えないけどな。それで解除は出来るのか?」


「解除は出来ない。力技で突破……わらわの後を」



 装飾の施された明かり。

その魔導具が警報装置でもあるという。

確かに大き目だ。

エルに言われて晶も魔眼で魔力の流れを視た。

魔力源……おそらく魔石が二つ使われている。

晶もそれに気付いた。

このままでは警報装置が反応してしまう。

晶がエルに警報装置の解除が出来るか聞いている。

期待している目だ。


 まぁ、出来ない模様。

斥候系の職か魔導具関係の生産職にでも就いていなければ無理だろう。

因みにエルは無職。

魔族はそういうモノらしい。


 エルに解除は出来ないが突破は出来るらしい。

付いて来いと言っている。



 エルが階段を蹴り、飛び上がる。

飛び上がった先は明かりの魔導具が付いている壁の反対側。

しかも天井と壁を使い張り付いている。

手、足、背中を上手く使っている。

器用な事が出来るものだ。

まるで蜘蛛。


 警報装置らしき物は反応していない。



「わらわに向かって飛んで」


「お、おう」



 エルが手招きする。

張り付いているエルに驚いているのか、晶がどもる。


 晶も階段を蹴った。

石造りの階段は壊れない。

晶も力加減が上手くなっている。

そしてエルの伸ばした手を掴んだ。


 エルは片手で晶を支えている。

十分怪力だ。

絵面でいえばおかしすぎるが……。


 晶の勢いを殺して暗い通路へ晶を降ろした。

エルが凄いのか晶が凄いのか、まるで音を立てていない。

晶に続き、エルも通路へ降りた。

警報装置にも範囲はある模様。

警報は鳴っていない。



(うわ、あっちに兵士が見えるじゃん)

(ここは明かりの影)

(上手く見えない位置って事か……ふぅ)



 晶が小声でエルと話す。

通路の先にカヅキが報告した兵士が立っていた。

だが晶達には気づいていない。

立ったままで、晶に向かって動いたりはしていない。



(わらわが天上伝いに行く)


(頼む)



 エルが提案してくる。

晶より隠密行動には慣れていそう。

力が強いのに体が軽い、エルは人間とは違う動きが出来る。

それが大きいのだろう。


 エルは再び天井と壁を使い兵士達へ向かっていく。

晶も黙って見上げている。


 固唾を飲んで見守っている晶。

そんな晶を他所に、エルはあっさりと奇襲。

兵士二人が崩れ落ちた。

エルが晶を手招きした。



(エル、やりますねー)

(ね)



 カヅキとエルの手腕を褒めつつ通路を歩くでのあった。


 エルの足元に倒れている兵士達を一瞥する晶。

血の匂いはしない。

たぶん殺してはいない。

晶がホッとしてるように見える。



「上手いもんだ」


「これくらいは出来る」



 晶がエルを褒めると、エルが胸を張って誇らしげにする。

黒い貫頭衣を押し上げる胸。

晶が凝視していたり。

暗いが魔眼には関係ない。



(ありがたやー)

(まったく!男ってのはー)



 晶は体の前で両手を組む。

色々と感謝の言葉を心の中で唱えている。

少し言葉が漏れていたりして。

カヅキからツッコミをいただいてもいた。



「さてと……」



 しゃがみ込んで倒れた兵士の体をまさぐる晶。

ええ、エロイ話ではありません。



「持ってた。これで開くかな」



 フローラのいる部屋への扉には鍵が掛っていた。

それを開けるためのカギを探していた模様。

扉の前にいる者が鍵を持っているのもどうかと思うが、いざという時に部屋へ入る必要があったのだろう。

ちゃんと鍵を持っていた。


 ガチャリと音を立てる鍵穴。

手前に扉を引く晶。

問題無く開いた。

手前に開くという事は籠城しかねない相手を閉じ込めるための部屋だと思われる。

扉の所に机やらベッドやらを動かしたら扉が開かなくなるからだ。



「寝ているだろうなぁ」

(遅いですしねー)


「動きはなさそう」



 晶とエルが部屋に入る。

部屋の中には明かりがない。

深夜なので当然だろう。


 暗いが問題なく視える晶達は真っ直ぐにフローラへ向かっている。

フローラの魔力目掛けて歩いているのだろう。


 ちゃんと誰の魔力か判別出来ている。

なぜならフローラ以外にもう一人いるからだ。

おそらくフローラ付きのメイド。

フローラとは違うベッドで寝ている。



(エルに頼んだ方がマシかとー)


(そう、そうだよな。俺が起こすよりは色々といいよな)



 フローラのベッドの横に立つ晶とエル。

立ったままの晶を見て、カヅキが晶の戸惑いを見切っている。

寝ている女性への対応についてだろう。

明らかに安心した顔になる晶。



「エル、優しく起こしてあげて」


「任せて」



 晶に頼まれてフローラの枕元へ移動するエル。


 エルがフローラの口に手を当てた。

晶がエルの顔を見る。

何のマネだ?といった感じ。


 それに反応しないエル。



(魔法みたいですねー)


(お、魔力の流れがあるね)



 エルからフローラへ魔力線が伸びている。

魔法使いか魔力が視える者にしか判らないだろうが。

フローラへ何か魔法を使った模様。


 フローラがビクリと体を震わせた。

そして手を目に当てて擦りだす。

魔法が効いているみたい。

ちゃんとフローラが起きた。


 目を擦った後に口元へ手を持って行っている。

そりゃ気付くだろう。

フローラが目を見開いた。

その視線の先はエル。


 見知らぬ者が寝ているフローラの口を手で押さえているのだ、驚くだろう。



「アキラだ、フローラおはよう。夜だけどなー」



 その様子を見ていた晶が声をかける。

のほほんとした声。

ちゃんと名乗ってもいる。



「もう一人はエル。俺の……従者だ」


「わらわはエル」



 アキラがエルを紹介する。

自分との関係を上手く説明出来ないのか一瞬詰まったのはご愛嬌。

エルが自分でも名乗った。

そしてゆっくりとフローラの口許から手を離した。

驚いて叫ばれたりしないとの判断だろう。



「アキラ……来てくれたんだな」


「そりゃ、来るさ」



 晶を潤んだ目で見るフローラ。

しっかり者のフローラだがまだ成人前。

まだ子供と言っていい。

無理もない。



「アキラ、アキラァ!」



 フローラが晶に抱き付く。

そして晶の胸に顔を押し当てる。

晶のローブが湿っていくが晶は何も言わない。

黙ってフローラを抱きしめる。


 やれば出来る子、晶。



「アキラ、様。時間がない」


「……おう」


「ありがとう、アキラ」



 エルが空気を読まずに告げる。

まぁ、言葉は正しいのだが。

名残惜しそうに体を離す晶。

晶の人生でも珍しい体験であったと思われる。

少し目の赤いフローラだが、明るい声になっている。

切り替えが早い。

もっと子供らしくしていても誰も怒るまいに。

特にここでは……。



(仕事をしますかねー)



 そこへカヅキからの念話。

からかいの言葉ではなかった。

フローラの心細さが理解出来るのだろう。

湖をずっと一人で眺めて過ごしていたからかも知れない。



(カヅキ、お願い)



 カヅキの声に返事をする晶。

打ち合わせでもあったのか、少ないやり取り。

しかしお互い何の事か解っていそう。

晶とカヅキの関係も上手くいっている。



終の手札(ラストカード)


(ついでにアキラのもー終の手札(ラストカード)


(ついでかよー)

(言葉の綾ですー)



 カヅキの仕事。

それはカード化。

フローラの首が軽くなる。

そして晶の首も。


 晶の手にカードがある。



「あ、あれ?」


「ア、アキラ?魔導具をどこへ……おかしい!おかしいではないか!!」


「落ち着け、そして静かに」


「……はい」



 急に隷属の首輪レプリカが無くなり違和感を覚えたフローラ。

首を手で触り、確認している。

暗い中でも問題なく視えるエルも、起こった事に驚いている。

深夜に響く声。

エルが晶に窘められている。



「隷属の首輪を外した」


「そ、それはわかる」

「はい」


「フローラごめんな。もっと早く外せたんだけど……こんな事をする奴らの正体を掴みたくて遅くなった」


「……怖かった。でも助けてくれたから、よし!」


「ごめんな。そしてありがとう」



「説明」



 晶とフローラが見つめ合って、良い雰囲気。

だが、またも空気を読まないエル。

晶に詳しい事情を求めている。

隷属の首輪に付いての話だろう。



「仕舞い込んだ」


「それがおかしいのだ!っと、魔力がある物はアイテムボックスには入れられないはず」



 晶があっさり言う。

また声を大きくしそうなエル。

途中で気が付いたようで、ちゃんと自制していた。


 アイテムボックスには魔導具の類は入らない仕様らしい。



「んー、俺のは特別なんじゃないかなぁ」

(ですですー。って違うモノなんですけどねー)


「……」


「ボクは助けてもらえて十分だ」



 晶の説明を聞いて納得のいってなさそうなエル。

フローラは追及するつもりはないようだ。

やはりしっかり者である。



「そうだよなー。で、フローラに聞きたい事だあるんだが」


「何だい?」



 話をぶった切る晶。

これ以上エルに説明をするつもりはなさそう。



「そっちのメイドは信用出来るのか?出来ないなら起こさないで行こうかと思うんだけど……」


「ポーラに怪しい所はなかったと思うが……ずっと付いていてくれたし……」


「そっか」


「疑っているのかい?」


「あの給仕達が選んだし、定員オーバーでも降ろさなかったのがなぁ」


「……なるほどね」


「ここは置いて行こう。様子を見て信用出来たら迎えに来よう」


「うん。それでお願い」



 晶の質問はフローラ付きのメイドについてであった。

これからの行動、その邪魔になるかもと晶は思っているらしい。

逃げるせよ戦うにせよ、情報が漏れるのはありがたくない。

とりあえず置いて行くと晶が提案。

カヅキかタケマツに偵察してもらうのだろう。

フローラもそれを呑んだ。




(アキラ、こっちは戦いになったぞい)


(戦いっすか……)

(脳筋さんが一杯でしたもんねー)

(うむ)

(タケさんも入っているんじゃ……)

(オ、アラタナテキジャ)



 一応話がまとまった所にタケマツからの念話が入る。

ナイスタイミングである。

ナイスなのはタイミングだけで話の内容は晶にとって嬉しくないものであったが。

フローラを抱えているので今、戦うのは避けたかったのだろう。

晶とカヅキからツッコミが入ると、念話が切れた。



「他の仲間達が戦闘に入ったっぽい」


「確かに屋敷内がザワザワしてる」


「聞こえない……」



 晶がフローラとエルにタケマツからの話を伝える。

エルには何かが聞こえているようだ。

フローラには聞こえていない模様。

さすがヴァンパイアロードと褒める所だろうか。



「仕方ない。やりますかね」


「任せて」


「ボクも魔法で戦うよ」


「フローラ、魔力を使い切らないように!」


「うん!」



 晶はやれやれといった感じである。

エルも戦いは望むところらしい。

ヤル気になっている。

フローラも。

タマギの王族、その女性陣はみな魔法が使えるらしい。

フローラもその例に漏れず魔法で戦える。

誘拐された鬱憤があるのだろう。

エルと同じくヤル気満々。

晶もその様子を見て止められないと思ったようだ。

戦うなと言われなかったのが嬉しいのだろう、喜ぶフローラ。



 メイドを残して部屋を出る晶一行であった。

フローラの顔はすっかり明るくなっている。



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