3-11
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(誘拐をしたり人を殴ったりするのに、空を飛んで喜んだりするんですねぇ……)
(そこに関係性はないと言う事じゃろう)
(犯罪者でも景色や体験に感動する。何だか違和感)
晶達はタマギ島をゼロに乗って出発した。
最初は飛び立った浜辺を気にしていた給仕達であったが、追手の様子がない事を確認すると空と海、風に喜んだ。
海に巨大な魚影を見かけては大声を上げ、水平線を見て騒いでいた。
晶が初めてゼロに乗った時と違い向かい風は強くなかった。
ゼロが成長した結果である。
ゼロは空を飛ぶのに魔法を使っていたのだ。
本人にそんなつもりはなかったらしいが、ビクトリアなど魔法使い達と話す機会を経て理解した。
そして風の魔法は空を飛ぶだけでなく防壁を張り向かい風を抑える事も出来るようになった。
攻撃魔法も威力はまだまだだが使える。
着々と強くなっているのであった。
「こんな時ですけど……空は凄い」
「お嬢様!凄いですよね!!」
空を飛ぶのに喜んでいるのは誘拐犯達だけではなかった。
隷属の首輪レプリカを付けられたフローラも流れる景色を見て喜んでいる。
それ以上にフローラ付きになったメイドが興奮していたり。
フローラは南大陸を訪れる時にゼロに乗っている。
そう、経験者である。
それでも喜んでいる。
年相応の笑顔だ。
今の境遇はそれどころではないのだけれども……。
「夜、夜はどうするのだ?島にでも降りるのか?」
「あ、そうか、夜……」
短剣給仕が晶に問いかけた。
その疑問を聞いたケインも、その問題に気付いたようで晶を見た。
晶はゼロの背中、その上で一番前に座っている。
警戒されている証拠だろう。
晶の後ろにメイド。
ついでフローラ。
その後ろに短剣給仕、ケインの順で乗っている。
未だにフローラは短剣を向けられている。
まぁ、ゼロの上は安定していないので首元への短剣ではなくなってはいる。
何かの拍子で首を切らないとも限らないからだろう。
「こちらの方へ飛んだことがないんだ。島があれば降りたい所だけれど……」
晶が短剣給仕へ言葉を返す。
晶は誘拐犯達からの指示によってゼロの進路を決めている。
彼らも海で必須の二つで一つ、相手の方向が解る魔法具を使っていた。
晶は中央大陸では迷宮都市コドにしか行っていない。
迷宮都市コドの北にキーナ商業国の首都コナモがあるらしい。
今の進路はもっと西の方だ。
晶が飛んだ事のない進路である。
「そうか……見通しが良いから見つけたら早めに降りるか……」
「そうだな!そうしようぜ」
「わかった。よさげな島があったら降りよう」
この一行で一番上の立場であろう短剣給仕が提案してくる。
二番目であろうケインもそれに同意した。
ゼロへの騎乗人数を超過しているのだ。
海へ叩き落とされるのはごめんなのだろう。
晶も素直に提案に乗る。
▼
小さな無人島へ降りた晶達。
それも昨夜の事だ。
砂浜、岩場、少々の植物だけの島であった。
食料になりそうな物は見当たらなかった。
ケインが持ってきていた乾パンの様な物で空腹を凌いだ。
水筒の水はそれなりにあったので、喉の渇きには悩まされなかった。
フローラのトイレなどでもめたりはしたが逃げ場がないという事でメイドが付いて行っただけだった。
フローラが離れた事でカヅキとタケマツが給仕達を叩きのめさないのかと言っていたりしたが、晶は動かなかった。
隷属の首輪レプリカの事はあるだろうが、何か考えがあるらしかった。
現在地は中央大陸である。
「お、おい!ワイバーンが行っちまったぞ!??」
「俺は命令出来ないんだ。せいぜいお願いをする程度」
「そうなのか」
「ああ。だからワイバーンは腹は減れば食べに行くし森で寝たりする」
「……また空に行くときはどうするんだ?」
「何となくいる方向は判る。俺が行くしかない」
「結構面倒なのだな」
「だな」
陸地に降りたゼロ。
搭乗者が全て降りた所でゼロが再び空へ。
こっそりぴよこも連れて行かせた。
可愛いぴよこは狙われる。
親馬鹿な晶はそう思っている。
今のうちに隠しておこうという考え。
ゼロが飛び立ったのでケインが慌てる。
晶は淡々とそれに答えている。
短剣給仕がフローラの首元へ短剣を向けながら、またゼロに乗る時の事を聞いている。
彼らはもっと便利にゼロを使えると思っていたようだ。
(まぁ、嘘ですけどねー)
(うむ)
(ゼロちゃんを便利に使われないための方便と見ました!)
(奴らがゼロを使いたいと思った時に晶が動けるという意味もあるんじゃろう?)
(う!読まれてる。さすがっす)
(えへへー)
(理解もするじゃろう)
(付き合いも長くなってきましたしね)
短剣給仕達の様子を見てカヅキがサラッと言う。
タケマツも同意。
二人が晶の意図を読んでいる。
そしてそれは正解だった模様。
晶の表情はともかく、脳内会議は平和であった。
晶もこんな状況で落ち着いていられるのはカヅキとタケマツの存在が大きいだろう。
一人ではない。
余裕が違う。
「移動しないのか?」
「ああ。ここで待機だ」
「そういう事だ」
晶の問いに待機と答える短剣給仕。
ケインも理解している行動らしい。
彼らはフローラを近くに会った倒木へ座らせて、自身も座り込んだ。
メイドもフローラの隣へ座っている。
晶は地面に座らせられた。
警戒されたままだ。
晶も連れて行く……晶の価値を知っているからの行動。
当然、晶の力に付いても知っているのだろう。
▼
夜になって焚火だけが辺りを照らしている。
フローラとメイドは眠りについた。
給仕達は無人島でもそうであったが寝ていない。
そういう訓練を受けている者達なのかも知れない。
晶からも目を離さない。
短剣も出しっぱなしだ。
だが警戒は魔物に対してという理由もあった。
日のある時にはぐれゴブリンと角の生えた兎達に襲われたからだ。
その時に短剣給仕達が動かなかった。
魔物達を倒したのは晶。
晶の力を見たいという理由があったのだろう。
晶の背後から戦闘をジッと見ていた。
手加減をしつつ素手でゴブリンを殴り倒したし、兎の時は足で蹴った。
力の事をどこまで知られているか判らない。
だからカードから武器を取り出したりはしなかった。
武器を上手く使えないというのもあっただろうけども……。
無言の空間。
時々、焚火が弾ける音程度だ。
晶が情報収集を兼ねて話しかけようとした所に人の気配。
そして複数の足音。
馬車も来ているようだ。
「来たか」
「ふぅ……遅いぜ」
(方向はわかるとして連絡もなしにどうやって来たのでしょう……)
(そうじゃな、連絡をしていた様子はなかったのぅ)
(何かあるんだろうね)
(そうなんでしょうねー)
(うむ)
短剣給仕とケインはそう言って立ち上がった。
どうやら彼らがここで待っていた者達の登場らしい。
晶達が新たな者へ疑問を持つ。
情報が足りない。
常識も足りない。
タケマツが湖の底にいたのは惜しい事だ。
常識も変わっていく。
晶達に近づいてくる足音。
音が大きくなって来る。
気配も濃厚になる。
殺気はない。
(馬上の者が……六名かな)
(二頭立ての馬車に従者が三名じゃな)
(少し離れた所に斥候らしき隠れた者が四名いますねー)
晶達が相手を探る。
魔力を視れる魔眼の力は便利だ。
完全に隠蔽出来ない魔力、見逃したりはしない。
「待たせたな」
少し上の方から男の声が降ってくる。
馬の上だ。
若くはなさそうな声。
偉そうである。
さすがの晶も顔を引き締めている。
晶はともかくフローラの事がある。
緊張もするだろう。
そういう立場だ。
当の本人はすっかり夢の中だけれども……結構図太いお嬢さんらしい。




