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「もういないかな……」

(倒れている人は全てこっちへ連れて来たかとー)

(亡くなっていた者も多かったのぅ……)



 晶がレベッカ達、救護隊の近くで戦場を視ている。

もちろん包帯眼帯なので魔眼で魔力を追っている。

タケマツが言っているように既に亡くなっていた冒険者もいた。

亡くなっている者からは魔力が消えていく。

そういう者は晶の魔眼で視えなくなっていく。

カヅキやタケマツが見て晶に教えて亡骸を回収していた。

亡骸を蹂躙させたくないと晶が言ったからだ。



「ああ。俺らも参戦か?」


「行くか」



 晶の隣にいたイェンは未だ戦っている地竜の方を見ている。

イェンの戦闘意欲が高いのを察した晶も行くつもりらしい。

『紅蓮竜』のリリィと仲間達は生存者を後方へ搬送し、既に地竜戦へ入っていた。

やはり悔しいのだろう。

晶達と共に地竜を倒したが、自分達で倒したという感覚が薄いに違いない。

実際、最後の方は晶の一人舞台であった。




「お、おい!あれ!!」


「ん?どうした?なにっ!?」

「マジか……」

「何でだ?間違いなく死んでたぞ!?」

「う、動いてるぞ!」



 晶とイェンが、さぁ行こうか!という所でレベッカ達に治癒してもらった冒険者達が騒ぎ出した。

その冒険者達が示す方向には……先に倒した地竜。

地竜が動いていた。

晶が倒した地竜だ。

黒装束のパーティメンバーが死んでいたと断言している。

自分達の成果に関わるから、そこはしっかり確認したのだろう。



「あれ?何で動いてんだ!?」

「アキラが倒した後で俺も確認したぞ!?」


(確かに魔力が消えていったはずじゃが……)

(脳をやられて動くとかおかしいです)



 晶達も倒した地竜が動き出したのを見た。

みなが地竜を倒したと認識していた。

おかしい。



(ん?アキラ良く見てみぃ)



 タケマツが何かに気付いた。

そして晶に地竜を視ろと言っている。



「んー……あ、あれってアンデッド!?」

(確かに魔力が復活して瘴気が混じっていますねぇ)

(アキラがやった訳ではないのじゃな?)

(俺じゃないです)


「アンデッドなのか?」



 晶が動き出した地竜をアンデッドだという。

カヅキも捕捉。

晶の天職、ネクロマンサーの力を使った訳でない模様。


 晶の言葉を聞き、跪いて治癒をしていたレベッカが反応する。



「たぶん」


「ふむ……」


(倒した魔物は燃やしたりせんとアンデッドになることはあるのぅ……だが……)

(こんな短時間でなるようなモノではないのですね?)

(うむ)

(変ですねぇ……)



 晶が断言せずにレベッカへ答えている。

レベッカが動き出した地竜を見て眉を顰めている。

やはりアンデッドは嫌われるのだろうか。

いや、アンデッドなのかと疑っているのかも。

少なくとも見た目では判断できそうもない。



「あれがこっちに参戦してきたら不味いぜ?アキラ」


「なら動ける俺達で行くか」


「おう」



 イェンは落ち着きを取り戻していた。

死んだはずの地竜が動き出して驚いてはいたのに。

結局は戦うか戦わないかという問題だからかも知れない。

晶もイェンが言わんとしている事を正しく理解。

体を動かしだした。

準備運動か。

イェンも剣と盾を確認。


 二人は動き出した地竜へ足を向けた。



「私も行こう」


「ここはいいんですか?」


「ああ、助けられそうな者は助けた。後はクィン達で大丈夫だろう」

「はい。任せてください」

「任せるのです。後は少しですー」

「レベッカさん、無理しないでね」


「うむ」



 レベッカも参戦宣言。

晶が振り返って救護はもういいのかと聞く。

大丈夫らしい。

クィン、マリー、オルは残り少ない怪我人を治癒しながらレベッカに声をかけている。

確かに残っている者は、既に亡くなっている者くらいだ。


 戦線に復帰していった冒険者もいた。

装備がボロボロで動きたくても動けない者も。


 レベッカは兜を被り、面貌を上げた。

金属の盾を持ち、腰から剣を抜いた。

立派な騎士に見える。

白銀の騎士。



(カッコイイ……)

(凛々しいのぅ)


「様になるわねー」

「レベッカさん、カッコイイ!」

「イカス……」



 レベッカの仲間達からあがる声は称賛のみ。

実際カッコイイ。

晶とイェンはまるで従者である。

引き立て役か。



「行こう」


「行きましょうか」

「行こう」



 レベッカが晶達に声をかける。

レベッカを先頭に動き出すのであった。




「見た目的には地竜そのままだね」


「確かに……」


「レベッカさんは聖騎士でしたよね?職業的にアンデッドを見極められたりは?」


「出来るぞ。やって見よう」


「わかるのか……」



 晶達は走りながら話している。

晶がアンデッドとは言ったのものの、外見からは判らない。

レベッカとイェンがアンデッドかどうか疑問に思ってそう。

そこへ晶が聖騎士だというレベッカに質問。

魔物がアンデッドかどうか判るらしい。

そう聞いて焦っていそうな晶。

ネクロマンサー的にはこれからの行動に関わる情報だ。

ゼロを見てアンデッドだと判るようでは困るのだろう。

一応、アレス達にはテイムした的な事で誤魔化していた。

実際テイマーではなくても魔物の子供や卵から懐かせた例はあるらしく疑問を持たれなかった。




「ちょっと待ってくれ」



 レベッカが足を止めた。



「えっと……」


「……」



 晶の戸惑いに答えないレベッカ。

何か集中している。



(魔力操作しとるな)

(してますね。これから魔法、じゃない奇跡を起こすのですかね?)

(あ、ほんとだ)



 晶が脳内会議をしていると、レベッカが動いた。

地竜の側へ走る。

晶も慌ててそれを追った。

イェンも盾を構えて進む。



「ホーリーヒール!!」



 レベッカ言葉と同時に右手から白い光が放たれる。

白い尾を引いて光の玉が地竜へ向かう。

地竜は回避行動に移ろうとしたが遅い。

レベッカの放った光は地竜へ当たる。



「ギョガァァァッ!」



 腹に響く声。

地竜が悲鳴らしき声をあげた。

身を捩らせ、尻尾を暴れさせている。

何か苦しそう。



「ふむ。これが効くならアンデッドだな」


「ほー」


「そうなんだ」


「ああ。今のは遠距離神聖回復の奇跡だ。アンデッドにこの回復はダメージになる」


「ほほー」


(カッコイイ……)

(見て判る方法ではなかったようじゃの)

(あー、ああ!そういう事か!助かった)

(うむ。直ぐにゼロの正体が見破られたりはせんじゃろう)

(ですよね!)



 レベッカが放った白い光の玉はアンデッドに効く奇跡だった模様。

タケマツの言葉に安堵する晶。

見ただけで判る方法でなくて良かったと喜んでいる。

これなら万が一ゼロを見られても大丈夫だろう。



「これならば……」


「何かいい手がありますか?」


「うむ。私一人では厳しいだろうがクィン達の力も借りる。それで浄化出来るだろう」


「「おぉ!」」



 レベッカ、いや回復が出来る者達にはアンデッドに対する効果的な攻撃がある模様。

一人では無理らしいが複数人なら出来るらしい。

晶とイェンが感心の声をあげる。



「ちょっと下がって話してくる。足止めを頼む」


「わかった」

「了解」



 レベッカがこの場を晶とイェンに任せて後方へさがっていく。

晶とイェンはもう一体の地竜へアンデッド地竜を近づけまいと動く。

イェンは安堵の表情。

地竜、アンデッド地竜へ効果的な攻撃が出来ないからだろう。

倒せではなく、足止めだけなら問題ない。

そう考えていそう。



「イェン、尻尾には気を付けろよ」


「おう。アキラはどうするんだ?」


「俺はまた背中に乗ってアイツの気を引くさ」


「なるほど。俺はそれで地竜の反応次第だな。出来れば突っ込みたくない」


「無理する場面じゃなさそうだしな」


「そういう事。行こう」


「あいよ」



 晶とイェンは言葉を交わし走る。



(アキラさん、支配下に置けないんですか?アンデッドですよ?)

(あー、考えたけど……その後どうするか、いい案が浮かばなかった)

(まぁ、それはそうですね)

(引き連れて歩く訳にはいかんしな)

(アキラさんがネクロマンサーだとばれずに、この場を凌げそうにないですねぇ)

(だろ?)

(ふむ……思いつかんなぁ)

(上手く逃がす方法も理由も思いつきません)



 カヅキからの指摘、質問。

アンデッド地竜を支配下におければ、確かに強力な戦力になりそうである。

当然考える展開。

晶も考えたようだ。

しかし、ネクロマンサーだとばらす気のない晶は断念した模様。

それも無理はない。




「とりゃっ!」



 晶はアンデッド地竜の胴体を足場に背中へ駆けのぼる。

すかさず飛んでくると思われた石礫の魔法。

しかし飛んでこなかった。



(あれ?魔法がきませんねー)

(ふむ)



「あ、でも脳は既に潰れているんだった」


(考えてなかったんですね)

(こうなると晶の攻撃力でも効果的な攻撃は出来んのぅ……)



 晶、また頭の方へ移動して同じ攻撃をしようとしていた。

背中に登ってから気が付いたらしい。

カヅキが呆れている。

タケマツが言うように既に死んでいる相手だ、効果的な攻撃にはなるまい。

あるとすれば晶がアンデッドをネクロマンサーの力で昇天させる事だ。

それは出来る。

だが晶は聖騎士ではないので浄化できるのはおかしい。

ネクロマンサーだとは言えない。

ソロであれば……。



「まぁ、足は止まったからいいか」



 そう言いながらアンデッド地竜の背中にへばりつく晶。

アンデッド地竜が尻尾を振りまくり、胴体も左右へ動かしていた。

その代わりに前には進んでいない。

イェンはその様子を見てアンデッド地竜の前方で待機している。




「待たせた!」


「お待たせしました」

「お待たせなの!」

「任せて」



 アンデッド地竜の背中にいる晶へ待望の言葉が届いた。

レベッカ達である。



「お、俺はこのままここにいた方がいい!?」



 晶が背中にへばりつきながら叫ぶ。



「うむ。そうしていてくれればこっちへはくるまい」


「アキラさんに影響はないでしょう」

「せいぜい回復するだけなの」

「ちょっと我慢」



 レベッカ達が晶の叫びに答えてくれる。

そして集中しだした。

また奇跡が来るのだろう。



(ネクロマンサーだけど大丈夫なのかしら……)

(アキラ自身はアンデッドではないから大丈夫じゃろ)

(その言葉信じますよぉ!)




「「「「ホーリーヒール!!」」」」



 レベッカ達の周囲へ広がる白い光。

レベッカ一人の時とは明らかに光量が違う。

干渉しあった白い光の玉は合体した。

巨大な白い光の玉。

地竜の胴体にも匹敵するほど大きい。

アンデッド地竜は知能が低いのか危機察知能力が低いのか、アキラを背中から落とそうともがいている。


 そんなアンデッド地竜へ当たる巨大な光の玉。

晶も光に包まれる。



「ギッ!……」



 叫ぼうとして途絶える声。



 晶、まさしく引き立て役。

使命は全うした。

ネクロマンサー自体は浄化されたりしないとも解った。



 それとほぼ同時に響き渡る悲鳴。

腹に響く大音響。

どうやらもう一体の地竜も討伐された模様。

さすが上位冒険者達と言うべきか。


 森へ轟く大歓声。

武器なども打ち鳴らして盛り上がっている。

天を仰ぎ見ている冒険者もいた。



 晶が手を出した訳でもないのに即時アンデッド化した地竜の謎は残った。

だが、ここに地竜討伐クエストは終わった……。



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