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「うぉぉぉっ!アキラ!やったなアキラ!!」


「おう」

(イェンさん、大興奮ですねー)

(いや、これは興奮するだろじゃろう)


(さすがです。マスター)

(お、ゼロも見ていてくれたか。いい所を見せられた)

(しっかり見させていただきました)



 イェンは動かなくなった地竜の上を駆けて晶の元へ。

嬉しそうな顔で晶へ近づくと右腕で肩を組んで来た。

盾を持っていなかったらバンバンと叩いてきそうな雰囲気。

とても嬉しいのだと晶にも伝わる喜びようだ。

自然、晶の顔も嬉しそうになる。

見えるのは口元ぐらいだが。


 カヅキはイェンの事を言っているがカヅキの声も嬉しそうだった。

タケマツは姿が表に出ていたら、ウンウンと頷いていただろう。

イェンの気持ちが解るようだ。

ゼロからも念話が届く。

どこからか晶の戦いを見ていたらしい。

無様に転がされた所も見ていたのだろうか?

たぶん見ていただろう。

だがそれを指摘しない辺り空気が読めている。



「俺の相棒のアキラだ!アキラが仕留めたぞー!!!」

「照れる」


「「「おぉぉっ!」」」


「「アッキッラ!アッキッラ!!」」

「アキラー!」


「アキラっていうのか!すげーなお前!」

「こっちまで熱くなったぜ!」

「バーバリアンか?カッコイイとは言い難かったが、なんつーか魂を揺さぶられたぜ!」

「だな。みんな見てるしか出来なかったもんな、最後」


「剛力持ちか?異常だぜ」

「いや怪力持ちじゃねーか?剛力ってレベルじゃねーぞ」


「すげー男だぜ!」

「英雄の誕生だな」

「なんで俺はあそこにいない……」

「仇を取ってくれてありがとう……」

「あいつ死んでないだろ!?」


「っち、おいしい所を持って行きやがって」

「ばーか。お前にやれたのかよ」

「くっ」



 イェンが晶と肩を組んだまま地竜の側にいる者達へ晶を紹介した。

本当に嬉しかったのだろう。

自分の事のようだ。

武器を空に掲げ晶の名を呼ぶ。

照れる包帯眼帯の晶。

濃い灰色のローブが地竜の血で染まっている。

どす黒く見えて邪悪そうだ。

照れくさそうに右手を天に突き上げた。

大歓声。

大多数の冒険者が晶に称賛を送っている。

凄いモノを凄いと言える辺りに好感が持てる。

ひねた者も若干名いるようだが、少数だ。



「あなた、アキラって言うのね。凄いわ」


「あ、ありがとう。でも俺だけの力じゃないさ」

「アキラ良い事を言うぜ」


「本当の事さ。地竜と顔を突き合わせて戦ったらこうはいかなかったろう」


「……謙虚なのね。意外」


「えーっ!謙虚の塊と言われたこの俺になんてことをー」

(アキラさんが天狗になってますよ?タケマツさん)

(まぁ、今くらいはいいじゃろう)



 リリィも地竜の背中に乗って来た。

剣は鞘に納めて手で持っている。

チェインメイルの上にサーコートを着けている。

小手は赤みを帯びた金属だ。

下半身はレザーパンツ、ひらひらするようなスカートではない。

ましてやビキニアーマーなどでは決してない。

ブーツも金属で補強してある。


 そして晶に話しかけているリリィ。

晶も誰に話しかけられたか直ぐに理解していた。

自分だけの戦果ではない。

晶がそう言っている。

真面目な顔だ。

実際にそう思っているのだろう。

さすがに好感度を上げたいなどと思ってはいまい。


 カヅキが言うように少し調子に乗っている晶。

だがタケマツは晶の気持ちが解るのかフォローしている。

ヒーロー願望が強いと思われる晶、倒すだけではダメ。

周りで誰かに見てもらって初めて達成出来る願望。

それを成したのだ。

痛い目にもあった。

それでも出来る事、出来ない事を考えて行動に移した。

タケマツが言うように感慨に浸らせてやってもいいと思う。



「ふふっ」


「アキラ、あっちの方はえらい事になってるぜ……」



 リリィの口から笑いが漏れた。

話の糸口を見つけて追撃にかかろうとした晶にイェンが話しかける。

イェンが言っている、あっちを思い出した晶。

もう一体の地竜の方を視た。

リリィもイェンの差す方を見た。



「大暴れね……」


「あんなに倒れている……」


「四人、いや五人しか残っていない?」


「戦っているのはそうだな。だがレベッカさん達の方へ怪我人を連れて行ってる者達がいるみたいだ」


「ふぅ……そうか」


「私達の方も倒れた者は出たけど、あれほどではないわ」



 リリィが言ったのは下顎を初撃魔法で吹っ飛ばされた地竜の事だ。

あちらはまだ戦闘が続いていた。

五十mほど離れている。

森での戦闘だ。

木々がなぎ倒されている。

森へ引き込んだのか、誰かがヘイトを稼いで逃げ込んだのかは定かではない。

遮蔽物は冒険者を助けるだろう。

逆に地竜は動きにくいと思われる。


 イェンは倒れている者達を見て呆然としている。

地に伏して動かない者達……。

十名ほどが倒れている。

体のパーツも転がっているので正しい数は判らない。

いくら手負いだったとはいえ、酷い事になっている。

晶が現在、地竜に立ち向かっている者達の数を視た。

五名しかいない。


 無傷の地竜へ向かった者は晶とイェンで二名。

『紅蓮竜』がリリィを含めて十一名。

黒装束のパーティが六名。

不気味な槍を持った男はソロ。

計二十名。

戦闘不能が『紅蓮竜』の一名、黒装束三名、ソロ一名の五名が脱落している。


 下顎を吹き飛ばされた地竜の方はというと……。

倒れている者を十名としておく。

戦っている者五名。

レベッカ達シスター三名。

魔法使い達が六名。

怪我人と怪我人を搬送していた者達が……二十弱。

そしてパスカル。

荷物持ちも四名

計五十名近くいた。


 会議室には三十名以上いたがここまでは多くなかった。

参加者全員が会議室に集まっていた訳ではないらしい。

買い出しなどで分かれていた者達も結構いたのだろう。



「戦っているのは……魔女っ子の仲間達二人がいるな。それと、赤マント、獣人、槍使いが一人の五人だな」


「魔法使い達は全員無事みたいね」


「そうだな。だが魔力残量が少なそうだ」


「また魔法を使ったんでしょうね。見て!尻尾が半分無くなっているわ!」


「本当だ!アキラ、尻尾のあった所が焼け焦げている……」


「それで魔力を使ったんだな」



 イェンが未だ戦っている者達を晶に教えている。

魔法使い達はパスカルの側で戦いの行方を追っている。

その魔法使い達を視た晶。

魔力がほとんど残っていない魔法使い達。

どうやらリリィが言ったように再び魔法攻撃をした模様。

結果、地竜の下顎に続き尻尾も吹き飛ばしたのだろう。

焼け焦げた跡があるのがその証拠だ。



「イェン、行こう」


「おう」


「戦いは後だ。倒れている者の中に生きている者がいるかも知れない」


「そっちか。解った」


「私達も手伝うわ。みんな倒れている者達を後方へ連れて行くわよ!!」

「「「おう」」」



 晶がイェンに声をかける。

まずは救助に動くつもりだ。

イェンは戦うつもりだった模様。

だが晶に異論を唱えない。

晶達の側に居たリリィも反応する。

彼女の仲間達も救助に動いてくれるらしい。


 それほどの惨状だという事だろう。

拾える命は拾いたい。

他人事ではないのかも知れない。

明日は我が身か。



「俺達は仲間を回復させに行く」


「ああ。そっちには行かせないさ」


「じゃあな。連れて行くぞ!」

「おう」

「わかった」



 晶達にかけられた声はリリィからだけではなかった。

この場で他に動ける者……黒装束の三名。

彼らは倒れた仲間をシスターの元へ連れて行くという。

一緒に戦った同志、同じ高揚感を得た者達。

そういう繋がりもあるのだ。

彼らは仲間をおんぶしてシスターのいる方へ歩き出す。


 シスター達の辺りでは、しきりに光が漏れていた。

ポワッとした光だ。

倒れている者の怪我に手を当てて光らせている。

それが治癒の奇跡なのだろう。

レベッカも剣を置いて治癒に参加している。

他の三人だけでは手が足りないと思われる。

怪我人だらけだ。

その側にパスカル、魔法使い達もいる。



 晶とイェンは倒れている者へ向かって走った。



「魔力が動いている。生きている!」


「地竜から目を離すなよ?俺達まで倒れる訳にはいかない」


「おう」



 倒れている者を視て生きていると判断。

晶が男を抱きかかえる。

そんな晶にイェンから忠告。

戦場だ。

当然の指摘。

イェンもそう言いながら男を抱えている。


 リリィ達も救助に動いている。

だが彼らが通り過ぎた相手もいた。

地に伏したままの者……。



 晶は歯を食いしばって何かに耐えている。

抱きかかえた男の重みが増したかのようだ。

それでも歩いている。

地竜の方もチラチラと視ている。




「レベッカさん!この人もお願いします」


「アキラ君か。良く連れてきてくれた」

「何とかする」

「き、きついのです」

「マリー、ここが頑張り所ですよ」

「はいぃ」



 晶は怪我人を連れて無事にレベッカの元へ着いた。

レベッカは兜を脱いでいるが、顎に滴る汗が見える。

ずっと回復し続けているのだろう。

オルは弱音を吐きたい所をグッと堪えているみたい。

マリーは素直にきついと言っている。

クィンがマリーを叱咤激励している。

話しながらも手の光は続いていたり。

彼女達の側には多数の冒険者がいた……。


 イェンも抱えていた男を横たわらせる。

リリィ達も。

それを見たマリーが顔を青くさせていた。



「また行って来ます」

「行って来ます」



 晶とイェンは救助活動を続けるのであった。



 地竜の方は残っている五名が何とか相手をしている。


 魔女っ子の仲間、斧を持った大男。

地竜の前に出会った自分より大きい赤熊を一撃で屠っていた攻撃力でも手こずっている。

同じく、魔女っ娘の仲間、ヴァイ。

兵隊蜂の群れを双短剣で撃破していたが、地竜には決めてがない模様。

囮となって地竜の前で攻撃を回避し続けている。

魔女っ子はパスカルの側だ。


 坊主頭の赤マントことノックも戦っている。

長柄武器を振り回して攻撃。

だが刃物ではなく鈍器。

金属の六尺棒だ。

地竜に攻撃を当てると鈍くこもるような音がする。

効いているとは思うが解りずらい。

そして時々地竜に弾き飛ばされているし、魔法も喰らっている。

回避は苦手のようだ。

しかし直ぐに立ち上がる辺り、頑丈な男だ。


 そしてノックの取り巻きは二人しか残っていない。

十名ほどいたはずだが……。

一人は槍を持って距離をとりつつ地竜の傷目掛けて突いている。

ダメージを与えるより怪我をしない事を念頭に置いている。

無難だ。

だが生き延びて戦っているから正しいのだろう。

彼だけでは倒せないだろうが。

残る一人は獣人の奴隷。

犬耳を持った男だ。

大剣を振るっている。

だが刃こぼれが酷いようで、もう鈍器みたいだ。

武器は重たいだろうが、それを感じさせない速度で動き攻撃。

そして回避もしている。

ずっとこれで戦っているのなら凄まじい体力だ。



 地竜は満身創痍でありながら健在であった。


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