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2-25

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「おにーさん達!宿をお探し?」


「ん?そうだね」


「うちはご飯が美味しいので有名だよ!部屋は空いているからうちにしなよ!」

(あら、可愛い子)

(小さいうちから家の手伝いとは感心じゃのぅ)


「どうする?アキラ」


「お世話になるか」


「はーい!!『静かな森』へようこそ。お二人様ごあんなーい!一人部屋二つでいい?」


「それで頼む」



 晶とイェンが影の伸びた先の道を歩いていると横から声を掛けられた。

どうやら宿の子らしい。

生成りのワンピースを着たちびっ子だ。

十歳前後だと思われる。

カヅキがちびっ子を見て嬉しそうな声をあげる。

タケマツも子供には優しい。

声を掛けられたイェンが晶の方を向いて問いかける。

別に泊まる宿を決めていた訳でもなかったので、晶も即決。

元気のいい声で宿の中に連絡している。

そして部屋の規模もイェンに確認している。

しっかり者なちびっ子。

やはり交渉事はイェンが担当している。



「一人部屋は一泊大銅貨一枚で朝ごはんがつきまーす」


「おう。払っとく」


「ありがとー!昼も夜も別途お支払になりますがごはんだせます!」


「解った。お勧めのごはんとかはあるのか?」


「お肉は仕入れた時によって変わるけど人気だよ。魚は毎日隣町の港から運ばれてくるの。魚のスープは少し辛いけどおいしいよ!!」


「おー、頼んでみるかな。隣町の港ってザッツか?」


「そうだよー。はい、これ部屋の鍵ね。お出かけの際は従業員にお預けくださいね!」


「ありがとう。二百二号室と二百三号室か」


「階段を上がったら扉にかいてありますから」



 ちびっ子は宿の説明に慣れているのか、つっかえたりしない。

これは子供とは言えない。

大したものである。

宿の一階が酒場になっていて、そこの客からも声を掛けられている。

人気者らしい。

確かに可愛らしいので理解出来る。

髪を伸ばして背が高くなったら美人さんになるだろう。

将来に期待かな。


 イェンは隣町の港に反応した。

どうやら知っている町らしい。

ザッツ、そう言う名前の町だった。

海に面した町。

ちびっ子から部屋の鍵を受け取っている。



 イェンの先導で二階に上がる二人。



「荷物を置いたら少し休んだら、下でメシを食おうぜ」


「あいよ。後でなー」


「おう」



 イェンから鍵をもらって部屋に入る晶。

晶は扉の側に備え付けてある明かりの魔導具に明かりを灯す。

魔法は使えなくても魔力は多い晶。

神気で体を覆うのを止めれば魔力を外へ出せている。



「へー。狭いけど中々いいね」

(思ったよりまともですねぇ)

(こんなもんじゃろう)


「ぴ」


「ぴよこ、今夜はここで寝るからなー」


「ぴー」

(うぅ……パタパタしてる。可愛い……)



 ベッドの脇にずた袋を置いてベッドに座り込む晶。

ベッドにスプリングは入っていないが綿か草が入っている模様。

割と眠りやすそう。

ぴよこが晶のフードから飛び出しベッドに降りた。

ベッドの上をテテテッと走り回っている。

楽しそう。



(ゼロ。聞こえるかゼロ?)


(聞こえています。マスター)


(迷宮都市コドで宿を取った。明日は昼過ぎに外へ行くから合流しよう)

(承知。お待ちしております)



 晶はゼロに明日の予定を伝えている。

イェンと明日は休んで町を周り外へ出ようと決めていた。

戦利品を鑑定してもらったり、売ってお金にしたりするつもり。

壊れた盾の代わりも買うと言っていた。

外に出る際は冒険者ギルドで仕事も見繕うそうだ。

ちゃっかりしている。



「タケマツさん、ちょっと試そうか」


(お、例のヤツじゃな)


「はい」



 晶がタケマツに提案している。

タケマツの声が嬉しそうだ。

何をするのやら……。

実験は夕食の時間まで続いていた。







「白身魚のスープ美味いぞ。ピリッとした辛さがいい」


「野菜炒めもいけるな。肉も好きだが野菜も好きだ」

(いいなぁ……ちょっと量が多いけどいいなぁ)

(鳴らない腹が鳴りそうじゃな)


「パンをスープに浸すと、これまたいける」


「この宿は当たりだったな」


「おう」



 イェンが宿お勧めの魚スープを啜って喜んでいる。

晶もフォークで野菜炒めを食べている。

箸を使いたいであろうが人目もあるので我慢していた。

塩だけの野菜炒めは葉物、玉葱、ニンジンっぽいので作られていた。

オークの肉串が主食になりつつあった晶は嬉しそうにして食べている。



「おい、あれ見ろよ」

「なんだ?」

「表を歩いているのは『紅蓮竜』の連中だぜ」

「おぉ!あれが有名な『紅蓮竜』か!野郎どもに囲まれているのが……リーダーのリリィか。いい女だぜ」

「バカ!声がでけぇよ。睨まれたらどうすんだ」

「す、すまん。しかしクラン『天剣』の最高戦力パーティー『紅蓮竜』がこんな時間にここらを歩いているなんて珍しいな」

「何だろうな。クラン『天剣』といえば迷宮の三十階層に突入したらしいぜ」

「うはーマジかよ!イカレてるぜ」

「な。上位オーガが出てくるらしい」

「トップクランはそんなのも相手に出来るんだなぁ……」

「俺達は俺達の倒せる相手を狙うだけさ。夢は見るまい」

「だな」



 隣のテーブルにいた冒険者らしい男達が宿の前を歩いている者を見て話しだした。

どうも迷宮都市コドで有名な冒険者が歩いているらしい。

リーダーは女。

赤い髪をなびかせて歩いている。

その周りをごっつい男達が囲んでいた。

護衛だか取り巻きだか判らないが周囲に威圧感をばら撒いている。


 晶とイェンはその話に耳を傾けて通りを見ていた。

強い冒険者に興味があるらしい。

同業者として気になるのだろう。

女の冒険者は少ない。

そんな冒険者がリーダーと聞かされては尚の事に違いない。



(この手の相手はいずれ絡みそうだなぁ……)

(ありがちですね。味方だといいんですけど)

(女は魔力が多いな。強いというのは嘘ではなさそうじゃ)



 脳内会議も開催されていた。



(お、絡まれてたぞ)

(荒っぽい町ですねぇ……)

(ふふっ。ええのぅ)


「当の本人ではないから面白いな」


「ひひ。だな」



 通りの先で女冒険者達が足を止めた。

道を塞ぐように立っている男達がいる。

そちらも冒険者らしい。

武装している。


 イェンが面白そうだという顔になっていた。

同意する晶。

野次馬再びである。



「よぉ!リリィ!」


「邪魔」


「邪険にすんなよぉ。お話しようぜぇ!」


「話す事なんてない。どいて」


「つれねーなぁ。例の話は考えてくれたか?」


「考える余地はない。売らない」


「ほぉ……後悔しねーといいなぁ」


「しない」



 軽薄そうな男が女冒険者に話しかけた。

宿の中でも辛うじて聞こえる。

冒険者は周りに気を遣って小声で話すなんてしないのだろう。

男の声は大声だ。

どうやら顔見知り相手らしい。

そして何らかの交渉をしているっぽい。

きっぱり断っている女冒険者。

軽薄そうな男の周囲から殺気。

女冒険者側も殺気を放つ。

一触即発。

だが晶とイェンは楽しそう。

パンを齧りながら展開を見守っている。

あ、晶がこっそり懐にいるぴよこにパンをちぎってあげている。

物騒な通りとは真逆でのほほん空間。



「『漆黒双蛇』じゃねーか!」

「目ぇ合わせるなよ」

「あぁ。お、スープ美味いな」

「だな」



 隣のテーブルの冒険者達は顔を背けて食事に戻っている。

関わりたくないのだろう。

物知りで身の程を知っている冒険者達。

長生きしそうである。



「ま、迷宮では気を付けるんだな。最近物騒らしいぜ?ぐははっ」

「貴様!」

「おのれ!!」


「雑魚どもは下がってろよ!じゃあなリリィ」


「……」



 交渉を断られた軽薄そうな男は脅しとも取れる言葉を残して道を戻っていった。

女冒険者とその仲間達はそれを見送っている。

女冒険者は無表情。

仲間達はいきり立っている。

だが、戦いにはならないようだ。





 迷宮都市コド。

退屈しない所らしい。




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