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「地下十一階は埋まってたけど、この階は大丈夫だったな」


「おう。上でもそうだったがこの階も待ってる冒険者がいなかったぞ」

(ですね)

(地下十一階からはオークではないようじゃし、人気がないのかのぅ)

(そうかも。あ、黒い煙!何が出るか解るね)



 イェンが言っている通り、地下十二階に入って三つ目の扉が開いた。

そして晶が言っているように通路の先に冒険者の姿はなかった。

地下十階までは空き待ちの冒険者がたくさんいたのにだ。

部屋の造りは上と同じだ。

明かりが灯り、黒い煙が湧いた。

どんな魔物が出てくるか、これから解る。



「うはっ、デカッ!オークよりもデカイぞ」


「オーガかよ……アキラ、気を付けろ!コイツはオークより力もあるし素早いしタフだ」


「この青黒い肌のデカブツがオーガか。ん、額に小さな角があるな」


「迷宮だと取れないだろうが、外のオーガだと魔力回復ポーションの材料らしいぞ」


「へー。コイツは俺がやってもいいか?イェン」


「いいぞ。俺もアイツの動きを見ておきたい」



 黒い煙から出て来た魔物はオーガだった。

上にいたオーク達より背が高い。

三mはないが二mは超えている。

横幅はオークの方があったが、引き締まって筋肉の塊に見えるオーガ。

オークと同じで上半身裸で防具は着けていない。

筋肉を見せびらかしたいのだろうか?

ムキムキ、ピクピクである。

腰布だけで靴も履いていない。

見える肌は青黒く、不気味だ。

右手に金属の棍棒を持っている。

さして長くもない棍棒。



「鬼に金棒ってか」

(うーん)

(オーガじゃったか)



 晶も初見の相手には突っ込まないようだ。

ジワジワと距離を詰めている。

だが、その表情、言動には恐れている感じはない。

本当に現代日本人だったのだろうか?

いきなり手にした力に酔っている可能性もある。

力を手にして結構経っているが……。



「っと、待ってたぜ!」



 晶は初見の相手には攻撃をさせる。

今までもそういう事が多かった。

オーガにもそうさせていた。

相手の攻撃を躱す自信があるのだろう。

そして相手が攻撃してくると反撃が出来ないタイミングがある。

後の先というやつだ。

オーガは右手に持った金属の棍棒をゴゥッ!と音をさせて晶目掛けて振っている。

晶はオーガの横へ移動するようにそれを躱す。

ボスオークの時の再現である。

右のわき腹が丸見えだ。

違うのはミドルキックではなく左手による打撃という事だ。

恐らく、腹の位置が高いせいだろう。

晶の足はそこまで上がらないのかも知れないし、油断せずに動けるように足を使っていないのかも。

そして平手での打撃がオーガの脇腹に当たる。

鈍くこもるような音もした。



「グゥオォッ!ガァッ!!」



 その打撃の結果はボスオークとは違い肉と血をまき散らしていた。

雄叫びとも悲鳴とも判らない声をあげていた。

オーガはたたらを踏みつつも立っている。

打撃を流せていれば倒れるで済んだのかも知れない。

耐えた結果が一部爆散。

タフさに自信があったのであろう。

それが裏目に出ている。


 しかし、さすがというか異常というか、オーガは無くなった脇腹の肉を気にもせず再び棍棒を振るって来た。



「おいおい……血ぃ流れてんぞ?痛くねーの?」

(うわぁ……痛そう。見てる方が痛そう。という訳で目を閉じてます)

(外のオーガと戦った事があるが、怪我をすれば痛そうじゃったし逃げ出したりもしおったぞ)

(迷宮の魔物は異常って事ですかね?)

(そうなるのぅ)



 棍棒を振るうオーガからは勢いよく血が流れ出ていく。

その血は床にこぼれた後で消えていく……。

迷宮に吸収されている。


 タケマツが外と迷宮の魔物の違いを説明。

オーガから逃げられる異世界人前衛……。

お侍さん恐ろしや。



「カヅキさんじゃないけど、見てる方が嫌だな。そりゃ!!」



 そんな事を言いながらオーガの背後をとり、拳で胸に穴を開ける晶。

うつ伏せに床へ倒れこむオーガ。

オークに続き、オーガでも問題無く倒せている。

強い。




「カヅキさん?」


「あ、知り合いに血を見るのが嫌いな人がいたんだよ」


(カード化の力は表に出してますけど、私とタケマツさんの事、それからアキラさんのネクロマンサーについては内緒でしょー!)

(迂闊な男だのぅ……)

(あ、あれだよイェンは良いヤツだからさ。できれば話したいんだよなぁ)

(いい人なのは認めますが……お勧めできませんよ?)

(カヅキの言う通りじゃな。ワシもネクロマンサーの知り合いはアキラ以外おらんが、話には聞いた事がある)

(むぅ……)

(人族の敵ばかりじゃった。そしてその結末も悲惨な話ばかりじゃったぞい)

(イメージ通りですねぇ。いざとなれば逃げればいいんでしょうけども)

(……もうちょっと考えてみる)



「ふーん。そっか女か?ほほぉ……」



 カヅキさんと口に出していた晶。

迂闊な男である。

まぁ、つい口にだしてしまったのだろう。

イェンに突っ込まれ、カヅキに怒られ、タケマツに呆れられる迂闊な男、晶。

出て来た名前の語感から女の名前だと察するイェン。

ニヤニヤしている。

年頃の男だ、そういう話も好きなのだろう。



「おら、次のオーガが湧くぞ!俺がやっちまうからな!」


「えっ!俺もやるよ!」


「そりゃー!」


「くっ!」



 ニヤニヤされたのが嫌なのか、迂闊にしゃべってしまったのを誤魔化すためかオーガに突っ込んでいく晶。

オーガが湧いてくれて助かっていた。

嬉々としてオーガに殴り掛かっている。

イェンはそんな晶を見て慌てて後に続いた。


 まぁ、イェンが切りかかる前に晶が二体とも倒してしまいましたが……。



 オーガ部屋でも暴れる二人だった。







「しくじったぜ……」


「盾が壊されただけだからよしとしておこうぜ」


「そうだな」


「怪我らしい怪我なんてしてないんだしさ」


「おう」


(イェンさんが悔しそう)

(十分戦えておったと思うがのぅ)

(お気に入りの盾だったんですかね?)

(木の盾に鉄板を張りつけた代物じゃったぞ)

(うーん)



 オーガ部屋で連戦し続けた晶達。

イェンの盾が壊れた所で終わりになった。

回避盾剣士のイェン。

オーガの振るう棍棒を躱しきれなかったのだ。

怪我はしなかったものの、それが悔しかった模様。

晶に慰められている。



「戦果は十分だったぜ?イェン」


「あぁ、それは素直に嬉しいな」


「鉄の宝箱に黒鉄の宝箱。中身はかなりよさげだったぞ」


「黒鉄の宝箱に入ってた指輪とネックレスは魔法の品だと思う」

(うむ。あれは魔法装備じゃな)

(テンション上がりますねー)

(ね!)


「剣とかだって鉄の良品なんだろ?」


「そうだ。一級品とまではいかないがうちの兵士達が持っている剣より上だ」


「ほほー」


「でも今回の目玉は鎧だろう!黒鉄で出来たフルプレート!!あれは凄いぞ」


「黒光りしてたあれだな。威圧感があった」


「そこらの騎士でも持ってないぞ!」


「良い物を手に入れたな」


「ああ」



 晶が宝箱の話を振るとイェンの悔しそうな顔が嬉しそうな顔に変わっていく。

晶もやる。

オーガ十六体を倒した時に出た黒鉄の宝箱には魔法の品が入っていた。

金貨、銀貨も入っていた。

話が剣の話になるとイェンも盾を壊した事を忘れたようだった。

剣士として剣の話は大好きなのだろう。

そして宝箱から出た剣は中々良い剣だった。

晶には剣の良し悪しが判らないので適当な相槌。

今回一番の収穫は黒鉄で出来たフルプレートだった。

形は中世の騎士が着込んでいたような鎧である。

イェンも晶も興奮気味だ。





「だが……ここら辺の部屋に人気がないのも解ったな」


「ん?」


「一人前の冒険者達でもきつい、四体か八体までだろう。それ以上はベテランでもないと無理だ」


「ほー、そうなのか」


「アキラはおかしいからな」


「おかしくねーよ!」


「うん、おかしいから」



 オーガ部屋が空いているのも理由があった。

イェン曰く、普通の冒険者には荷が重いと。

イェンも晶と組んでいなければきつかったろう。

まぁ、似た実力の者でパーティを汲めば十六体でも相手に出来るだろうが楽ではなかったはず。

晶が異常なのだ。




(しかし……迷宮には霊がいない)

(そうなんですか?)

(ワシらは元々視えないからのぅ。霊体になって初めて視える世界じゃ)

(確かに外の森では小動物の霊なんかはいましたね)

(うむ。低級霊がおったな。だが迷宮内にはおらん)

(そうなんですよ。外で見かけては格納してたんですけどねぇ……)

(負担はないんですか?)

(カヅキさんやタケマツさんクラスだと後、二、三人だね。低級霊ならいくらでも大丈夫かと)

(へー)

(限界はあるのじゃな?)

(ありそうです。それを超えたらどうなるかは解りません)

(まぁ、無理はするでないぞ)

(はい)



 イェンと雑談しながら迷宮の外を目指す晶。

雑談が途切れると脳内会議をしていた。

その会話である。

どうも迷宮内には霊がいない模様。

迷宮の外、森などではいたらしい。

そしてカヅキ達を体に格納しているが限界はあると。

異世界人を格納して力を借りる……無限の可能性かと思ったがそうでもないらしい。



 晶とイェン、イェンの盾は壊れたが足取りは軽かった。

損害を補って余りある戦果だからだろう。



 後、野生に戻り気味なゼロとも念話をしていた。

迷宮内から外へも届いていた。

ゼロは楽しげだったいう。

戦いまくりなのだろう。

場所は違うがやっている事は同じ。

似たもの主従であった。



 そして晶は今回最大の戦果の使い道を考えていたり。


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