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2-20

2-20



「ちょうど帰る人達が出てくるなんてな!イェン、俺達ツイてるぜ」


「いやいやいや。二度目の戦闘がまたボス部屋になる寸前だったじゃねーか!」


「まぁ、そうともいうな」


「そうとしか言わねーよ!十階まで来て一度も扉が開かないとかツイてねーにもほどがあるだろー」


「入れたんだからよしとしようぜ」


「お、おう」



 晶とイェンは地下五階のボスゴブリンから一度も扉に入れていなかった。

そして仕方ないまたボス部屋になるな……なんて溜息を吐いていた時に真後ろの扉から冒険者のパーティが出て来た。

出て来た者達は戦士ばかりで構成されているパーティで疲れている様子ではあったが、表情は明るかった。

中々の戦果だったと推測された。

晶達とすれ違う時も軽く手を振ってくれたりなんかもしていた。

余裕は大事である。

地下十階にも部屋待ちの冒険者達はいたが、晶達が一番近かった。

早い者勝ちなので晶達は躊躇せずに部屋に入った。



「よっしゃ!やったるでー!!」


「アキラ、連戦になるから油断するなよ」


「おうよ!そっちこそ怪我すんなよ!」


「おう」



 そして扉が閉まり部屋が明るくなる。

晶達の視線の先、部屋の奥で黒い煙が立ち上った。

現れたのは南大陸でも戦った相手。

オークであった。

違うのは武装している事だろう。

剣と大盾を持っている。



「おっと、豚さん!お久ー」


「挨拶なんぞしてどうする……」


「気分だよ気分」


「アキラ、元気だなぁ」


(戦闘が出来るんでテンションが上がっちゃったんですね)

(気持ちは解るぞ)

(解っちゃいますかぁ)



 妙なテンションの晶。

イェンに呆れられている。

カヅキは冷静に分析。

タケマツは晶と似た部分があるらしい。

晶の気持ちを理解している風。

そんな晶はイェンを置いて突撃した。

盾で体の半分を隠しているオークを気にもせずに盾ごと蹴り飛ばす。

酷い力技を見た……。



「ひゃっはぁ!!」


「ぴぃ」



 どこぞの世紀末に生きている様な男になってしまっていた。

主の雄叫びがうるさかったのかフードから顔を出してキョロキョロするぴよこ。

あ、ぴよこが晶のフードから飛び降りてオークの魔石を突いている。

コロコロするのも寝るのにも飽きたのかも知れない。

楽しそうに小さな魔石を転がしている。



(はぁぁ、ぴよこちゃんが可愛すぎて辛い……)

(カヅキ……)



 そんなぴよこを見て悶えるカヅキ。


 そうこうしている間にもオークが現れる。

籠っている間は出現する魔物の数が倍々になっていく。

二体のオーク。

今度はイェンも突撃していった。

晶に瞬殺されるのを恐れているかのようだ。


 やはりイェンも戦える男。

自分より体の大きいオークでも恐れず立ち向かっている。

オークの振り下ろした剣をいなし、オークの体がおよいだ所を切りつけている。

相手の反撃が来ないタイミング。

間合いを掴むのが上手いので危なげがない。

力押しの晶とは違う。

だが、オークを倒すのは晶の方が早かった。

晶は剣鉈に慣れていないのか、また蹴っていた。

迷宮では魔物の死体が迷宮に吸収されてしまうので肉がとれない。

食べられないのなら爆散させても構わないという事だろう。

解りやすい男、晶。



 四体のオークが湧いても、瞬殺劇は続く。

一体オークメイジが混じっていたようだが魔法を使う間もなく晶に蹴り飛ばされていた。

南無。

晶が三体のオーク、イェンが一体のオークを倒した。

どちらも危なげがない。

いくらオークの数が増えていったとしても最大十六体。

それでも晶達が危なくなる姿は想像出来ない。

それくらい彼らは強かった。

晶達はもっと下の階に行くべき。


 八体のオーク。

オークメイジが二体混じっている。

他に盾持ち、槍持ちもいる。

バランスは悪くなさそう。

だがボス部屋の様に連携はしてこない。

どうもリーダー格がいないようだ。

オークはそれぞれ好き勝手に戦っている。

下手をすればフレンドリーファイヤーすらしそうである。


 晶は力押し、イェンは位置取りが上手く面と向かって相手にしている数は二体以上になっていない。

直ぐに数が減るオーク達。

弱い物虐めにすら見える。


 そのせいかぴよこがオークの死体を突いていても晶は何も言わない。

余裕すぎだろう。

あ、ぴよこがオークの死体の上に登り羽をパタパタさせている。

ぴよこが倒した訳でもないのに、やったぜ!みたいな感じだ。

状況判断が出来ていないのか大物なのか、判断が難しい。

可愛らしさは解りすぎるほど解る。


 イェンがオークメイジと槍持ちオークを連続で切り倒す。

一撃か二撃で倒しているので急所をきっちり狙って戦っているのだろう。

イェン、なかなか強い。



「お、これか!」


「やったな!」



 晶とイェンの視線の先には床からせり上がって来た金属製の宝箱。

話には聞いていたが、目にするとまた違うのだろう。

嬉しそうな二人。



(魔物から出る訳じゃないんですねー)

(そうじゃな)

(絶対誰かの意思がありますよ)

(オーク八体、全てが倒されたら床から出てくるか……)

(何だか見えない恐ろしさを感じます)

(アキラ達の様に深く考えない方が楽しそうじゃぞ?)

(……)



 カヅキとタケマツが宝箱の出現を見て話し合っている。

頭空っぽにした方が正解なのか?

カヅキが黙り込んだ。

難儀な事である。



「これ青銅の箱だな」


「宝箱のランク的にはどうなんだっけ?」


「アキラ……受付嬢の話を真面目に聞いてなかったな?」


「木の箱が最低ランクなんだよなー!」


「一応聞いていたか……」


「す、少しはね」



 宝箱は青銅で出来た物だった。

大きくはない。

ノートパソコン程度の大きさに見える。



「じゃ、どうやって開けるかは聞いていたか?」


「かぎ、鍵穴に鍵を突っ込んで回す!」


「聞いちゃいなかったな……鍵なんて持ってないだろ?」


「ないな」


「斥候職か盗賊職の技能でこじ開けるか、こうだ」



 イェンは晶に解説しながら、宝箱の鍵穴、その下にぽっかり開いている場所にオークの魔石を入れている。

一個、二個、三個……ゴブリンよりは大きい石っころのような魔石が合計で五個入った時に箱の上蓋が上に開いた。

なるほど、技能で開けるか代償を払えば開くらしい。

晶も感心して見ている。

口が開いていてマヌケそうだ。



「と、まぁこんな感じだ」


「やるなぁ、イェン」


「お前さんがやらなすぎだ」


「へへっ」


「まあいい。中身はっと……」


「銀貨と銀貨の大きいヤツ、それから銅貨いっぱいに……」


「銀色の指輪と、赤い宝石だな」


「魔法!魔法の指輪かな!?」


「判らん。鑑定人か鑑定屋に行ってみてもらうしかないな」


「そっかー。でもテンション上がるな!」


「だな!指輪は女物かな、小さくて俺らの指には入らなそう」


「くくっ、誰かにプレゼントしろって事か!」


「アキラって前向きだよなぁ」

(私もそう思いますよイェンさん)

(才能じゃな)



 青銅の宝箱、その中身は貨幣と指輪、宝石であった。

オークの魔石を使っても儲けは出ている。

貨幣だけで、晶とイェンが宿に二十日くらいは泊まれる額だ。

ルビーっぽい宝石もあるし十分な稼ぎ。

瞬殺劇だった事を考えると笑いが止まらないのではないだろうか?

他の冒険者ではこうはいくまい。

怪我もするかもしれない、人数ももっと多いだろう自然分け前は減る。

イェンが革の巾着袋に戦果をジャラジャラッと詰め込んでいる。

その顔は嬉しそうだ。

目に見える稼ぎだからかも知れない。


 テンションが上がっていて忘れていそうだが、カード化すれば解説文も出せたり。

きっと後でカヅキが教えてあげるだろう。

委員長だし。

だから鑑定料は払わなくてすみますよー。



「イェン、次は十六体だな!」


「次も宝箱が期待できるはずだ!やったろうぜ!!」


(ええのぅ……)



 やる気満々な二人であった。

タケマツはそんな二人を見て羨ましそうにしている。

戦いたい人なのだろう。

残念。




 十六体のオーク達を倒して出た宝箱は鉄の宝箱だった。

中身は金貨も入っていたしナイフも入っていた。

金貨で更にテンションが上がり連戦。

八体の時の宝箱は青銅、十六体の時の宝箱は鉄。

これは変わらなかったが宝箱の大きさはまちまちだった。

棺桶のような大きさの宝箱が出た時に晶が目をひん剥いていた。

何が出てくるかと思い興奮したのであろう。

イェンも程度の差はあれ似たようなものだった。

因みに棺桶サイズの時は短槍が入っていた。

どうも入っている物に合わせてサイズが変わるらしい。

逆をいえばサイズを見てどういうお宝が入っているか解るようになるかもしれない。

短槍以外のスペースが結構空いていて少し悲しげな晶であった。

棺桶一杯にお宝が詰まっていたら嬉しかったろうに。







 晶とイェンは飽きるまでオーク部屋で戦った。

それはもう嬉々としてである。

お腹が減っているのも忘れて暴れる二人。

結局、何周したのやら……。

イェンの革巾着が一杯になったら晶がカード化していた。

ぴよこは途中で晶のフードに戻ってしまった。

付き合いきれなかったのかも知れない。


 剣が出てイェンが喜んだ所で終わりになった。

晶はともかくイェンもタフだった。

物欲が疲労を超えたのかは判らない。

天職の恩恵は少なからずあったとは思うが。


 晶は包帯で目を覆いなおした。

そして部屋を出る二人。



「ふーっ」


「稼いだな!」


「疲れた分は稼いだな。アキラは疲れていなそうだけど……どうなってんだよ」


「き、鍛え方が違うんだよ。精進せい!」


「くっ」


(ただの神気使いですー。真面目に聞いちゃいけませんー)

(うむ)

(い、いいだろー!少し偉そうにしたかったんだよ!)

(ふふっ)

(アキラは剣の才能があまりないのぅ)

(くっ、解ってる解ってるよータケマツさん)

(殴る蹴るの方は様になってましたね)

(剣よりは向いておるな)



 オーク部屋を出て大きく息を吐き出すイェン。

二人とも両手を上げて背伸びをしている。

同じような動きばかりで体がこったのだろう。

イェンはそれなりに疲れを感じているようで、まったく平気そうな晶を見てぼやいている。

カヅキとタケマツが言うように神気を使って楽をしていただけだが。

そして晶には剣の才能がないらしい。

天職がネクロマンサーなのだからお察しであろう。

だが格闘はそれなりに出来ていたようだ。

タケマツもそれは認めてくれている。



「空いたか!?」


「空いたよー!頑張ってねー」


「そ、そうか!みんな行くぞ!!」


「「「おう!」」」



 晶達が扉から出るのを見た冒険者達が近くに来た。

そしてオーク部屋が空いたかと晶に尋ねる。

それに対し晶は空いたと言い、手をひらひらと振った。

嬉しそうな顔で他の冒険者に声をかける男。

リーダーも大変そうだ。

気合十分な冒険者達はオーク部屋に入っていった。

六人、魔法使いっぽいのはいなかったが盾が二枚、槍も二枚、剣と弓。

オーソドックスな構成と言える。

過不足ない感じ。

すれ違う時に晶を見てビクッとする人がいたりした。

まぁ、包帯眼帯だからねぇ。



「みんなこんな感じなんだなぁ」


「迷宮内は自己責任とは言え、ガツガツいかないといけないんだな」


「生活がかかってるんだろうな」


「だな。って俺達も宝石とかを売って買い出ししないとな」


「交渉はイェンに任せるよ」


「おう」


「アレスからの要望分くらいにはなったの?」


「あー、貨幣だけだとまだまだだな。武器や装飾品を売っても微妙だろう」


「もう二、三回来ないとダメか」


「ダメだな。もしくはもっと下に行くかだな」


「それもありか。宝箱の質も上がるんだろう?」


「たぶん次は鉄の宝箱とその上の宝箱だろうな。逆にゴブリンの所は青銅の宝箱と、その下の宝箱だろう」


「ふむ。そういう感じか」


「たぶん。移動にも対して時間はかからないし戦闘もアキラはいると早い次はもっとやれる!」


「初迷宮、面白かった!!」


「扉が開かないのにはまいったがな」


「ひひ」



 冒険者達を見送り元来た通路へ向かう晶達。

今日は引き上げるつもりだろう。

感触を掴むにしては随分奥まで来ている。

扉が開かなかったから無理もない。

だが戦力的には余裕も余裕。

食べ物はいいとして寝るための道具などを用意すれば、もっと下に行けそうな二人。

初迷宮、話をしながら歩くのであった。

その顔には笑みを浮かべている。

満足そうだ。







 晶達は階段を上り迷宮の外を目指す。

事件は地下六階に上がった所で起きた。

晶達が進む先の扉が開き、転げるように部屋から飛び出してきた影。



「ウッディ!!しっかりして!!」


「イザベル、揺すっちゃダメ!」


「で、でも!誰か助けて……」


「ポーションも薬草もない。テリー、ウッディを担いで。走ろう」


「わ、解ったよぅ」



 影の主は冒険者。

ここにいるのだから冒険者か衛兵だろう。

そんな冒険者達の中に倒れている者がいた。

残りの冒険者達が倒れている者を囲んでいる。

地下六階、ここはオークが出ている階層のはず。

オークにやられたのだろう。

だが部屋からは出て来れている、何とか倒したという事だ。

慌てている冒険者達。

みな若い。

いや若すぎる。

子供じゃないかと思われる者も混じっている。

そんな八人組の冒険者達だった。


 倒れている者に縋りついている女の目が晶……ではなくイェンと合った。



「た、助けてください!!」



 声は晶達に向かって放たれた模様。

晶がビクッとした。

帰るまでが遠足。

遠足ではないが迷宮から出ていないうちは冒険は終わっていないという事だろう。

イェンもこれからするべき事が頭を過ったのか、息を吐き出していた。



 初迷宮はまだ終わらない。





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