2-21
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「アキラ、俺達が使わなかったポーションをやってもいいか?」
「いいぞ」
(そうこなくっちゃ!助けてあげましょう!)
(掃除屋か襲ってくる冒険者でもおらん限りポーションの出番はあるまい)
「これを使え!」
「あ、あり、ありがとう!」
女冒険者に助けを求められたイェンと晶。
オーク部屋で連戦した晶達であったがポーションを使うような怪我はしなかった。
そのポーションをあげても良いかとイェンが晶に相談する。
晶も出し渋る場面ではないので即決だ。
カヅキはイェンと晶の判断を喜んでいる。
委員長は優しい委員長だった。
タケマツはこれから迷宮を出るまでにポーションがいる場面を想定して晶に伝えている。
ポーションを渡す事に異議はなさそう。
それでも見知らぬ冒険者という事でイェンは警戒しつつ革のサイドバッグに入ったポーション丸ごと女冒険者に手渡していた。
感情に流されるだけではない模様。
イェンは若いのにしっかりしている。
それを受け取った女冒険者は両腕の中で大事そうに抱えて仲間の元へ走った。
晶達は何となくその場にいなくてはいけない雰囲気にのまれた。
爽やかに、じゃあねっ!と手を振って去るようなマネは出来なかった。
成り行きを見守る二人であった。
「ポーション!ポーションだよっ!!」
「イザベル、落ち着いて。ゆっくりバッグから出そうね」
「う、うん」
転んでポーションをダメにするような事もなく無事に倒れている仲間の元へ着いた。
跪く女冒険者。
女冒険者は違う女に諭されている。
危なっかしく見られたのだろう。
いや仲間なのだから普段の行動を知っているはず。
実際危なっかしい子なのかも知れない。
ワタワタしながら革のバッグからポーションの瓶を取り出している。
(ドジっ子属性ですかねぇ……)
(どうだろ?)
(みな若いな。子供も混じっておる……)
カヅキがイザベルと呼ばれた女冒険者を見て呟いている。
それに念話を返す晶。
タケマツがイザベルとその仲間達について補足した。
みんな若い。
成人して間もないというアレスより幼く見える者達ばかりだ。
冒険者ギルドでは子供でも雑用の仕事があるので登録できる。
採取だったり物運びだったり掃除などの仕事だ。
だが迷宮にも入れる。
晶達が入れたように木札でも入れるのだ。
武器防具も持っている彼らだ、衛兵も自己責任として止めたりはしなかったのだろう。
だが一番幼い者は十代前半、下手すれば十歳くらいだ。
八人もいるとはいえ危険と言える。
「ウッディ、口を開けて!ポーションだよっ!!」
「がふっ」
「あぁっ!」
「イザベル、落ち着いてゆっくりだよ」
「う、うん」
「頭を少し上げて。うん、それでいい」
倒れている者にポーションを飲ませようとしてむせさせてしまうイザベル。
ウッディと呼ばれていた怪我人が顔を顰めて咳き込む。
だが痛みを訴えるでもなく文句も出て来ない。
それどころではないのかも知れない。
革の鎧が裂け、脇腹が赤く染まっている。
刃物で刺されたらしい。
イザベルに落ち着いた声で話しかける女。
一人冷静に見える。
倒れている者の頭を上げさせて枕がわりに盾を差し込んだ。
そしてイザベルだけでなく自身でもポーションを手に取った。
傷口に直接かけている。
経口でも傷に直接かけても大丈夫みたい。
「うぅっ……」
倒れている者が呻く。
その代わり傷口からの出血が止まった。
ポーション凄い。
倒れている者を囲んでいる仲間達も安堵の表情に変わった。
何とかなるのだろう。
「良かったな」
「もう大丈夫そうか?」
「たぶん」
「魔力の流れも落ち着いたみたいだ」
「アキラの目は便利だなぁ……」
(私、私にも視えますよー)
(ワシもじゃ)
(何を張り合っているんですか……)
イェンが治療の様子を見て呟く。
それを聞いた晶がイェンに尋ねる。
包帯眼帯で直接は見れない晶だからしょうがない。
でも魔眼で魔力の流れを見ていたらしい。
正常な流れになった模様。
それが解るとは晶もやる。
ちゃんと成長している。
イェンが晶の目を褒めるとカヅキとタケマツが対抗して来た。
深刻な空気に耐えられなかったのかも知れない……。
「イェン、もう行ってもいいかな?」
「んー、もういいか。いくべ」
「おう」
治療が一段落したという事でここを去ろうと晶。
イェンも少し考えた風だったが晶と同じ気持ちなのか去る事にしたらしい。
「それじゃ、お大事に」
「あんまり無茶するなよー」
さり気なく横を通り過ぎる晶とイェン。
軽く手を振っている。
イェンが忠告もしていた。
若い彼らを心配しての言葉だろう。
「ま、待ってください!おれい、お礼をさせてください!」
「そうです。ただで物をもらう訳にはいきません」
「ありがとー」
「ぐすっ……ありがと」
「俺達は物乞いじゃない。買って返すし礼もする!」
「そうだよ!」
「ありがとうございました。本当に助かりました」
倒れている者以外から言葉が返ってくる。
そうなるよね……普通。
イザベルが立ち上がりイェンを掴んで止めようとしてハッとしていた。
さすがに無礼だし知らぬ間柄だ気を遣わないといけない事を思い出したと思われる。
口々に礼を言っている。
中には気の強そうな子もいた。
言っている事は解らないでもない。
(声も幼い……)
(うむ。見た目だけって事はなさそうじゃな)
カヅキとタケマツが彼らの年齢について話している。
「でもなぁ……」
「俺らもオーク部屋から出て来た所なんだよ」
晶が渋り、イェンが俺達は疲れているんだよとアピール。
実際は早く迷宮を出て寛ぎたいって所だろう。
慣れない迷宮だ、仕方のない事ではある。
「うぅ……ウッディは動かせないし……どうしよう」
そんなやり取りをしていると近寄ってくる他の冒険者達がいた。
密かに動ける体勢に移行する晶とイェン。
頭は働いている。
「おい!部屋が空いたんだろ?どけ!」
「もういいだろう?」
「は、はい」
「足を抱えてあげて」
「荷物は俺が持つよ」
晶達の様子を伺っていたようだ。
争い事でもなさそうだという事で出張って来たのだろう。
ずっと通路で部屋が空くのを待っていたからイライラしているのかも知れない。
口調が荒かった。
だがもっともな事ではあったのでイザベル達は怪我人を抱えて動いた。
扉の前が開くと近寄って来た冒険者達が中へ入っていった。
怪我人を一瞥していた所を見るに、気にはなっていた模様。
悪いヤツらではないのかも。
口が悪いヤツならギルドにもいた。
ここらの基本なのだろうか?
「まぁ、あれだ、宿をとってある訳でもないし少し休んでいくか」
「そうするか」
(それがいいです)
(油断はするでない。相手も冒険者じゃからの)
晶がイェンに休もうと提案した。
イェンも面倒臭くなったのか同意する。
埒が明かないと思ったのだろう。
疲れているのも嘘ではないはず。
カヅキとタケマツの声を聞き座り込む晶。
イザベル達からちょっとだけ距離がある。
タケマツの忠告も聞いている。
イェンも晶の隣に座った。
「イェン、何か食べるか?」
「あー、あれくれよ!あれ!」
「結構気に入ってるよな」
「手軽に食えるし美味いからな」
晶はリュックを下ろし中から取り出す風を装った。
実際はカード化してあった食料を現物に戻していた。
そして取り出したのはおにぎり。
三角形に少し海苔を巻いてあるヤツだ。
晶の特殊能力で出した物でもある。
毎日ではないが偶に出しては保管してあった。
カード化すると腐らない。
「アキラ、ありがとう」
「おう。俺も食べよう」
「ついでにこのコップの水を……」
「これだな。ほれ」
「これまたありがとう」
「どういたしまして」
イェンがおにぎりを受け取り晶に礼を言う。
ついでと言ってコップも差し出している。
既に水袋から注いであった。
晶が、ほれといって入れたのはお茶の粉。
水で溶ける手軽な物らしい。
米には茶なのだろう。
イェンの口にも合ったようだ。
モグモグ、ゴクゴクと食べだす晶とイェン。
イザベル達の視線もなんのそのだ。
(いいなぁ……私が実体化したら絶対食べさせてくださいよぉ!)
(ええのぅ……米……こっちで見た事はなかったぞい。食べたいのぅ)
視線も呟きも無視して咀嚼する晶であった。
晶のフードがもぞもぞしている。
食事に反応したのだろうか?
さすがぴよこ食いしん坊である。
「ぴー!」
イザベル達の視線、その先が変わったのであった。
晶は苦笑しながらぴよこにおにぎりを千切って差し出している。
晶の腕に降りたぴよこは手のひらに乗っているおにぎりを突く。
ぴよこもおにぎりが好きだった。
一心不乱に食べている。
あ、中身はしゃけですね。
晶は足りなかろうと思ったのかオーク肉の串も出した。
自分とイェンの分もである。
塩だけでタレの串はない。
好みであろうか?
それはともかく晶達が迷宮を出るのはいつになるのやら……。




