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2-16

2-16



「その魔導具って便利だな。クルッと動くのも何だか可愛い」


「島から海に出るためには必須だ。空でも役に立ったな」



 ゼロの背中に乗って迷宮都市コドを目指している晶とイェン。

上も先も青い空。

下も青いが海だ。

晶はイェンが使っているであろう魔導具を思い描き、感心している。

例の対になってお互いの方向を示す魔導具だ。

イェンの声は誇らしげである。



「だな。で、方向はこのままでいいのか?」


「ち、ちょっと待て……えっと、ふむ、これがこうだから……たぶん大丈夫だ真っ直ぐ行こう」


「おう」



 タマギ島、南の大陸の町ドン、どちらにもこの魔導具は沢山あった。

そりゃー海を渡る者達が多くいたのだ、魔導具も数があるだろう。

わりとよくある魔導具らしい。

両手に収まる大きさ、これがもう少し小さければ子供に持たせて迷子探しが楽になると思われる。

いずれ改良されるに違いない。

イェンはその魔導具が示すタマギ島の方向から進むべき先を調べていた。

いまいち慣れていない感じなのが微笑ましい。

機械音痴のお母さんみたいだ。



(アキラさん、遂に変装デビューですね!中二病が入っていてお似合いです!)

(魔眼があってよかったのぅ)

(カヅキさん!?俺が中二病だって言うの!?)

(まぁ、その恰好じゃ仕方ないですよ……)

(ぐぬぬ)



 カヅキが晶の姿に付いて言及している。

今の晶の恰好……濃いめのローブはイェンが買ってきてくれた物、黒い髪の毛は斑ながらも茶髪になっていた。

染料で染めたのだ。

薄い茶色、濃い茶色、白っぽい部分と斑になっているのは一度やって上手く染まらなかったからだ。

二度目で何とかなったが、この有り様。

まぁ、黒髪ではないから良いかと諦めた晶。


 だがカヅキが言っているのはそこではない。

黒目を隠すために鼻の上から額まで包帯を巻いているのだ。

今はイェンしかいないので目の部分は見える様にしてあるが。

タケマツが言っている魔眼、暗視以外にも魔力が視える力がある。

包帯で目を見えなくさせても、その魔眼で魔力は視れるのだ。

物には、多い、少ないの差はあれど魔力が内包されている。

だから包帯で目を隠した晶が魔眼で人を視るとサーモグラフィーの様に輪郭が浮かび上がる。

多くの人は白い輪郭。

魔法使いだと色が付く部分があったりするらしい。

炎の魔法を使う時は白に赤が混じるとか。

魔物は白い輪郭か灰色だった。

ひょっとしたら黒色もいるのかも知れない。


 そして、地面や木などにも魔力はある。

大概は少ない魔力なので薄っすらとしか判らないのが難点か。

実験をして、カヅキ、タケマツと相談した結果、厳しい戦闘にでもならない限りいけるだろうとなった。

茶色い斑頭に包帯……カヅキに中二病よばわりされても仕方あるまい。

更にローブを頭から着るのだから、晶の正体が露見する事はなかろう。

からかわれたり、絡まれたりはあるかも知れないが。



「楽しみだなー!」


「俺も話にしか聞いていない場所だ。お互い用心していこうぜ」


「おう!」


「ぴ」


「ごめんなー、どこかで落ち着くまでフードから出せなくなるかもだ」


「ぴぃ」


「ゼロも単独で森か山で待機になっちゃうな」


(問題ありません。マスター。ですが食事は調達していいのでしょう?)

(おう。だけど暴れるのは、ほどほどにな……周りの人に騒がれても面倒だ)

(承知)



 期待や不安を胸に抱きながら空を行く晶一行であった。







 そして陸地に辿り着いた。

沿岸部には村も見えた。

漁村だろうか?

疎らながらも人の姿も見えた。

晶達は目立たない様にするために人のいなそうな地域を目指した。

遠くに陸地を見ながら迂回。


 そうして飛ぶこと一時間ほどで良さそうな岩場を見つけて降りた。

近くにいた小さな蟹っぽい物がザザザッと遠のいていった。

黒い影が動いた様で、ちょっと不気味。

カヅキもギャーッと乙女らしからぬ悲鳴を上げていた。

気持ちは解る。



「ゼロ、呼ぶまで山にでも行っててくれ」


(行って来ます)

(おう)



 うずうずと落ち着かなそうなゼロを早々に送り出す晶。

戦闘狂は健在らしい。

この辺りの主になったりしないといいが……。

ゼロは嬉々として飛んでいった。



「俺達も行こうか」


「あぁ。ただ迷宮都市の正確な位置が判らないんだよなぁ……」


「む、魔導具でもだめか」


「大雑把な方向は判るけど、初めての場所だしな」


「まぁ、適当にいこうや」


「晶のそういう所は凄いよな」


「なんだよー」


「褒めてんだよ。行こうぜ」


「おう」



 晶がイェンに声を掛けた。

初めての場所で少し不安そうなイェン。

その点、晶はお気楽そう。

どこへ行くにしろ初めてだからかも知れない。

観光気分?

不安より期待が大きいのだろう。

前向きである。


 晶とイェン、おねむなぴよこ。

そこに妙齢の女性はいない。

迷宮都市を目指して歩き出す晶達であった。


 因みにイェンは鉄の胸当てや兜は持ってきていない。

何かの魔物の革鎧上下、革のブーツ、サーコート。

剣帯に鉄のショートソード、木の盾には鉄板と鉄鋲が埋め込まれている。

それから革のずた袋。

中には野営道具や着替えが入っているらしい。

食べ物も。

晶も手作り革リュックとずた袋を持っている。

着替えなどは入っているが、ほぼカムフラージュだ。

手ぶらで旅はおかしいだろうという事らしい。

重たい物……鍋などはカード化してある。

見た目ほどは重くなっていない。


 目に包帯を巻いた主人?と、その護衛っぽく見えない事もない。

設定はそんな所らしい。








「ふぅ……やっと着いたか……」


「魔物……多かったな」



 中央大陸へ上陸して二日目。

既に太陽は真上を過ぎていた。

ようやく目指していた迷宮都市コドに着いた二人。

革の水筒から水を飲んで、息を吐いている。


 昼夜問わず、魔物に襲われた。

小物ばかりで楽に撃退出来たとは言え、気持ちが休まらないので疲れただろう。

中央大陸も魔物が多い。

ゴブリンや猿、鳥、蛇……大物がいなかったのは幸いなり。

晶はそれらと戦いながらイェンの強さも確認していた。

ゴブリンは緑色の肌をした子鬼だ。

個の強さはないが群れる事で強さを発揮している。

武装はオークと同じく木の棍棒が多かった。

たまにナイフや剣を持った者もいた。

人里近いので冒険者が持っていた物だと思われる。

その冒険者がどうなったのかは定かではない。

そんなゴブリンを一度に三体相手にして余裕だったイェン。

素早い猿の魔物と森で戦い余裕ではなさそうだったが怪我もなく倒したイェン。

おそらくイェンならばオークを単体で撃破し戦い続けられるだろう。

もっと強い魔物が出た時は判らないが強い部類に入る戦士に違いない。

夜にはゼロを呼び出して守ってもらったり。

肉だけの夕飯、木の枝と焚火でお手軽に出来る肉串。

テントなどはなく、ずた袋を枕にごろ寝であった。



 そしてイェンと話をして知った新事実。

イェン達にはレベルアップに近い成長があるらしい。

魔物を倒す。

魔物の肉を喰らう。

肉体が強化されていくそうだ。


 タケマツも知っていたが、どうせワシらは復元力でなかった事になってしまうからな、と。

そんな晶達異世界人は素の状態でもこちらの人の倍は強い。

神気を纏えば更に桁が変わる。

それより技を磨けとも。

その経験は消えない。

タケマツにそう言われて気にしない事にした晶であった。

だがアキラよ、お前さんはネクロマンサーだ。

殴る技を磨くのはどうなのか?

困った後衛である。



「ここらに住むのも大変そうだ」


「迷宮都市は冒険者、探索者で溢れているらしいから大丈夫だろう」


「そういうのが集まれば、それを目当てに商人も集まるか」


「だな。農家は大変だろうけどな」



 都市を目にして元気が戻りつつある晶とイェン。



「でっかいなー」


「アミより大きいな……三万人以上いそうだ」


「アミが人口三万人くらいだっけ?」


「そうだ。首都アキで五万人ぐらいだったはず」


「で、ドンは千くらいになったんだよな?」


「防壁が出来て畑も恰好がついたから、ようやく住人を呼べた」



 晶が都市を覆う壁の長さを見て感心している。

それを聞いたイェンがコドの人口を推察している。

ドンの話までいくとイェンが感慨深そうに言葉を噛みしめていた。

晶は優しげな目になっている。



「よかったなぁ……あれ?門はあるけどチェックとかしてないな?」


「聞いた話によると出入り自由だとか。冒険者、探索者以外にも騎士団、兵も詰めていて戦力十分らしいぞ、他国とも隣接していないしな」


「ほー。まぁ、面倒が減ったから喜ぶところだろうな」


「だな。見た目が怪しいアキラが詰問されてもつまらん」


「言ってくれるぜ」



 門には衛兵もいるが、人は素通りだ。

それに気づいた晶がイェンに疑問を投げる。

下調べは万全の様で、イェンは晶に説明する。

イェンに変装の事を言われる晶。

軽口を叩きあえる仲にはなっていた。

野営、そして同じ釜の飯を食べる。

良い事なのだろう。

カヅキが晶とイェンの事を茶化す場面も多かった。

それも嬉しげに……腐女子の素質があるのやも知れん。



 包帯眼帯男とソバカスの残る素朴そうな男。

迷宮都市コドの門を潜るのであった。

ワクワク、そんな気持ちを口許に出しながら。




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