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「ビクトリア!」

「フローラ!」



 二人の美少女が互いの名を呼び、抱き合っている。



「おぉ……」

(いいですねぇ……絵になります!)

(幼き友情……いいものじゃな)



 抱き合う少女達を見て呟く者達。

晶、カヅキは眼福といった感じであろう。

タケマツは子供の純真さに感じ入っている。

タケマツはおっさんな見た目通り、子供がいてもおかしくはない。

過去にも現在にもいないらしいが。

自分に子供がいたらこうあって欲しい、そんな願いがあるのかも知れない。



「歳も近い従妹なので仲良しなんですよ。アミを出航する時に最後の別れをしていましたからね」


「あー、海は怖いらしいから、そうもなるか」


「はい」


「アレスは混ざらなくていいのか?」



 アレスもビクトリアとフローラを見ている。

彼女達の行動にも理由があるのだ。

晶も理解した。

そして晶が悪戯っぽい顔になり、アレスに抱擁に混ざらないのかと茶化す。

それを受けたアレスは外人っぽい仕草、両手の掌を上に向け肩をすくめておどけてみせる。

ご勘弁を。

そんな感じだろうか。

晶とアレス、ビクトリアとフローラほどではないが距離が近づいている。

決してアーッではないが。


 そんな場面の現場はドンの館であった。

そう、晶がゼロを使いフローラをドンへ連れて来たのだ。

因みにフローラが最初の乗客ではない。

かと言ってエドワードでもない。

多くの魔力を持つ魔法使い達と海では実力を発揮出来ない戦士達、ドンの力になる者達を優先で運んだのだ。

既に何十回という回数になっている。

タマギ島からドンへの移動、運べる人数は少ないものの犠牲が出ない移動。

その結果、ドンの防衛力、殲滅力は格段に上がっていた。

フローラ、エドワード、次は職人達であろうか。

町が町らしくなっていくのだろう。


 晶、ゼロ、大活躍であった。



 感動の再会を果たした少女達。

二人が何か言葉を交わしたと思ったら抱き合ったまま顔だけグリンッと晶達に向けて来た。

ちょっとしたホラーである。



「ぴよこちゃんは?」

「ぴよこさーん!」


「ひっ」


「アキラさん、会わせてくださいな!」

「どこー?」


「は、はい。ぴよこー……」


「ぴ」


「まぁまぁまぁ、相変わらず可愛らしいです!!」

「うんうん。可愛いねぇ……」

(ねっ!可愛いわよねー)



 ビクトリア、フローラに詰め寄られて押し切られる晶。

まぁ、これは仕方ないかな……。

晶に名前を呼ばれ、コロコロ遊んでいたのを止めるぴよこ。

ぴよこは晶のフードからテテテッと晶の頭に登った。

爪は立てられていない様で晶は痛がっていない。

相変わらずの謎移動であった。

何故、垂直に歩けるのか……謎ひよこ、子蛇の尻尾付き。


 ぴよこは注目されているのが解っているのかパタパタと小さな羽を上下させ一鳴き。

両手を胸の前で組み、晶の頭の上に視線を向ける二人。

乙女だ。

カヅキも似たようなものだと思われる。

相手は晶ではないけども。




「ぴよこー、地面に降りておくれー」


「ぴー」



 晶の要請に応え、晶の頭から歩いて降りていく、背中、尻、足と順に歩いて行く。



「ぴ、ぴよこさん?どうやって歩いていますの!?」

「意味が解らないよ!?」


「ぴ」



 ぴよこの挙動に驚く少女達。

わかる。

謎ひよこは自慢げだ。

ドヤ顔なのかも知れない。



「うん……意味が解らないね」


「ぴよこはそういう子なの。それでいいのだ」


「アキラも大概だよね……」



 アレスもぴよこの動きを何度か見ている。

何度見ても訳がわからないと。

晶は親馬鹿?いや思考の放棄だろう。

アレスが溜息を吐いている。

アレスの隣にいるイェンも頷いている。

晶、どう思われているのか。



「ま、彼女達はぴよこに任せて……話があるんだろう?」


「うん。座ってお茶でも飲みながら話そうか」


「おう。っていつの間にテーブルとお茶が……」


「執事、メイドの仕事じゃないよね。気配を消す必要があるのかと」


「だな。謎の拘りを感じる」



「ふぅ」


「お!お茶が変わってる。いい匂い……花?」


「あー、アキラが運んでくれた物資に入ってたハーブティーだね。こういった嗜好品を持ってこれるなんて思わなかったよ」


「お役に立てている様でなにより」

(いいなぁ……)

(人は余裕がないとな)


「お金以外でもお返ししたいけど、まだ無理みたい」


「そのうちな!期待してるよ」


「ははっ、それでよろしく……で話なんだけど」


「おう、それそれ」


「ドンの防壁がもうすぐ完成する。森の探索も進んでいるし畑も増やせそう」


「人、増えたもんな」


「タマギ島からの物資では足りないから他所の国に行って買い付けしたいんだ」



 南大陸、森の奥へ向かわなければある程度の安全、その目途が付いたらしい。

だが人も増えた現状では物資が足りていないのは解る。

タマギ島の余剰物資をドンへ輸送していた晶。

それでも足りていないという。

島の生産力では無理があるのだろう。

だからアレスは他所の国へ買い出しに行こうと提案している。



「あー、なるほど。ゼロとカードの出番ですな」


「うん。お願い出来るかな。っとその前に行こうと思っている場所に付いて話そうか中央大陸の南端、迷宮都市を考えている。色んな人が集まっているから紛れ込みやすい」


(迷宮都市!)

(……カヅキと会った場所じゃな)

(カヅキさんlいい思い出がないって言ってたね……)

(右も左も判らない時だったもの。タケマツさんに会うまで落ち着かなかったわ)

(そっか……)

(まぁ、もう死んでいますしね!どうでもいい事ですー)

(それもそうじゃな)

(そんなもんか……カヅキさんがいいならいいけどさ)

(おけおけ)



 そして行く先は迷宮都市。

その名前がアレスの口から出るとカヅキが反応した。

カヅキは迷宮都市近くの森に転移して来たらしい。

晶もそうだったが、いきなり放り出されたと言う。

混乱、動揺、絶望。

明るい未来なんて想像出来なかったに違いない……。

それでもカヅキはタケマツと出会った。

不幸中の幸い。

結果、二人とも死んでしまったが、カヅキがどれだけ救われた事だろう。


 死んだ以上、怖いものはないらしい。

吹っ切れている模様。

軽いカヅキであった。

並の委員長ではない。



「いいぜ。迷宮都市に行こうじゃないか!」


「アキラ、ありがとう。迷宮都市は元帝国領だけど離反した所だから帝国ほどは危険じゃない」


「そっか。帝国は広かったらしいしな」


「うん。土地でいえばタマギ島の千倍以上あったんじゃないかな」


「うへー!そんなに!!」


「帝国だからねぇ……迷宮都市は、その名の通り迷宮がある。そこからアイテム、素材等が得られる。それを目当てに商人はくるし職人も集まっている」


「おぉ!アイテム!」


「加工技術は大陸最高峰なんじゃないかな?あ、ドワーフを除けばだね」


「ドワーフはもっと遠くの山にいるんだっけ?」


「そう。ドワーフの国ナバは帝国と小競り合いをしていたみたい」


「行ってみたいなぁ……凄い武器とかありそう」


「僕も行ってみたいよ。機会があったら逃さずに行こうね!」


「おう!行こうな。まずは迷宮都市だな……コドだっけ?」


「コドで合ってる」


「アキラ、今回は他所の国なのでアレス様は行けない。俺とアキラで行くことになる」


「あー、それもそうかアレスは第一王子だもんな」

(そりゃ行けませんよね)

(行けまい)


「僕も行きたいんだけどなぁ……チラッ」


「アレス様もお茶目が出来る様になりましたね……アキラのおかげで!!」


「俺!?」


「そうだろう。アキラに会う前は出来なかった芸当だぞ」


「芸当……イェン」


「す、すみません!アレス様」


「俺には謝らないのかよー」

(ふふっ)


「と、とにかく二人で行くぞ!!」




 晶は迷宮都市へ行く事になった。

迷宮都市コドは他国なのでアレスはお留守番だとイェンが言う。

晶、イェンの二人旅だ。

あ、ゼロもいるか。

そして晶、アレス、イェンの三人は上手く馴染んでいた。

おふざけも出来るくらいに。

そんな三人のやり取りを聞いて笑いを漏らすカヅキ。



 そんな三人をジーッと見つめる目。

ぴよこは生贄にされた事を怒っているらしい。

ぴよこ、静かなる怒り。

その背後には炎的なオーラと二人の少女。



 晶!早く旅に出て宥めないと!!

ドンにいたら少女達に生贄を差し出さなくてはいけないからね。






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