2-14
2-14
副都市アミ、都市長でありアレスの叔父であるエドワードとの会談を終えた晶、アレス、イェン。
みなで一緒に食事をし、今は三人だけだ。
エドワードとフローラの戦いは、フローラの勝利に終わった模様。
空への誘惑も愛娘には勝てなかったらしい。
良い親子なのだろう。
順当である。
その勝者であるフローラもぴよこの魅力にメロメロであった。
ビクトリア王女に続いて熱心なファンを獲得したぴよこ。
そのぴよこは晶から干し肉を貰い食べ、スヤスヤお休み中である。
もちろん晶のフードの中だ。
しばらくフローラが晶の周りをウロウロしていた。
そのうち遊ばせてやると約束してようやく離れてくれたのであった。
晶、成人していないお嬢さんには興味が薄いのだろう。
それでも甘い対応と言えた。
「アキラ、一度ドンへ戻りましょう」
「あれ?首都アキには行かないの?アレスのお父さん、お母さんに会いに行くんだと思ってたよ」
「そうしたいのですが……ここアミと違ってアキには面倒な者達がいるのです……」
「面倒な者?」
(あーきっとあれですよ)
(いつの世にも王の周りには良いヤツも悪いヤツもいるものだ)
「はい。アキには貴族がいるのです」
(当たったー。ね!)
アレスがこれからの予定に付いて話す。
それに対し首都アキへは行かないのかと尋ねる晶。
当然アキへ行くと思っていた様だ。
ふむ、タマギ島、南の大陸、気軽には行き来できない場所だ。
アレスは成人しているといっても、まだ若い。
晶の感覚で言えば中学生か高校生だ。
だからせっかく両親のいる所へ来て会わない手はないと考えていたらしい。
気を許せば許すほど優しい対応になるのかも知れない。
実際、アレスとも打ち解けている。
晶本人は兄貴分のつもりっぽい。
晶、アレス、どちらが精神的に成熟しているかはさて置き、晶は優しい男と言えるだろう。
アレスには晶を首都アキへ連れて行きにくい事情がある模様。
面倒な者?
カヅキとタケマツが知った風な事を言う。
首都アキには貴族がいるとアレスは嬉しくなさそうな顔で言う。
カヅキはドヤ顔で嬉しそうだ。
正解していたらしい。
あれですよ、とか言っとけば大体通用しそうではあるが……委員長なカヅキの事だ、正解は本当だろう。
「おー、王様がいるなら貴族もいるか……って何でそんな顔?」
「控えめながら権利の主張が激しく、ネチネチしていて余り好きではありません」
「アキラ、ここだけの話という事で……」
「わかった」
アレス、貴族の嫌な所を見たらしい。
若いながらも人の出来ているアレスにこうまで言われる貴族。
よっぽどなのかも知れない。
アレスの隣でイェンが苦笑している。
晶もわざわざ吹聴してまわるつもりはないのかあっさりしたものだ。
「まともな貴族も多いんですよ?ただおかしな者ほど目立ってしまうので……」
「あー、味方を作るのが上手かったり、声が大きかったりするよな」
「です」
アレスも不味いと思ったのか、貴族についてフォローしている。
それを聞いた晶も嫌なヤツで思い出した相手がいたのだろう。
うんうん言いながら同意している。
アレスも晶の指摘が的を外していないのか頷いている。
「そんな貴族にアキラを知られて良い事が起きるとは思えません。だからアキには行きません」
「それがいいですね」
アレスの言い分にイェンも賛成らしい。
悪い貴族、イメージ通りの者がいるのだろう。
面白そうだが残念な事である。
面白い事に出会わなくて残念という意味ではない。
そんな貴族が存在していて残念という意味だ。
ホント。
「せっかく来たんだし、と思ったんだけどなぁ」
「エドワード叔父さんに手紙を託しました。大雑把ながらアキラの事とドンの現状について書きました」
「う、王様に知られちゃうかー」
(ふふっ。今の所、王族の人達はまともそうですから大丈夫かと)
(いざという時の対応さえ考えておけばよい。生きる場所はここだけではないのじゃから)
アレスはしっかり者です。
アキに行かないと決めていて手紙を書いていた様だ。
それを聞いて複雑そうな顔をする晶。
目立つのが好きではない?
いやアレスとの遭遇時を考えればそんな事はあるまい。
偉い人に会う可能性が高まるのが嫌なのかも知れない。
就活でも面接を頑張っていたが、喜んでいた訳ではないという事だろう。
嫌でもやらないといけない事はやる。
晶はその辺りやる男なんだろう。
「ですので帰りましょう」
「うん……」
(なぁ、カヅキさんの力、終の手札の事を話してもいいかなぁ?)
(私のですか?)
(そう)
(ふむ……)
(正に手札を晒すって事ですね!)
(いや、なんでそこで嬉しそうなのか解らないけど、そう)
(アキラの居場所を確保する意味ではありじゃな)
(タケマツさんが良いって言ってますしいいですよー)
(軽っ!)
(私、死んでますから死後の世界に付いてはどうでもいい部分がありましてー)
(ゴーストジョーク!)
(ふふっ。冗談はさて置き、恩を売るのは悪くないかと)
(そうじゃな。ゼロ、カヅキの力が揃えばタマギ王国の南大陸進出は上手く進むじゃろう)
(ありがとう。アレスの手助けをしたいとは思っていたんだ)
「どうかしましたか?」
晶達の脳内会議が終わった。
カヅキの力、終の手札をアレスに話したいと言う晶。
その力を使えば……物流が大きく変わる。
更にゼロを使えば危険な海を回避出来るのだ。
多くの物資が海に沈んでいたと言う。
人も……。
そんな苦労をしても頑張っているアレス達のために力に成りたいと晶は言う。
タケマツ、カヅキも了承。
メリット……晶にとっては恩が売れ、居場所が出来る。
デメリット……力を知って便利に使いまわす輩が出てくるかも知れない、さっきの貴族とか。
まぁ、デメリットとは言うが黒髪、黒目な晶の存在が知られれば狙われる可能性がある今、大したデメリットではなかろう。
どうせ危険はあるのだ。
黙り込んだ晶にアレスが首を傾げる。
ちょっと可愛いなとか思ってそうな晶。
大丈夫か?
「イェンはアレスが大事だよな?」
「むっ!当然だろう。南の大陸を切り開き居場所を作っていけるのはアレス様だ」
「イェン……」
晶はアレスからイェンに視線を移した。
真面目な顔でイェンに話しかけている。
イェンはアレスが大事だと言い、将来への想いも語る。
それを聞いたアレスが言葉に詰まっている。
嬉しい言葉だったのだろう。
「それならこれからする話をイェンにも聞いてもらおう」
「何だ?大事な話なんだな?黙っていろと言うなら墓まで持って行くぞ!」
「おう」
「僕にも関係ある話なんだよね?」
「そう。今の俺に使える力の事だ」
「ちから……」
「アレス、腰のナイフを貸してくれ」
「うん」
晶がアレスからナイフを借りている。
良さそうなナイフだ。
紋章も入っているが気にしてはいけないのだろう。
(カヅキさん、お願い)
(任せてー)
「終の手札!」
そしてアレスのナイフが晶の手から消えた。
その代わりに一枚のカードが現れていた。
「「!?」」
「と、まぁこんな力だ」
「お、王家のナイフは!?」
「そっちに反応するのか……まぁいいか、終の手札!」
イェンが王家の紋章が入ったナイフが消えた事に焦っている。
あれ?イェン君、ナイフがカードに変わった事より大事?晶の顔が物語っていた。
今度はカードが消え、再びアレスのナイフが出てくる。
そのナイフをアレスに返す晶。
アレスが呆然として受け取っている。
イェンは安堵の表情。
「はぁっ!?」
「す、凄いね!そういう事か!!」
「さすがアレス。大体解ったみたいだね」
「アイテムボックスの一種だろうか?そういう事だろう?」
「アイテムボックス……あるのか!」
「ありますよ。力を確認出来たら国が確保に動きますね。確実に」
「沢山の荷物でもカード一枚にして持ち運べる。って俺掴まるのか?」
「アキラ……僕に力の事を教えてくれてありがとう。その信頼は裏切らない」
「おう。俺が勝手に手助けしたいと思っただけだ。頑張っているからな」
「うん……ありがとう」
絶句しているイェンはさて置き、晶とアレスが話を進める。
アレス、王族として色々知っている様だ。
勉強熱心な事である。
そしてアレスは今、晶からこの力の事を知らされた意味も正しく理解していた。
強力な魔物が闊歩する海。
そこを避けて空を飛び、大量の物資を運べる。
それに気が付いていた。
南大陸への進出が一気に進むという事も……。
だからアレスが泣きそうな顔になっているのも仕方あるまい。
再起動したイェンを伴い、三人で物資の買い付けに走るのであった。
お金はエドワードにつけていた。
金額が金額だし、多少はね?
三人の顔は明るい。
特にアレス。
子供らしい笑顔になっていた。
その肩に重圧を感じ続けていたであろう。
それが軽減されたに違いない。
笑顔にもなろうというものだ。
笑顔を見て嬉しそうにする晶とイェン。
タケマツも子供は笑っていないとなと嬉しそうだ。
タケマツにとって成人したてなんてのは子供でしかないのだろう。
カヅキもサラサラ王子のキラキラ笑顔ーと嬉しそう。
カメラとかあったら撮りまくりに違いない。
南大陸の開発開拓。
その展望が一気に変わった日であった。




