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2-13

2-13



「ようこそ副都市アミへ!」


「おう!」


「アキラ殿、ここからは人前です。畏まった口調でお願いしますね」


「お、はい。イェンさん」


「あははっ」


「晶の口からイェンさん……違和感バリバリですね」


(違和感バリバリとか、そう言っている訳じゃないよな?謎翻訳)

(私には違和感があるって聞こえました)

(変だと聞こえたな。ワシらに馴染んだ言葉になると教えたじゃろう)

(そうなんだけどさぁ)

(馴染んだ言葉だと楽じゃないですかー)



 晶、アレス、イェンの三人はタマギ王国の副都市アミの門前にいた。

門で人のチェックはしている様だが、並んでいる人は少ない。

鍬を担いだ農民の姿くらいしか見当たらない。

首都と副都市しかなく、他国から商人が訪れる訳でもないのでこんなもんらしい。

他国から人が来るのは首都アキだそうだ。

たまにタマギ島から中央大陸の国へ商人が向かう。

帰りにあちらの商人と連れ立って戻ってくる程度だとか。

国同士の付き合いもない訳ではないらしいが、そうそうある事でもないと。


 つまりタマギ島では余所者は解りやすい。

まして副都市ではバレバレだという。

顔見知りばかりだ。



「ご苦労様」


「ご苦労」


「アレス王子!とイェンさん!いらっしゃい」

「あれ、馬でも馬車でもないんですね?」


「ああ。今回はちょっとな」


「……後ろの方は?」


「僕のツレだ。彼の事は僕が保証しよう」


「一応、仮入場の札をもらえるか?」


「アレス王子の保証ですか。解りました」

「どうぞ」


「ありがとう」



 さすがアレス王子、顔パスだ。

門番に顔を覚えてもらっていた。

そして門番の一人から挨拶、もう一人からは馬がいない事への疑問。

わりと砕けた口調だ。

タマギ島、村社会がそのまま大きくなったというのは本当らしい。

これでいいのか?と思わないでもないがそれを気にする人や他所の人がいないので気にしないのだろう。

濃いめの灰色ローブを頭から被っている晶は当然誰何された。

胡散臭さ抜群であるからして。

アレスが保証人になると言い、イェンが札を要求した。

門番はそれ以上聞いてこなかった。

あっさりと仮入場の札が差し出された。

木の板。

何だか適当そうである。

外から人の来ないアミだと出番が少ないのだろう。

イェンが礼を言い札を受け取り、晶に手渡した。


 そして町の中へ。



「へー、整った町だねぇ」

(区画整理されている感じですねー)

(火事は最小限で抑えられそうじゃな)


「首都の後に出来た町ですからね」


「首都にある問題点を潰してある分、整ってますよ」


「なるほどー」

(やりますねぇ)

(うむ。違う事はやりたがらないからの。挑戦者じゃな)


「アレス、王子はここの責任者に会わなくていいんですか?」



 晶がキョロキョロと通りを見渡してから、感心したような声をあげた。

カヅキ、タケマツも感想を言っている。

建物四つくらいごとに道で分けられている。

小路が多そうだ。

土台が石、建物は木という建物が多い。

基本平屋だ。

色は茶色ばかりで面白味はないが統一感はある。


 アレスとイェンが副都市アミに付いて語っている。

首都アキで問題のあった部分を改善して出来ているらしい。


 晶がアレスに王族としての仕事はないのかと聞いている。

ついアレスと呼び捨てにしそうだったのはご愛嬌だろう。

アレスとイェンが苦笑している。



「会いに行きますよ。門番から連絡も行っているでしょうし」


「そうなんですね」


「挨拶は後で大丈夫ですよ。まずはアキラ殿の用を終わらせましょう」


「お願いします」


「武器、服、それから食器類でしたよね?」


「はい。小さい鉄のナイフだけじゃ心許ないですからね。後はこちらに馴染めそうな服と食器類です」


「イェン」


「はっ!お任せください」



 アレスはアミのお偉いさんに会いに行くのは後でいいと言う。

緊急の用事はないのだろう。

晶の買い物。

アレスが言う用に、武器、服、食器類だ。

ドンで小さい鉄のナイフは買えた。

いや、それしか買えなかったのだ。

手のひら程度の刃しかないナイフ。

鉄は重要物資であった。

少なくともドンではそうだった。

服に関しては目立たない服装なら何でもいいんだとか。

ドンの人達の着る物があればいいってのを見たからかも知れない。

品質については諦めているのだろう。

まぁ、汚れないといっても気分の問題で気持ち悪いってのもありそうだ。

晶は現代日本の出身なのだから無理もない。

食器類……ドンで木のカップと皿は購入していた。

フォークなどを買いたいらしい。

鉄にこだわらなければ木から自作でもよかったのだろう。

だが晶は買う事にした様だ。


 アレスがイェンの名を呼ぶとイェンは己のやるべき事を察し任せろと言う。

イェンの先導で買い物に向かう晶一行であった。







(ドンよりはいいですけど、いまいちでしたねぇ……)

(あんなものじゃろう)

(服も食器もあんな物じゃない?武器は満足だよ)

(あぁ、それは良い剣じゃな。羨ましいぞ)


(何だか資源不足は深刻そうに見えました)

(それは否定出来んな)

(だねぇ)



 晶の買い物を終え、食堂で昼飯を食べ、館へ向かっている。

カヅキが品揃えをいまいちだと言う。

タケマツと晶は予想の範疇だといった感じである。

タマギ島は国としても孤立気味なので輸入もままならない。

鉄などは明らかに不足していた。


 晶の腰には、ローブの上から革ベルト、剣帯、剣が追加されていた。

どこぞのフォース使いの様である。

剣は鉄で出来ている物を買えた。

買えたがアレスからもらったオーク討伐、肉の代金の三分の一が消えた。

食堂での値段から推察するに、およそ百万円程度が消えた模様。

お高い。

もっとも店で高額の部類ではあった。

晶が剣鉈、刃の厚い武骨な代物を気に入ったからだ。

山でも森でも活躍しそうな剣鉈。

少々手荒く扱っても壊れなそうな頑丈さもいいらしい。




「ア、アレス王子!ようこそいらっしゃいました!」

「ようこそ!」


「ご苦労様」


「エドワード様に取り次ぎ願いたい」


「はっ!今確認してまいります」



 副都市アミ、門から一番奥にその館はあった。

ドンと同じく行政の場でもあるという。

石造りの頑丈そうな建物だ。

城と言われれば城。

そんな建物。

ただしほぼ平屋。

塔の様な物も突き出ていたが見張り台みたいな物だろう。

山、森だけでなく海も遠くまで見えるに違いない。

もしかしたら灯台の役目もあるのかも知れない。


 門番がアレスを見て慌てている。

疚しい事がある訳ではなさそう。

単純に来訪を驚いているのだろう。

イェンが館の主に会いたいと門番に伝えている。

伝えられた門番達の後ろにいた兵士がすぐに走っていった。

館の主はエドワードというらしい。



(エドワード叔父は父の弟なんだ)


(ほー)



 アレスがこっそりと晶に教えている。

王族の一員らしい。

まぁ、タマギ島に二つしかない都市だ。

そうもなるであろう。




 ほどなくして取り次いでもらえる事になった。

兵士に連れられてきた執事の先導で館の奥へ向かう晶達。

ここの執事、カルロスの所にいた守護系執事に似ている……まさかね?


 明かりとりの窓が少な目でちょっと暗い通路。

石で出来ているのも相まって何だか不気味さがある。

冷たいイメージがあるからだろうか?



「アレス様をお連れしました」


「うむ。入りたまえ」


「どうぞ」


「ありがとう」



 重厚な扉の前に着いた。

執事が中に向かって声をかける。

中から渋い声が返って来た。

執事が扉を開けてアレスを誘導する。

執事にもアレスにもぎこちない所が見受けられない。

わりと訪れていたのかも。

慣れたものである。


 部屋の中はドンで見たカルロスの執務室そっくりだった。

タマギ王国の標準なのだろうか?

大きい執務用の机、革のソファーが向かい合わせで置いてある。

間にはテーブルだ。

白いレースのテーブル掛けまで似ている。



「アレス、元気そうだな。良かった」


「エドワード叔父さん。ご無沙汰しております」


「アレス座りなよ」


「ああ、座りたまえ」


「はい。アキラ、もう被らなくていいよ。僕の隣へ」


「おぅ、はい」



 若かりし頃のカルロス、そんな感じの男がソファーから立ってアレスを迎えた。

どうやら彼がエドワードみたいだ。

アレスの叔父、エドワード。

そしてアレスにソファーを勧める者。

その言葉を聞いてエドワードも着席を促す。

アレスが晶に指示する。

まだ切り替えが上手く出来ていない晶。

ちょっとどもった。


 エドワード達の向いにアレス、晶が座る。

晶の横にイェンが立っている。

執事はエドワードの横に当然といった顔で立っている。

やはり似ている……。



「彼は……」


「異世界人です」



 顔を露わにした晶。

それを見たエドワードが絶句している。

晶の素性に気が付いたらしい。

そんなエドワードに気を遣わず、きっぱり言い放つアレス。

親しい間柄なのが伺える。



「……異世界人、異世界人なのか」


「はい。南大陸で出会いました。アキラ」


「私はアキラ・ナガオです」


「む、挨拶がまだだったか。エドワード・クロウ・タマギだ。ここアミの都市長を務めている。アレスの叔父でもある」


「ボクの番だねー!ボクは娘のフローラだよ!」

(ボクっ子……女の子だったのね)

(小柄だとは思っておったが……判らぬものじゃな)


「は、初めまして」


「うん!よろしくー!」


「これっ!」


「えー、いいじゃん」



 エドワードはアレスから晶が異世界人だと聞いて何かを噛みしめる様にしている。

為政者ともなると異世界人に付いて色々知っているのだろう。

アレスに促がされ自己紹介をする晶。

エドワードも再起動したらしく滑らかな口調になった。

都市長、聞いたままだろう。

このアミで一番偉い人かな。

エドワードに続いて隣に座っている者からの自己紹介。

フローラ。

ボクっ子であった。

ビクトリアと似ている。

従兄に当たるだろうからおかしくはないのかも。

ビクトリアが髪の毛を切ったらフローラになりそう。

金色の髪の毛をショートカットにしている。

服装は……男物?中性的だ。

歳は判らないがビクトリアと同じくらいに見える。

ざっくばらんなお嬢さんらしい。

それをエドワードが咎める。


 そこへノック、メイドさんがお茶を持ってきた。

お小言は中断。

エドワードが苦虫を潰したような顔になっている。

部下にみっともない所が見せられないのだろう。

何だか爺に似ているかも。

苦労してそうな所が……。



 メイドがお茶を置き、一礼して出て行った。

メイド服もドンで見たメイドさんと同じであった。

標準なのかも知れない。

そして晶はまたも緊張しているのかメイドさんを堪能出来ていない。



「エドワード叔父さん、話をしていいかな?」


「あ、あぁ」


「くふふ」

(何だか愉快なお嬢さんみたいね)

(楽しそうじゃな)


「アキラは僕の友です。カルロスお爺様とも会いました」


「友……そうか」


「いいなぁ……」

(思ったことをすぐ口に出しちゃうのね、この子)

(素直なお子じゃのぅ)


「オークの群れ、集落を潰しに行った時に助けてもらったのがきっかけです」


「オークの群れ!!だ、大丈夫だったのか?」


「はい。怪我人は出ましたが死者は出ていません。およそ百体は倒しました」


「ひゃ、百!?あのオークをか!!」


「ビクトリア達、魔法部隊が活躍しました。それ以上にアキラは一人で三十体は倒しましたがね……」


「……」


「凄い!凄いねー!!アキラ!!」



 アレスが晶との関係に付いて話す。

出会った時の事、オーク退治の話になってエドワードが目を見開いている。

オークを倒した数を聞いて更に驚いている。

晶が一人でオーク三十体を倒したと聞いて絶句していた。

隣のフローラは興奮気味に晶を褒めている。

晶は後頭部をポリポリ掻いて照れている。

純粋か!



「カルロスお爺様はアキラへ外部協力者としてドンの防衛、手助けを依頼しました」


「ほぅ」


「今は冒険者と一緒にドンの周辺を回ってもらっています」


「そうか」



 エドワード、何やら安堵のご様子。

驚く話題が終わっての事か、一人でオークを三十体も倒せるアキラを味方に出来た事に安堵したのかは判らない。

もっと別の事という可能性も。



「で、ここからです」


「ふむ?」


「僕達は船で来た訳ではありません」


「なにっ!?」


「どういう事だいアレス?」


(アレス君、煽りますねー)

(話に引き込むのが上手いのぅ)

(俺もこれくらい出来たら……)

(アキラさんはそのままでいいんですよ)

(うむ。慣れないことはせんことじゃ)

(何気に酷い……)


「空を飛んできました!素晴らしい景色でしたよ!!な、イェン」


「はい。最高でしたね!」


「お、おぉ!?そら、空!?」


「えぇぇっ!?」


「アキラはワイバーンを使役しているのですよ。そのゼロに乗ってきました」


「ワ、ワイバーンとな!?」


「ワイバーン……」



 アレス、更に爆弾を投下。

その前振りにカヅキ、タケマツが反応。

面白がっている風だ。

そしてイェンにも話を振るアレス。

担がれている訳ではないと判ったエドワードが、また驚いている。

フローラも驚いている。

アレスはそんな二人を見て悪戯が成功したといった感じだ。

楽しそうである。

話がゼロ、ワイバーンに至ると、エドワードとフローラはぐったりとしていた。



「南の大陸にはいるみたいです。僕はアキラのワイバーンしか見た事はありませんが」


「そ、そうか」


「ワイバーン……乗ったのかぁ」


「アキラ、お願いがあるんだ」


「ん?何でしょうか?」


「ゼロは速かった、ドンを朝出て昼にはここに着けた」


「うん?」


「ここから人の運搬をしてもらえないだろうか?」


「人の運搬?えっと……」

(そりゃ考えますよねぇ)

(海の危険を考えれば当然であろうな)



 アレスの用件はこれであったか。

ゼロによるドンとアミの移動。

自分でゼロに乗り確認出来たので提案して来たのだろう。

速さ、安全度、問題ないと判断したらしい。



「そんな事が出来るのかね!」


「すごい!凄い!!」



 ナイスダンディっぽいエドワードが興奮して立ち上がった。

フローラもである。

似た者親子。

晶が絡むと普段冷静そうな人でも変わってしまう。

良いのか悪いのか判断が難しい。



「出来る出来ないで言えば出来ます」


「それで……どうだろうか、アキラ?」


「んー」

(別にいいんじゃないですか?)

(そうじゃな……恩を売るのも悪くなかろう)


「人だけですよね?」


「うん。いくらゼロでも多くは運べないだろう?」

(まぁ、そうですよね)

(そう思うわな)


「そうですね……人も俺が乗るのは確定ですから一度に二人までですよ?」


「いいのかい?」


「はい。人の移動の手伝い、それだけが仕事にならなければいいですよ」


「ありがとう!アキラ!」


「おぉ!!」


「ボ、ボクが最初の荷物になるっ!」


「いやいや、危険度、速さ等を知るために私が行く!」


「いやいやいや、ボクが!」



 アレスの要請を受ける晶。

喜ぶアレス。

それ以上に興奮し喜ぶエドワード親子。

親子の戦いは長引きそうだ。



「ぴっ!」


「なっ!?か、かわいい!!」



 そして辺りが騒々しくなったせいかぴよこが起きてしまった。

ビクトリアに続き、ファンを獲得してしまうぴよこ。

女の子には激つよ。

無双ひよこ見参。


 それはともかく晶に新たな仕事が舞い込んだのであった。

ゼロによるドンとアミの移動。

空の運送業。

だが晶はそれだけをするつもりはなさそうだ。




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