2-12
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「アレス、方向は合ってるのかい?」
「さっき確認しましたよ。大丈夫です」
「おぉ!大きな魔物が跳ねた!!あんなのもいるのか!」
「どこどこ?」
「左の方です。あぁ、潜ってしまいました……」
「波紋だけだ、残念……」
晴天の中、優雅に空を飛ぶ晶、アレス、イェン、そして大活躍のゼロ。
晶がアレスに進む方向は正しいのかと聞いている。
アレスは大丈夫だと答えている。
確認……さきほど手元の道具を見ていた。
どうやら魔導具らしい。
魔導具とは、そのまんま魔法の道具である。
魔法陣か魔石を使っているのが特徴らしい。
因みにアレスが持っている魔導具は二つで一つ、お互いのある方向を示す物だ。
アレスが持っている物の対になっている物はタマギ島にあるそうだ。
さすがに太陽らしきものの位置だけでは判断していない。
海で迷わない理由が解った。
安全な航海ではなさそうだが。
そして楽しそうな主従。
アレスとイェンは空の旅を楽しんでいた。
魔物が跳ねただの、小さい島が見えただの、鳥の魔物がいたなど忙しかった。
晶は楽しんでもらえているせいか何も言わない。
もっとも晶も海の上を飛ぶのは初めてなので一番楽しんでいるのかも知れない。
顔を左右にキョロキョロしているのが、その証拠だ。
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「あっ!前方に見えました!タマギ島です!」
「着いたかー」
「おぉー!空から見るとあんな形なのですね!」
「な!森は少ないと思っていたけど緑は一杯だ」
「違って見えるものですねぇ……」
「さすがゼロ!早いぞ!!」
(お褒め頂き光栄です。マスター)
「ゼロは凄いね!まだ昼にもなっていないよ!!」
「命をかけて海を渡った身としては複雑です……」
「それはそうだけど、凄い事は褒めなくっちゃ」
「は、はい。ゼロ殿の速さ、感服いたしました!」
アレスとイェンは興奮気味だ。
自分の住んでいた島、それを上空から見るなんて初めてだろう。
晶も遠くに見えた島を確認していた。
晶達がゼロを褒める。
ゼロも満足げだ。
称賛を受け止めている。
心なしか速度があがった。
「タマギ島の南の大陸側にある都市が副都市アミだよ」
「首都、副都市、ともに海に面している港町なんだっけ?」
「はい。平地が少なく作物が多くとれません。ですので民の主食は魚なのです」
「そりゃ港町にもなるかぁ」
(森はあるみたいだけど……丘や山なのね)
(島じゃから水も自由には使えまい)
「です」
「このままゼロ殿に乗ってアミには行けません。兵士が顔色を変えて飛んできますよ」
「そうだね。人のいなそうな所に降りてもらって……まずイェンにアキラの服を買ってきてもらおうか」
「解りました。アレス様」
「そっか、ゼロだけでなく俺も不味いか」
「はい。知っているかはともかく目を引きますからね……髪の色も服装も」
「ですね」
「イェン、頼む。後でお金を渡すよ」
「任せてください」
一行が今後の話をしている間にもタマギ島は近づく。
どうやらタマギ島へ着いても直ぐには動けない模様。
トラブルになるのは目に見えているから、我慢して欲しいものだ。
「左側、あの岩場と木々の間辺りに降りようか」
「そうですね。あそこなら人目に付かないでしょう」
「解った。ゼロ、頼む」
(承知)
(いよいよですねぇ)
(前回来た時は人目に付かん様に動いたからな)
(逃げる事だけ考えてましたもの……)
(今回は見るだけだが楽しめるじゃろう)
(はい)
(アキラは警戒を怠るでないぞ?)
(解ってますって。オレ、ユダン、シナイ)
(本当ですよ。アキラさんに格納されている間は神気の溜まりが早いんですから死なないでくださいね)
(ワシらの力も貸せるでな)
(任せなさい!)
アレスが場所を指で示す。
それを受けて晶がゼロに指示を出す。
カヅキとタケマツが以前、タマギ島へ来た時の話をしている。
来たというか通り過ぎたというのが正解だろう。
そしてタケマツが晶に忠告している。
カヅキも晶に死なれては困る様で懇願している。
真剣な声色のカヅキと適当そうな晶、意識の差が感じられる……。
何となく不安。
「ふぅ……大地に立つってのは安心出来るんですねぇ……」
「そうだね。空の景色は素晴らしかったけど、大地の素晴らしさも再認識出来たよ」
「そんなもんかね」
「そんなもんですよ。また乗せてもらいたいですけども」
「はい。また乗りたいです」
「帰りもあるからな。期待に沿えるだろう」
「楽しみです」
「まずは頭から被れるローブでも買ってきます」
「ドンは服も少ないからね……」
「イェン、頼むなー」
「任せて!」
イェン、アレスがゼロから降りて屈伸運動をしている。
大地の感触に喜んでいる。
空が嫌になった訳ではなさそうだが、足が地面に着いている事に安堵している様だ。
ドンへ帰る時にまたゼロに乗る事だろう。
そしてイェンが走っていった。
晶からお金も受け取っていた。
袋ごとではあったが……今、晶が持っていても仕方ないとはいえ全部渡すとは。
イェンは本来、アレスの護衛なのだがアレスに買い物をさせる訳にはいかない。
苦渋の選択だったらしい。
晶を疑っているのではないだろうが、海からの魔物だっている。
そこは晶に任せるのだろう。
もっともアレスは自身で戦える力を持っている。
オーク戦では指揮官として戦っていたが個人でも戦えるのだ。
でなければ南の大陸へはこれまい。
タマギ島にカルロスの息子でありアレスの父である王様がいるという。
アレスの姉、弟二人もいる。
それから王様の弟一家も国の重鎮らしい。
それがタマギ王国の王族。
南の大陸へは王族からカルロス、アレス、ビクトリアが行っている。
カルロスは先祖の悲願を達成するべく王位を息子に譲りドンへ。
アレスは王太子ではない。
ある意味だれが王位を継いでもいいらしい。
成人したので実地研修も兼ねて指揮官としてドンへ。
ビクトリアは成人していない。
だが魔法の才能が極めて高かった。
彼女の姉も魔法の才能があったが、その上を行くとの事。
魔法部隊の一員としてドンへ。
もっとも彼女自身が望んだ事らしい。
使える力がある。
ならば有効に使うべき。
そう言ったとか。
個より衆をとるアレス達であった。
「あんまり南の大陸と変わらんねー」
「そうですね。気候も植生も似ています」
「木、森がこれだけあるなら、もうちょっと農地を広げられるんじゃないか?」
「もちろん考えましたよ。でも木は重要な素材でもあります。育つのには時間がかかるし、使い切る訳にはいかないんだ」
「あー、それもそうか。島じゃ無尽蔵には使えないか。そういう意味では南の大陸は資源の宝庫だな」
「はい!期待しています」
「ぴー」
「下を歩くのか?ほい」
「ぴ」
晶が辺りを見回している。
そしてアレスにもっと森を切り開かないのかと尋ねている。
アレスが丁寧に説明する。
色々、悩む事があったのだろう。
若いのに苦労している。
もっと苦労しているのは王様だろうけど。
だから南の大陸進出は悲願であったろう。
先祖代々の課題。
今代で何とかしたいであろう。
そしてマイペースなぴよこ。
フードから頭に登ったと思ったら小さな羽をパタパタさせてフワリと晶の胸の辺りに降りた。
両手でぴよこを受け止める晶。
そのまましゃがみ込み、両手を地面に向ける。
それが正解だったのか、ぴよこが手から飛び出し地面を小さな嘴でつつき出した。
お腹が減ったのかな?
何でも食べるぴよこ。
ちょろちょろと楽しそうだ。
晶とアレスが微笑ましそうに見ていた。
カヅキも悶絶していたという。
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イェンが無事に買い物を終え晶達に合流した。
濃いめの灰色ローブを頭から被る晶。
胡散臭い。
これで黒髪は一応隠せている。
黒目は……無理、隠す術がないそうだ。
まぁ、覗き込まれない限りそうは判らないとは思う。
ぴよこはフードの中でコロコロしている。
ローブで陰になり、暗いのでいずれ寝てしまうだろう。
そしてゼロを岩場に残し歩く事、一時間程度。
ほーとかへーとかいいながら晶は副都市アミまで来ていた。
「ここがアミか……立派な都市じゃないか!」
「はい。都市二つ以外に村などもありませんからね。発展もしますよ」
「ここの魚スープは美味いですよ。貝が特に美味い」
「おぉ!そうなのか。楽しみだな」
(いいなぁ……)
(ええのぅ……)
「期待していてください。では行きましょうか」
「おう!」
土の土台、木の防壁。
それに覆われた都市アミ。
中々立派な都市だった。
少なくとも南の大陸の町ドンとは比べものにならない。
晶に町を褒められて満更でもなさそうなアレスとイェン。
イェンは魚スープが美味いと自慢げだ。
美味い物が好きな晶も反応する。
カヅキとタケマツから怨嗟とも羨望ともとれる言葉。
霊体では味わえない。
なまじ生前の記憶があるので味を思い浮かべてしまうのだろう。
ナム。
アレスの先導でタマギ王国、副都市アミへ入る晶一行であった。
晶も視線をあっちこっちに向けて楽しそうだ。
期待に満ち溢れている。
無事買い物は出来るだろうか!?
アレスには他の思惑もありそうではあるが……買物だけって事はあるまい。
ないよね?




